サブタイプ分類に基づく小児難聴診断、療育システムの構築

文献情報

文献番号
201027034A
報告書区分
総括
研究課題名
サブタイプ分類に基づく小児難聴診断、療育システムの構築
課題番号
H20-感覚・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座 )
  • 橋本 繁成(国立大学法人信州大学 医学部附属病院先端予防医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、新生児聴覚スクリーニングの普及により、早期に難聴が発見されるようになってきたが、難聴の原因に関しては多くの場合不明であり、予後の推測や随伴症状の予測などは不可能であった。当研究室では全国33施設との共同研究により「All Japan」の研究体制で難聴の遺伝子解析を行っており、多くの難聴原因遺伝子を見出し報告するとともに、原因遺伝子変異の種類により、臨床像が異なることを明らかにしてきた。本研究では、従来の聴力検査に遺伝子診断を組み合わせることで、より正確に、より早期に聴力の程度を予測することおよび、サブタイプごとに適切なフォローアップや適切な介入法などの手法の確立を目的としている。
研究方法
本年度より開始した先進医療共同実施として実施している「先天性難聴の遺伝子診断」の結果のとりまとめを行うとともに、新規難聴原因の探索として、CDH23遺伝子変異の大規模解析および先天CMV感染症の解析を行った。また、高音急墜型の聴力を呈する難聴患者に対する新しい治療法である「残存聴力活用型人工内耳」の臨床研究を開始した。
結果と考察
新規難聴原因遺伝子候補としてCDH23遺伝子の大規模解析を行った結果、複数の新規遺伝子変異を見出した。また、乾燥臍帯を用いた先天CMV感染症の検査を、難聴患者100例規模で行い頻度や臨床像のまとめを行った。以上の検査を組み合わせる事で診断率の向上が期待できる。また、先進医療として実施している「先天性難聴の遺伝子診断」に関しては、185例の実施で40%の診断率があり検査として有用であることが明らかになった。
結論
先進医療の実施においても共同研究時とほぼ同程度の有効性が認められた。また、先進医療と、本研究の成果である遺伝学的検査とCMV検査を組み合わせることで小児感音難聴の50?60%難聴の診断が可能になった。今後、難聴の遺伝子診断を従来の聴力検査と組み合わせて実施することで、難聴をサブタイプに分類することが可能となり、適切なフォローアップや適切な介入法などのオーダーメイド医療の実現につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201027034B
報告書区分
総合
研究課題名
サブタイプ分類に基づく小児難聴診断、療育システムの構築
課題番号
H20-感覚・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座 )
  • 橋本 繁成(国立大学法人信州大学 医学部附属病院先端予防医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、新生児聴覚スクリーニングの普及により、早期に難聴が発見されるようになってきたが、難聴の原因に関しては多くの場合不明であり、予後の推測や随伴症状の予測などは不可能であった。当研究室では全国33施設との共同研究により「All Japan」の研究体制で難聴の遺伝子解析を行っており、多くの難聴原因遺伝子を見出し報告するとともに、原因遺伝子変異の種類により、臨床像が異なることを明らかにしてきた。本研究では、従来の聴力検査に遺伝子診断を組み合わせることで、より正確に、より早期に聴力の程度を予測することおよび、サブタイプごとに適切なフォローアップや適切な介入法などの手法の確立を目的としている。
研究方法
平成20年まで実施した全国33施設との共同研究により有用性の確認できた10遺伝子47変異に関して、厚生労働省に先進医療として申請し承認を得て研究成果を臨床現場に還元した。先進医療「先天性難聴の遺伝子診断」に関しては、全国22施設で実施されており、その結果のとりまとめを行った。また、新規原因遺伝子解析としてKCNQ4遺伝子およびCDH23遺伝子の解析を実施した。また、遺伝子以外の原因による難聴として先天CMV感染症による難聴の解析を実施した。
結果と考察
厚生労働省に先進医療として申請し承認を得て研究成果を臨床現場に還元した、先進医療「先天性難聴の遺伝子診断」に関しては、全国22施設で実施しており、当初の目的であった臨床の現場で利用可能な診断ツールを提供することが出来たと考えられる。また、その有用性に関しても40%近い診断率があることが確認され、臨床上の有用性が確認できた。進医療と、本研究の成果である遺伝学的検査とCMV検査を組み合わせることで小児感音難聴の50から60%難聴の診断が可能になった。また、難聴のサブタイプの一つである高音障害型の難聴に対する新しい治療法として「残存聴力活用型人工内耳」に関する臨床研究を開始し、その有用性を報告した。
結論
先進医療の実施においても共同研究時とほぼ同程度の有効性が認められた。また、先進医療と、本研究の成果である遺伝学的検査とCMV検査を組み合わせることで小児感音難聴の50から60%難聴の診断が可能になった。今後、難聴の遺伝子診断を従来の聴力検査と組み合わせて実施することで、難聴をサブタイプに分類することが可能となり、適切なフォローアップや適切な介入法などのオーダーメイド医療の実現につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規難聴原因遺伝子の候補としてCDH23遺伝子変異4種類の頻度調査を、従来の検査により遺伝子変異の認められなかった先天性難聴患者1845例に実施した結果、劣性ホモ変異 8検体、劣性コンパウンドへテロ変異 9検体、劣性へテロ変異31検体で変異が認められた。また先天性CMV感染症による難聴の解析を行い、難聴患者の9%に先天CMV感染が認められる事を明らかにした。
臨床的観点からの成果
平成22年度は、本研究の成果である先進医療「先天性難聴の遺伝子診断」の共同実施が承認され、全国の18施設との共同実施が開始することが出来た。期間中に信州大学病院など自施設で検査を実施している4施設と、共同実施をしている18施設の両施設を併せて185例の実施があり37.2%の患者から遺伝子変異が検出された。従って、先進医療の実施においても共同研究時とほぼ同程度の有効性が認められた。
ガイドライン等の開発
研究期間を通じて、先天性難聴の遺伝子解析の有用性と、遺伝子解析によるサブタイプ分類の検討を行った。その研究成果を日本人難聴遺伝子データベースとしてインターネット上で公開し、遺伝子診断によるサブタイプ分類による予後の予測などに関して重要な情報を発信することができた。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は平成20年度より先進医療として臨床への還元を開始したが、平成22年度より先進医療の共同実施が承認され、全国の18施設との共同実施が開始することができた。これにより信州大学病院など自施設で検査を実施している4施設と、共同実施をしている18施設の両施設を併せて全国22施設で本検査を受診する事が可能となった。また、検査を受診する事で、原因の特定や予後の予測、治療法の選択などの臨床的な有用性が再度確認され、患者のQOL向上に貢献可能であることが確かめられた。
その他のインパクト
本研究の成果として、難聴のサブタイプ分類が行われたため、サブタイプごとに適切なフォローアップや適切な介入法などのオーダーメイド医療が可能となってきた。平成22年度は、サブタイプにひとつである高音急墜型の聴力を呈する感音難聴に対する治療法として、欧州を中心に臨床応用されている残存聴力活用型人工内耳を高度医療として申請し、承認を得て日本(日本語話者)における有用性の検討を開始することが出来た。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsukada K, Nishio S, Usami S.
A large cohort study of GJB2 mutations in Japanese hearing loss patients.
Clin. Genet. , 78 , 464-470  (2010)
原著論文2
Usami S, Miyagawa M, Suzuki N et al.
Genetic background of candidates for EAS (electric acoustic stimulation).
Audiological Medicine. , 8 , 28-32  (2010)
原著論文3
Usami S, Moteki H, Suzuki N et al.
Achievement of hearing preservation in the presence of an electrode covering the residual hearing region
Acta Oto-Laryngologica  (2011)
原著論文4
Furutate S, Iwasaki S, Nishio S et al.
Clinical profile of hearing loss in children with congenital cytomegalovirus (CMV) infection: CMV DNA diagnosis using preserved umbilical cord
Acta Oto-Laryngologica  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027034Z