ニューロパチーの病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
201027060A
報告書区分
総括
研究課題名
ニューロパチーの病態解明に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 章景(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 滋賀 健介(京都府立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々が開発した遺伝性ニューロパチー診断DNAマイクロアレイチップを用いて、遺伝性ニューロパチーの診断、分子疫学の調査、解析および新規原因遺伝子の同定を目指す。さらに病態を明らかにするため、病理学的、生理学的、臨床症候の特徴に検討する。
研究方法
検査システムを確立するため、DNA Chipによる解析の最適化を行った。ヒトDNAを検体として、PCR増幅し、作成したCMT遺伝子診断チップと反応させ、マイクロアレイシステムで解析する。新規の原因遺伝子同定には、連鎖解析、ゲノムシークエンスを行う。また、各症例に病理学的、電気生理学的を加えた。

結果と考察
遺伝性ニューロパチー診断チップによる遺伝子スクリーニング
CMT診断アレイ実験において、PCRのステップの最適化を行い、586のPCR反応を26本のチューブで増幅することが可能となり、増幅過程が飛躍的に簡素化された。Multiplex PCRを導入し最適化し、実験的には、2日で8アレイまで施行可能となっている。
現在まで475例(コントロール50名含む)のアレイ実験が行われ、CMT症例では、PRX, MFN2, MPZ, GJB1, DNM2などに、AOA2例では、SETXに病的異常が確認された。新規原因遺伝子にも異常が見つかっており、新規原因遺伝子の同定をすべく、変異の確認を行っている。連続症例の検討により、臨床型ごとの頻度が明らかになってきた。
結論
Charcot-Marie-Tooth病の診断DNA Chip チップは、遺伝子診断に有用であった。本邦のCMTの分子疫学の概要が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201027060B
報告書区分
総合
研究課題名
ニューロパチーの病態解明に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 有村 公良(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 田中 章景(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 滋賀 健介(京都府立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
開発した遺伝性ニューロパチー診断DNAマイクロアレイチップを用いて、遺伝性ニューロパチーの診断、分子疫学の調査、解析および新規原因遺伝子の同定を目指す。関連遺伝子解析、病理学的、生理学的にアプローチし、遺伝性、免疫性、薬剤性、代謝性ニューロパチーの病態を明らかにする。
研究方法
DNA Chipによる解析の最適化と実践 ヒトDNAを検体として、PCR増幅し、作成したCMT遺伝子診断チップと反応させ、マイクロアレイシステムで解析する各病型の臨床症状、血清生化学的所見、髄液検査所見、神経伝導検査所見、末梢神経病理所見等を検討した。
結果と考察
CMT診断アレイ実験において、PCR増幅過程の最適化を行い、586のPCR反応を26本のチューブで増幅することが可能となり、増幅過程が飛躍的に簡素化された。Multiplex PCRを導入し、実験的には2日で8アレイまで施行可能となった。475例の解析が行われ、CMT症例では、PRX, MFN2, MPZ, GJB1, DNM2などに、AOA2例では、SETXに病的異常が確認された。我々のマイクロアレイチップによる遺伝子解析は、遺伝子異常を調べるコストと時間を飛躍的に縮小させ、本邦のCMTの分子疫学の解明に寄与した。
結論
DNAチップによる解析により、CMT症例に多数の既報告および新規の遺伝子異常が同定され、本邦の分子疫学が明らかになってきた。大規模な遺伝子診断においてマイクロアレイ法はシークエンス法に比し、コストと労力において明らかに有利であった。本邦の遺伝子頻度の概要が明らかになってきた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、世界でもっとも詳細で大規模なCMT病の遺伝子解析研究で海外では類似の研究は行われていない。遺伝子チップの最適化を行い、2日の行程で8症例の高速な解析が可能となった。全国からの検査依頼に応じて475例の検査を行った。圧倒的な低コストを実現し、大規模解析が可能となった。遺伝子検査の依頼の広報として、様々な場で広報を行い周知できた。多くのCMTに関する発表が全国規模で行われ、CMTの分子疫学その他の報告し、今後さらに国際誌に報告を続ける予定である。
臨床的観点からの成果
遺伝子診断により、診断確定と予後判定、遺伝相談などに大きな力となっている。また本研究によりおおよその分子疫学が明らかとなり、今回の結果により遺伝子異常ごとにそれぞれの今後の治療をみすえた対策を立案可能となる。たとえば、これまでの検討で、軸索障害型CMTにMFN2異常のCMT2Aが多いが、MFN2はミトコンドリア関連の蛋白で、ミトコンドリア機能の回復が治療のターゲットになると思われ、治療のトライアルも検討している。
ガイドライン等の開発
シャルコー・マリー・トゥース病診療マニュアル(CMT診療マニュアル編集員会 金芳堂29-36, 2010)の作成に加わり、遺伝的な部分の執筆をおこなった。本マニュアルにより、遺伝子学的な面のみならず、医療機関へのかかりかたから、リハビリテーションまで記載している。遺伝子型が決まれば本書をよりパーソナルな形で利用しうるため、実際の診療上有益である。
その他行政的観点からの成果
遺伝子検査については、コスト的に非常に高額な大量の遺伝子検査を20分の1のコストにすることで、患者さんに実施することができた。CMT病患者会からのいっそうの研究の発展の要望を受け、CMT研究を推進するための基本的な検査として、実施してきた。患者会の年2回の会合と、さらに年2回の市民公開講座に出席し、研究の啓蒙活動を行うとともに、患者の個々の質問に答える機会をもうけてきた。
その他のインパクト
鹿児島大学神経内科、CMT友の会ホームページ、遺伝性ニューロパチー診療マニュアル、日本神経学会遺伝子診断ガイドライン、市民公開講座、関連学会講演など様々な場で広報を行い周知でき、CMT診断の第一歩として依頼に応えた。他の研究班とともにシャルコー・マリー・トゥース病診療マニュアルを作成し、遺伝子検査から臨床へのフィードバックを行った。個々の患者さんへの臨床的な対応においても遺伝子型は重要である。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakiyama Y, Okamoto Y, Higuchi I, et al.
A new phenotype of mitochondrial disease characterized by familial late-onset predominant axial myopathy and encephalopathy.
Acta Neuropathologica  , 121 (6) , 775-783  (2011)
原著論文2
Hirano R, Takashima H, Okubo R, et al.
Clinical and genetic characterization of 16q-linked autosomal dominantspinocerebellar ataxia in South Kyushu, Japan.
J Hum Genet. , 54 (7) , 377-381  (2009)
原著論文3
髙嶋博, 橋口昭大, 平野隆城, 他
マイクロアレイDNAチップによるCharcot-Marie-Tooth病の遺伝子診断
Peripheral Nerve , 19 (2) , 390-392  (2008)
原著論文4
Koike H, Kawagashira Y, Iijima M, et al.
Electrophysiological features of late-onset transthyretin Met30 familial amyloid polyneuropathy unrelated to endemic foci.
J Neurol , 255 (10) , 1526-1533  (2008)
原著論文5
Koike H, Iijima M, Mori K, et al.
Neuropathic pain correlates with myelinated fibre loss and cytokine profile in POEMS syndrome.
J Neurol Neurosurg Psychiatry , 79 (10) , 1171-1179  (2008)
原著論文6
Iijima M, Koike H, Hattori N,et al.
Prevalence and incidence rates of chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy in the Japanese population.
J Neurol Neurosurg Psychiatry , 79 (9) , 1040-1043  (2008)
原著論文7
Okamoto Y, Higuchi I, Sakiyama Y, et al.
A new mitochondria-related disease showing myopathy with episodic hyper-CK-emia
Ann Neurol  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201027060Z