新規開発マルチカラー化チャネルロドプシン遺伝子を用いた視覚再生研究

文献情報

文献番号
201027042A
報告書区分
総括
研究課題名
新規開発マルチカラー化チャネルロドプシン遺伝子を用いた視覚再生研究
課題番号
H21-感覚・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
富田 浩史(東北大学 国際高等研究教育機構)
研究分担者(所属機関)
  • 玉井 信(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石塚 徹(東北大学 大学院生命科学研究科)
  • 松坂 義哉(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 江里子(東北大学 国際高等研究教育機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、失明者の視覚を取り戻す方法は皆無である。中途失明者の数は年間16000人にも達し、失明に対する有効な治療法の開発は社会的急務である。我々は緑藻類より単離したチャネルロドプシン-2(ChR2)遺伝子の網膜への導入による視覚再生を検討してきた。現在までに、遺伝盲ラットの光反応性を回復させることに成功し、行動学実験から実際に見えていることを確認している。しかし、チャネルロドプシン-2(ChR2)の感受波長は、青領域に限定されており、可視光全域を見ることができる視覚を作り出すためには、緑、赤型のChRが必要である。本年度は、ChR遺伝子を改変し新たに作製した赤型ChR(mVChR1)の機能を検証することを目的とした。
研究方法
mVChR1の機能を調べるために、mVChR1を恒常的に発現する細胞株を作製した。mVChR1遺伝子およびピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドベクターを作製し、エレクトロポレーション法により培養HEK細胞にmVChR1を導入した。その後、ピューロマイシンを含む選択培地で培養を行い、mVChR1を恒常的に発現する細胞株を得た。パッチクランプ法により、各波長光で刺激した際の膜電流を計測し、mVChR1の機能を調べた。また、in vivoで回復した視機能を調べる目的で、mVChR1を含むアデノ随伴ウイルスベクターを作製し、遺伝盲ラットに遺伝子導入を行い、視覚誘発電位を測定した。
結果と考察
パッチクランプ法により光刺激によって誘発される膜電流を測定した結果、450nmから600nmの幅広い波長光に応答した。遺伝盲ラットにmVChR1を導入後、視覚誘発電位を測定したところ、幅広い波長光に応答が見られた。mVChR1の白色光への反応性は、クラミドモナス由来ChR2に比べ良かった。mVChR1が幅広い波長感受性を持つこと、ならびにChR2に比べ、長波長側に感受波長ピークがあるためと考えられた。
結論
ChR2とともに、mVChR1を遺伝子導入することによって、幅広い波長域を見ることができる可能性がある。現状で、色認識は不可能であるが、2つの波長感受性および反応性の異なるチャネルロドプシンを利用することで、新しい視覚システムを構築できる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027042Z