国内外の精神科医療における疾病分類に関する研究

文献情報

文献番号
201027054A
報告書区分
総括
研究課題名
国内外の精神科医療における疾病分類に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
飯森 眞喜雄(東京医科大学 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸田 敏雅(東京医科大学 精神医学講座)
  • 青木 省三(川崎医科大学 児童・思春期精神医学)
  • 中根 秀之(長崎大学 医学部 社会精神医学)
  • 針間 博彦(都立松沢病院)
  • 大野 裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
  • 染矢 俊幸(新潟大学 医学部 精神科診断学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は国際疾病分類(ICD)の改訂作業に我が国の意見を反映させることを目的とする。今回のICD改訂にあたり、WHOは臨床的有用性の向上を主眼のひとつに掲げている。
本年度は、1).WHOが臨床的有用性向上のために行ったStudy AおよびStudy B(共に仮称)研究への参加、2).臨床的有用性向上のための補助的ツールである電子診断補助システム(EDCAS)の開発、3)児童思春期精神障害の診断分類および診断基準についてのアンケート調査、4).司法精神医学領域でのICD運用の問題点、について調査を行った。
研究方法
上記の1)のStudy Aは講座担当者会議を中心に参加を募り施行した。Study Bには8つの大学医学部精神医医学講座在籍の精神科医および一般病院勤務の精神科医、合計73名が参加し、そのデータをWHOへ提供した(現在、データを集計中である)。3)については、児童思春期精神障害の診断分類および診断基準に焦点を絞ったアンケートを作成し、日本児童青年精神医学会の学会員3383名全員送付した。4)については精神鑑定の経験が豊富な精神科医20名(全国16施設)が参加し実際の司法鑑定例にICD-10で診断を下した際の問題点を調査した。
結果と考察
1)および2)については現在WHOで解析がすすめられているが、まだ結果は出ていない。3)については回答率は16.8%であった。結果は、1)多動性障害はF9からF8に移す(賛成=54.4%)、2)多動性障害と広汎性障害の併存を認める(賛成=86.0%)、3)多動性障害は(DSMと同じく)注意欠如多動性障害とする(賛成=87.3%)、4)反抗挑戦性障害が行為障害の中の1つになっているが、これを行為障害から独立させた項目にする(賛成=40.5%)、5)F92(行為および情緒の混合性障害)をなくし、併存を認める(賛成=71.8%)、6)F90.1(多動性行為障害)はなくし、行為障害と多動性障害の併存を認める(賛成=83.9%)、7).思春期妄想症という項目を新設する(賛成=35.7%)、8)自傷障害という項目を新設する。(賛成=39.6%)、という結果であった。
4)については、操作的診断基準の問題点やまたそれらを司法精神医学領域へ適応する際の問題点が浮き彫りにされた。
結論
本研究では本年度上記のような結果を得た。1),2)については一部は既にWHOへ結果を報告してあり、3)についても結果を英訳しWHOへ報告した。他国ではICD-11へ向けての本研究のような包括的研究がなく、WHOも本研究の結果が注目されている。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201027054B
報告書区分
総合
研究課題名
国内外の精神科医療における疾病分類に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
飯森 眞喜雄(東京医科大学 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸田 敏雅(東京医科大学 精神医学講座)
  • 染矢 俊幸(新潟大学 医学部 精神科診断学)
  • 中根 秀之(長崎大学 医学部 社会精神医学)
  • 針間 博彦(都立松沢病院)
  • 新井 平伊(順天堂大学 医学部)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 医学部)
  • 三國 雅彦(群馬大学 医学部)
  • 小澤 寛樹(長崎大学 医学部)
  • 大野 裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
  • 青木 省三(川崎医科大学 児童・思春期精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は国際疾病分類(ICD)の改訂作業に我が国の意見を反映させることを目的とする。今回のICD改訂にあたり、WHOは臨床的有用性の向上を主眼のひとつに掲げている。
初年度、2年目は、1).WHO本部からの情報収集および調整、および各診断カテゴリーの必要性および使用頻度、2).各カテゴリーの診断分類や診断基準に対する専門家の提言、3).精神医学講座担当者会議および日本精神科診断学会評議員および会員を対象にしたアンケート調査を研究を行った。3年目は、1).WHOが臨床的有用性向上のために行ったStudy AおよびStudy B(共に仮称)という研究への参加、2).臨床的有用性向上のための電子診断補助システムの開発、3).児童思春期精神障害の診断分類および診断基準についてのアンケート調査、4).司法精神医学領域でのICD運用の問題点、について調査を行った。
研究方法
初年度3年目はWHO主催の会議への参加しICD-11に対する情報を収集し、各精神障害群のエキスパートおよび全国の精神医学講座からICD-10の問題点を列挙および質問紙を作成し調査を行った。また、日本精神科診断学会評議員および会員にICD-10で問題となっている論点を網羅した質問紙を作成し調査を行った。3年目の1)のStudy Aは英語で回答するWeb調査であったため講座担当者会議を中心に参加を募り施行した。Study Bには8つの大学医学部精神医医学講座在籍の精神科医および一般病院勤務の精神科医、合計73名が参加し、そのデータはWHOへ提供した(現在、データを集計中である)。3).については、児童思春期精神障害の診断分類および診断基準に焦点を絞ったアンケートを作成し、日本児童青年精神医学会の学会員3383名全員送付した。
結果と考察
WHO主催のICD-11改訂のための会議への参加を通しICD-11に対する最新の情報を入手することができた。これらの情報は本研究班による研究事業に生かされ、またその結果はWHOへと提示された。こういった貢献を通し、我が国の意見がICD-11に少しでも反映されるよう研究が行えたと思われる。また、3年目に開発した電子診断補助システムは、我が国の今後の精神科診断において有益なツールであるばかりでなく、電子媒体でも提供される予定のICD-11の作成に少なからず影響を与えると思われる。
結論
本研究では本年度上記のような結果を得ており、結果の一部は既にWHOへ報告してある。他国ではICD-11へ向けての本研究のような包括的研究がなく、WHOも本研究の結果を注目している。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027054C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ICD-10の国内における問題点や改善点を、多角的なアプローチに基づき明確化し、それらの結果をWHOへと報告した。特にICD-10掲載の診断分類コードの使用頻度および主観的重要性に関する詳細なデータやICD-10の構造の改善に関する研究データは他国でも先行研究がなく、WHO本部も大きく評価した。またWHOが主催して行った国際会議での情報は学会や論文を通し随時発表し、関連分野における研究者や臨床家との最新の情報の幅広い共有を図った。
臨床的観点からの成果
WHOが臨床的有用性をICD-11作成に向け主眼と位置付けたことで、ICDの主たる使用者である臨床医の診断分類に対する捉え方を問う研究事業がWHO主導により幅広く展開された。本研究班もこれらの研究に率先して参加し、特に精神障害間の関連性をグループ化の作業ではプロトコル作成から電子媒体の活用を視野に入れた成果物の提案まで大きな役割を果たした。またそれら成果物(=ICD-11)またはそれに準ずるものの具体案として電子診断分類補助システムの開発を行った。
ガイドライン等の開発
本研究班は特にガイドライン等の開発等を独自に行うことを目的としたものではないが、結果はWHOへと報告され最終的にICD-11作成へと活かされることから、ICD-11という診断分類における国際的ガイドラインに直接的に関与することとなる。
その他行政的観点からの成果
上記に述べた通り、本研究班はICD-11作成への関与および貢献を目的としており現時点で成果は具体的に出ていない。しかしICDが厚生労働行政に広く使用されていることから、本研究班の行政的観点からの成果はICD-11の完成および出版に際し大きく評価できるものと考えられる。
その他のインパクト
日本精神神経学会や日本精神科診断学会での教育講演やシンポジウム、また種々の出版物を通し、ICD-11作成に向けた情報を随時提供した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027054Z