文献情報
文献番号
201027063A
報告書区分
総括
研究課題名
スプライシングを利用した筋強直性ジストロフィーの治療
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-こころ・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石浦 章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
- 西野一三(国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
筋強直性ジストロフィー(DM)は遺伝子が伸長することによる全身性疾患で、遺伝的にDM1とDM2の2種類が報告されている。DM1はDMPK遺伝子の非翻訳領域のCTGリピートの伸長、DM2はZNF9遺伝子のイントロン1にあるCCTGリピートの伸長が原因で発症する。症状は、長く伸びたRNAのCUG3塩基リピートまたはCCUG4塩基リピートにMBNL1やCUG-binding protein (CUG-BP)などのRNA結合タンパク質がトラップされ、正常の機能であるスプライシングができなくなることで生じるので、本症は「RNA病」であると言われている。そのため、スプライシングを正常化することが治療の第一選択となっている。
研究方法
この目的のためにはRNAリピートに結合するスプライシング調節タンパク質の発現を加減することによって、正常化スプライシングを導くという戦略と、薬物添加やアンチセンスの手法を用いてスプライシング自体を変化させるものがある。本研究では、後者の方法を検討した。また、分担研究者の西野の協力の下、DM患者筋を用いた新しいスプライシング異常の検出も行った。ミオトニアに直接関係する塩素チャネル遺伝子に注目し、ミニ遺伝子を作製してスプライシング・アッセイ系を構築し、スプライシング調節活性を持つMBNL1の標的配列を明らかにすることを目的とした。次に、この配列を標的としたエクソンスキッピングを行い、スプライシング機能を正常化する新規DM治療法の開発を目指した。
結果と考察
エクソン7aの最初の塩基を1として、-15~10、0~25、26~50、51~75、76~+21をコードする各アンチセンスを、塩素チャネル・ミニ遺伝子をトランスフェクトしたCOS-7細胞に添加して効果を見たところ、エクソン7aの0~25に対するアンチセンスを投与したときに、7a含有型の割合が約50%から10%に低下した。この抑制結果は、以前報告のあったWheelerらのアンチセンスより高く、筋強直の治療に使えるものと考えられた。生体内への保持能力の高いモルフォリノアンチセンスオリゴの効果は培養細胞系で確認ずみのため、このオリゴ人工的にリピートを300に増やしたHSALR-マウスの前脛骨筋に注射し、効果を筋強直を指標に判定した。その結果、筋強直症状が大幅に改善されていることがわかった。
結論
3年間の研究により、エクソンスキッピングは、DMの効果的治療になるのではないかと結論づけられた。
公開日・更新日
公開日
2011-06-09
更新日
-