大規模災害や犯罪被害等による精神科疾患の実態把握と介入手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201027056A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害や犯罪被害等による精神科疾患の実態把握と介入手法の開発に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 松本 俊彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター)
  • 松岡 豊(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 中島 聡美(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 鈴木 友理子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 栗山 健一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害、犯罪被害によるPTSD等の精神的被害の実体解明と治療方法の開発のために、国内での直接面接による実態調査、比較対照群を用いた認知行動療法に関する臨床研究を行い、客観的な検査法を検討し、国際的なエビデンス研究に即した、被災者、被害者の保健医療、行政対応のガイドラインを作成する。
研究方法
立川災害医療センター、東京女子医大、新潟中越大地震等での被災、被害者の追跡調査を行う。World Mental Healthデータの2時解析を行う。Delphi法を用いて治療対応ガイドラインの基礎資料を作成する。持続エクスポージャー法(PE)を通常治療(TAU)に加えた場合の治療効果の非盲検ランダム化比較試験を実施する。PTSD慢性化機序と慢性的な睡眠の質低下(入眠困難・中途覚醒・悪夢)との関連および介入方を解明する。トラウマ治療に関する国際ガイドライン等の資料収集を終え、素案を作成するとともに、そのfeasibilityを検討する。トラウマ被害後の時期別に、治療効果と医療資源上の負担を考慮した最適治療対応戦略ならびに検査方法を提示する。
結果と考察
中越地震後3年間の住民の健康調査から、HbA1cは震災1年後の中程度ストレス状態を、BMIが重度ストレス状態は予測していることを明らかにした。交通事故後に精神疾患を発症した外傷患者ではQOLが低下していたこと、および主要評価項目である事故6ヶ月後のPTSD有病率が7.5%であった。少年鑑別所入所者の女性入所者の約2割に高度な自殺傾向が認められ、4.3%がPTSDの診断に該当することが明らかにされた。WMHからは、子どもの時養育者に殴られたこと等がPTSDの発症と有意に関連していた。DV被害女性とその子どもの精神的健康・行動・生活と母子相互作用が認められた。持続エクスポージャー療法の効果が検証された。恐怖エピソードの長期記憶化過程に特有の言語情報処理過程が見いだされた。急性期心理ケアマニュアルを作成した。
結論
災害、事故においてPTSDを発症する者は一部であり自然回復の傾向がある。PTSD治療法としての持続エクスポージャー療法の効果がほぼ確実である。恐怖記憶の形成において精査があり、精査に基づいた早期介入の可能性が示唆された。犯罪被害、自然災害の初期のメンタルケアについての日本の臨床家の合意が形成された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201027056B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模災害や犯罪被害等による精神科疾患の実態把握と介入手法の開発に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学女性生涯健康センター)
  • 松本俊彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター)
  • 松岡 豊(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 中島 聡美(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 鈴木 友理子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 栗山 健一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 前田 正治(久留米大学医学部)
  • 小西 聖子(武蔵野大学人間関係学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害、犯罪被害によるPTSD等の精神的被害の実体解明と治療方法の開発のために、国内での直接面接による実態調査、比較対照群を用いた認知行動療法に関する臨床研究を行い、客観的な検査法を検討し、国際的なエビデンス研究に即した、被災者、被害者の保健医療、行政対応のガイドラインを作成する。
研究方法
立川災害医療センター、東京女子医大、新潟中越大地震等での被災、被害者の追跡調査を行う。World Mental Healthデータの2時解析を行う。Delphi法を用いて治療対応ガイドラインの基礎資料を作成する。持続エクスポージャー法(PE)を通常治療(TAU)に加えた場合の治療効果の非盲検ランダム化比較試験を実施する。PTSD慢性化機序と慢性的な睡眠の質低下(入眠困難・中途覚醒・悪夢)との関連および介入方を解明する。トラウマ治療に関する国際ガイドライン等の資料収集を終え、素案を作成するとともに、そのfeasibilityを検討する。トラウマ被害後の時期別に、治療効果と医療資源上の負担を考慮した最適治療対応戦略ならびに検査方法を提示する。
結果と考察
中越地震後3年間の住民の健康調査から、HbA1cは震災1年後の中程度ストレス状態を、BMIが重度ストレス状態は予測していることを明らかにした。交通事故後に精神疾患を発症した外傷患者ではQOLが低下していたこと、および主要評価項目である事故6ヶ月後のPTSD有病率が7.5%であった。少年鑑別所入所者の女性入所者の約2割に高度な自殺傾向が認められ、4.3%がPTSDの診断に該当することが明らかにされた。WMHからは、子どもの時養育者に殴られたこと等がPTSDの発症と有意に関連していた。DV被害女性とその子どもの精神的健康・行動・生活と母子相互作用が認められた。持続エクスポージャー療法の効果が検証された。恐怖エピソードの長期記憶化過程に特有の言語情報処理過程が見いだされた。急性期心理ケアマニュアルを作成した。
結論
災害、事故においてPTSDを発症する者は一部であり自然回復の傾向がある。PTSD治療法としての持続エクスポージャー療法の効果がほぼ確実である。恐怖記憶の形成において精査があり、精査に基づいた早期介入の可能性が示唆された。犯罪被害、自然災害の初期のメンタルケアについての日本の臨床家の合意が形成された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027056C

成果

専門的・学術的観点からの成果
交通事故被害者のPTSD等精神疾患の発症率とその関連要因を明らかにした。PTSDの基礎となるトラウマ記憶を言語、情動、身体記憶に分け、その形成と消去過程の相違を明らかにした。新潟中越大震災後、5000人の住民調査を行い、精神状態の推移を明らかにし、また地域高齢者の精神健康の関連要因を検討した。犯罪被害遺族の精神健康の実態を調査した。一般地域住民のPTSD有病率と原因となるイベントの種類を検討した。
臨床的観点からの成果
PTSDの治療法として国際的に最も有効と認められている持続エクスポージャー療法についてRCTを終了し、女性の対人暴力被害によるPTSDについて通常治療群との間に有意な差を見出した。この研究を通じて持続エクスポージャー療法エクスポージャー療法の治療訓練法を開発し、有効な研修システムを検討した。
ガイドライン等の開発
PTSD治療の国際ガイドライン、先行研究を展望して、治療指針を提示した。自然災害後の精神保健医療対応に関する国際ガイドライン(IASC)、ヨーロッパで開発されたTENTSガイドラインなどを参照し、各段階での介入方針等についてDelphi法で意見集約し、その成果に基づいて日本版マニュアルを作成した。
その他行政的観点からの成果
東日本大震災が発生してただちに、本研究班員が中心となって国立精神・神経医療研究センターに情報支援サイトを開設し、本研究成果を取り入れた、自然災害への対応のガイドライン、マニュアル、PTSD対応などの指針を公開し、日本国内での標準的な規範となり、精神医療関係者、支援チーム、報道機関などからしばしば参照され、心のケアに多大な貢献を行った。
その他のインパクト
災害時の心のケア対応について、当研究班の成果であるガイドライン、マニュアルついて東日本大震災以後、頻繁に問い合わせを受け、一部は紙面に引用されるなど、社会的に強いインパクトを与えた。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishi D, Matsuoka Y et al.
Are patients following sever injury who drop out in a longitudinal study at high risk for mental disorder?
Comprehensive Psychiatry , 49 (4) , 393-398  (2008)
原著論文2
Nishi D, Matsuoka Y et al.
Reliability and validity of Japanese version of the Peritraumatic Distress Inventory.
Gen HOsp Psychiatry , 31 (1) , 75-79  (2009)
原著論文3
野口普子, 松岡豊 他
交通事故に関する認知と精神的苦痛との関連についての横断研究
総合病院精神医学 , 20 (3) , 279-285  (2008)
原著論文4
Matsuoka Y, nishi D, et al.
The Tachikawa Cohort of Motor Vehicle Accident Study investigatinga psychologial distress
Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology , 44 (4) , 333-340  (2009)
原著論文5
Matsuoka Y et al
Impact of Spychiatric m morbidit on quality of life after motor vehicle accident at 1-month follow-up
Psychiatry chin neurosci , 63 (2) , 235-237  (2009)
原著論文6
Matsuoka Y, Nishi D, et al
Toward an explanation of inconsistent rates of PTSD across different countries:infant mortality rate as a marker of social circumstances and basic populatin healty
psychother Psychosom , 79 (1) , 56-57  (2010)
原著論文7
Nishi D, Matsuoka Y, Kim Y, et al
Posttraumatic growth, posstraumatic stress disorder and resilience of motor vehicle accident survivors.
Biopsychosocial Medicine , 4-7  (2010)
原著論文8
Nishi D, Matuoka Y, et al
The peritraumatic Distress Inventory as a predictor for the subsequent posttraumatic stress disorder after a severe motor vehicle accident.
Psychiatry Clin Neurosci , 64 (2) , 149-156  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201027056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
14,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
補助金額を超える100円については自己資金から支出済

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-