血液、尿等、生体への侵襲が少ないバイオマーカーを用いた診断方法に関する研究

文献情報

文献番号
201026003A
報告書区分
総括
研究課題名
血液、尿等、生体への侵襲が少ないバイオマーカーを用いた診断方法に関する研究
課題番号
H20-認知症・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松原 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 幸彦(国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(国立長寿医療研究センター)
  • 関山 敦生(大阪市立大学)
  • 滝川 修(国立長寿医療研究センター)
  • 渡邉 淳(国立長寿医療研究センター)
  • 鄭 且均(国立長寿医療研究センター)
  • 加藤 隆司(国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療研究センター)
  • 道川 誠(国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,170,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究血液や尿等を使用し、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病(AD)を発症する可能性のある患者を予測するスクリーニングマーカーと、MCIやADを特異的に選別する診断マーカー取得を目指す。
研究方法
MCI/ADスクリーニングバイオマーカー検証のため、健常高齢者前向きコホート研究とロゼレム経口負荷による脳内蓄積Aβ血中排泄負荷試験を、またMCI/AD診断バイオマーカー検証のため集団探索研究を展開する。さらにこうした早期診断を可能とする体制作りの基盤整備目的に早期対応方法確立を目指す。
結果と考察
I-健常者・MCI前向きコホート研究:
健常高齢者の前向きコホート研究において、追跡開始時の血漿Aβ濃度が下位25%群のMCI/AD発症リスクが1.52倍、血漿Aβ40/42比上位25%群のMCI/AD発症リスクが1.49倍であることが明らかとした。
 
II-集団探索研究:
MCI/AD特異的診断マーカー開発にむけた集団探索研究においても、Aβ40/Aβ42比と血液中のキノリン酸を含むトリプトファン代謝活性の指標であるIDO活性がMCIやAD患者で増加していること、脳内沈着AβをサロゲートするApoEのC末断片とAβ複合体がAD特異的に検出されること、サイトカイン、ケモカイン分子のうつ特異的な血中濃度の偏りを見いだした。

III-ロゼレム経口負荷による脳内蓄積Aβ血中排泄負荷試験:
ロゼレム経口負荷後、脳外へのAβクリアランスが保たれたPDDでは血漿中Aβ40とAβ42排泄が増加し、脳外へのAβクリアランスが障害されたADではむしろ血漿中Aβ40とAβ42排泄が減少することを見いだした。この結果はADモデルマウスで施行した前臨床試験の結果を再現するものであった。さらに負荷前後でのAβ40/42比はAD全例で>1.0, PDD全例で<1.0とAD判定に有用な指標であることが判明した。

IV-認知症早期発見を目指した患者家族への早期対応プログラムの開発:
認知症患者の地域における早期対応システムの現状を把握するため、看護師の認知症早期対応資源利用につき検証し、現場の看護師ですら地域包括支援センターや認知症疾患医療センターとの連携をしている割合は15%と5%と低調で、まずは認知症に関する地域での情報交換やネットワークの構築が喫緊の課題であることが明らかとなった。
結論
MCI/ADスクリーニングバイオマーカーとして、血漿Aβ40/42比、IDO活性、ApoEのC末断片とAβ複合体、ロゼレム経口負荷試験が有望であることを見いだした。

公開日・更新日

公開日
2011-07-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201026003B
報告書区分
総合
研究課題名
血液、尿等、生体への侵襲が少ないバイオマーカーを用いた診断方法に関する研究
課題番号
H20-認知症・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松原 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 幸彦(国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(国立長寿医療研究センター)
  • 関山 敦生(大阪市立大学)
  • 滝川 修(国立長寿医療研究センター)
  • 渡邉 淳(国立長寿医療研究センター)
  • 鄭 且均(国立長寿医療研究センター)
  • 加藤 隆司(国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療研究センター)
  • 道川 誠(国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液や尿等を使用し、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病(AD)を発症する可能性のある患者を予測するスクリーニングバイオマーカーと、MCIやADを特異的に選別する診断マーカー取得を目指す。
研究方法
I-健常高齢者前向きコホート研究によるMCI/AD発症予測スクリーニングバイオマーカー検証とII-不眠治療薬ロゼレム(メラトニンアナログ)経口負荷による脳内蓄積Aβ血中排泄負荷試験、III--集団探索研究での鑑別診断バイオマーカー検証、IV--認知症の早期対応方法確立を行った。
結果と考察
I-追跡開始時の血漿Aβ42濃度が下位25%群のMCI/AD発症リスクが1.52倍、血漿Aβ40/42比上位25%群のMCI/AD発症リスクが1.49倍であることを明らかとし、血漿Aβ42濃度低値と血漿Aβ40/42比高値はMCI/AD発症予測に有用なスクリーニングバイオマーカーと考えられた。
II-ロゼレム経口負荷後、脳外へのAβクリアランスが保たれている症例では血漿中Aβ40とAβ42排泄が増加し、脳外へのAβクリアランスが障害されたADではむしろ血漿中Aβ40とAβ42排泄が減少することが判明した。
III-MCI群とAD群の両者で血漿Aβ40/Aβ42比と血液中のキノリン酸を含むトリプトファン代謝活性の指標であるIDO活性が高値であること、脳内沈着Aβアミロイド沈着をサロゲートするApoEのC末断片との複合体はADのみの血漿中で検出された。血漿サイトカイン・ケモカイン10種類の濃度パターン解析から、97%の正診率でうつをスクリーニングができ、うつになりそうな危険度、重症度、治療効果も判定できる統計手法を確立した。
IV-認知症の包括的ケア提供を行うための在宅家族への教育支援プログラムの開発を行い、また認知症に関する地域での情報交換やネットワークの構築が喫緊の課題であることが明らかとした。
結論
血漿Aβ40/42比がMCI/AD発症者では健常な時期からすでに増加しており、その発症スクリーニングマーカーとして有用な可能性が、またロゼレム経口負荷試験が、ヒトでもMCIやADを発症する症例の脳内Aβ蓄積量依存的な脳外クリアランスのサロゲートマーカーとなりうる可能性が見えてきた。さらにMCI/AD鑑別診断マーカー候補として血漿Aβ40/42比と血漿キヌレイン/トリプトファン比(IDO活性)、Aβ-apoECTF複合体濃度が有望であることが判明した。また鬱鑑別マーカーを確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-07-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201026003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アルツハイマー病や軽度認知障害の発症予測マーカーとして、脳脊髄液Aβ40/42比の代用として血漿Aβ40/42比が有用である可能性を明らかとした。
臨床的観点からの成果
この先鞭的成果を実用化に向け検証することで、介護負担軽減効果が期待される。
ガイドライン等の開発
特記すべきものなし
その他行政的観点からの成果
「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の報告書において、研究・開発の促進の項目で、今後5年以内に、アルツハイマー病について早期に、確実に、身体に負担をかけない診断が可能となるよう、血液中のバイオマーカー等の早期診断技術の実用化を目標とした推進研究として評価された。
その他のインパクト
特記すべきものなし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201026003Z