内耳薬物投与システムを応用した感音難聴、耳鳴り治療技術の臨床応用

文献情報

文献番号
201027040A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳薬物投与システムを応用した感音難聴、耳鳴り治療技術の臨床応用
課題番号
H21-感覚・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中川 隆之(京都大学医学部医学研究科 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽一(京都大学医学部医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 田畑 泰彦(京都大学医学部再生医科学研究所 生体材料学)
  • 暁 清文(愛媛大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科聴覚センター 耳鼻咽喉科)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 宇佐美 真一(信州大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 欠畑 誠治(弘前大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 村上 信五(名古屋市立大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 小宗 静男(九州大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 田渕 経司(筑波大学人間総合科学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 手良向 聡(京都大学医学部附属病院探索医療センター 生物統計学)
  • 坂本 達則(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 平海 晴一(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 山本 典生(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生体吸収性材料を用いた内耳薬物投与システムを用いた感音難聴治療法の臨床応用を行い、感音難聴の治療・重症化防止に貢献することにある。本研究では、ゼラチンハイドロゲルを用いたインスリン様細胞成長因子1(IGF1)内耳投与の急性高度難聴に対する有効性の臨床研究および、内耳への薬物局所投与による感音難聴、耳鳴に対する新規治療法の開発を行う。
研究方法
ステロイド全身投与無効な急性高度難聴症例を対象としたゼラチンハイドロゲルによるIGF1内耳投与の第Ⅰ-Ⅱ相臨床試験の統計学的解析を行い、効果検証を目的とした多施設でのランダム化対照試験のプロトコル作成を行った。ポリグリコール乳酸パーティクルによるリドカイン内耳投与による耳鳴抑制効果について蝸牛での作用機序、プロスタグランディンE受容体EP4の音響外傷における役割解明、ステロイドのステルスナノパーティクル化による蝸牛への薬物徐放、γセクレターゼ阻害薬徐放による蝸牛有毛細胞再生に関する動物実験を行った。
結果と考察
ゼラチンハイドロゲルを用いたIGF1内耳投与第Ⅰ-Ⅱ相臨床試験では、投与24週後で56%の症例で聴力回復が認められ、問題となる有害事象は認められなかった。また、IGF1投与が発症後26日以上経過した症例では、聴力改善は認められなかった。これらの点を考慮し、多施設で行うランダム化対照試験のプロトコルデザインを行い、倫理委員会承認を経て、症例登録を開始した。。リドカイン内耳徐放効果として内有毛細胞の遠心性神経終末における受容体変化が作用機序のひとつとして示唆された。EP4作動により、蝸牛が音響外傷から保護され、阻害により障害が増強することが分かり、EP4が蝸牛の恒常性維持に関与していることが示唆された。ステロイドのステルスナノパーティクル化により、ステロイドの蝸牛への薬物動態が改善され、音響外傷に対する治療的効果が改善することが示された。音響外傷による有毛細胞喪失が誘導された蝸牛にγセクレターゼ阻害薬を投与することにより、有毛細胞の新生および保護が認められることが分かった。

結論
ゼラチンハイドロゲルを用いたIGF1内耳投与による急性高度難聴治療の多施設ランダム化対照試験を開始した。リドカイン局所投与による耳鳴り抑制メカニズムに関する知見が得られ、臨床応用のシーズとなる基礎的知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027040Z