自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成

文献情報

文献番号
201027083A
報告書区分
総括
研究課題名
自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成
課題番号
H21-こころ・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
倉恒 弘彦(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 雅章(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院)
  • 下村 登規夫(独立行政法人国立病院機構さいがた病院)
  • 久保 千春(九州大学大学院 医学研究院)
  • 野島 順三(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 渡辺 恭良(理化学研究所 分子イメージング科学研究センター           )
  • 酒井 一博(財団法人労働科学研究所)
  • 小泉 淳一(横浜国立大学大学院 工学研究院)
  • 局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疲労病態を客観的に評価できる検査方法を確立し、バイオマーカーに基づく新たな疲労診断基準を作成する。
研究方法
日本において代表的な慢性疲労診療を担っている4施設において客観的な疲労評価法となりうると考えている検査を実施し、客観的な疲労検査法の感度と特異度を決定する。さらに、本研究にて明らかになった簡便で客観的な疲労マーカーを用いた新たな慢性疲労診断指針を作成し、日本の疲労診療の手引きとなる基準を明確にする。
結果と考察
1.CFS患者と健常者データに対して、今後の多変量解析等のそれぞれのデータ特性把握のために基礎的統計量の計算とそれらに基づいたt-検定並びにROC曲線等を作成した。得られた感度・特異度数値から一般の多変量解析などの変数検査を含め診断法の策定のための骨子となるプログラムが作成されてきている。
2.CFS患者の脈波データを用いて心拍変動解析を行い、疲労の程度が増悪する程、副交感神経機能を反映する高周波帯域パワー値の減少を認め、その結果、相対的に交感神経機能の亢進が確認された。
3.MicroMini(AMI社)を用いた検討にて、CFS群において覚醒時活動量の低下、睡眠時間の増加、居眠り回数の増加が有意に認められることが確認された。
4.PET検査において脳内炎症マーカーである[11C]PK-11195を用いて6名の健常者と8名の患者の脳内炎症像を解析したところ、健常者に比しCFS患者は左視床において炎症反応がある可能性が示唆された。 
5.酸化ストレス値と抗酸化力値の評価が病的疲労状態の質的な判定に有用であるともに、治療効果の判定や予後の推測にも応用可能であることを明らかにした。
6.唾液中に再活性化するヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)を定量することによる疲労測定法を開発し、HHV-6の潜伏感染・再活性化機構を突き詰めることによって、疲労因子(FF)を同定した。また、FFを抑制する因子を検討し、疲労回復因子(FR)を同定することにも成功した。
7.輸血の安全性の確保の観点から緊急にレトロウイルスXMRV 問題に対処する必要が生じ、CFS患者100名における血清中の抗体と、末梢血単核球におけるXMRV DNAを解析した。その結果、CFS患者と健常者の血清中抗体陽性率には有意な差はなく、XMRV DNAは認めなかった。
結論
本研究により慢性疲労病態を客観的に評価できるいくつかのバイオマーカーが明らかになってきた。平成23年度は、このバイオマーカーを組み合わせて評価することにより客観的な評価法を確立し、この評価法を組み入れた新たな疲労診断指針を作成する。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027083Z