高齢者に対する適切な医療提供に関する研究

文献情報

文献番号
201025026A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者に対する適切な医療提供に関する研究
課題番号
H22-長寿・指定-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院 老年病科)
研究分担者(所属機関)
  • 江頭 正人(東京大学医学部附属病院 医療評価・安全・研修部/老年病科)
  • 荒井 啓行(東北大学加齢医学研究所 脳科学研究部門 加齢老年医学研究分野)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療研究センター)
  • 荒井 秀典(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科 発育・加齢医学講座(地域在宅医療学・老年科学分野))
  • 高橋 龍太郎(東京都健康長寿医療センター・東京都老人総合研究所)
  • 鳥羽 研二(国立長寿医療研究センター)
  • 堀江 重郎(帝京大学医学部 泌尿器科学)
  • 川合 秀治(全国老人保健施設協会)
  • 武久 洋三(日本慢性期医療協会)
  • 武川 正吾(東京大学大学院人文社会系研究科 社会学研究室)
  • 森田 朗(東京大学大学院法学政治学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
様々な要因から混乱の多い高齢者医療のあり方について基礎データを得ること、特に医療提供のニーズと実態を把握することを目的とした。
研究方法
1)高齢者医療の優先順位を把握するためのアンケート調査を行った。老年病専門医、介護職員、デイケア利用者、病院通院患者、地域高齢者を対象に、重要だと考えられる12項目に優先順位を付けてもらい、集計・解析した。2)老健と療養病床における処方薬剤と有害事象の関連について後ろ向き調査を行い、老健258例、療養病床213例を解析した。3)老年病専門医に対して高齢者の経管栄養療法に対する実態調査を実施した。
結果と考察
1)優先順位調査:地域高齢者、通院患者では「病気の効果的な治療」、デイケア利用者では「身体機能の回復」、医師、介護職員では「QOLの改善」が1位であった。「死亡率の低下」、次いで「施設入所の回避」の優先順位はどの集団でも最も低かった。層別解析では、地域の前期高齢者で「介護者の負担軽減」が1位であった。回答率は地域高齢者でも55%と非常に高く、高齢者にとって関心のある調査であったと考えられる。2)薬剤調査:有害事象は、入所・入院1ヶ月以内に老健症例の43%、療養病床症例の63%に、その後2ヶ月間にはそれぞれ38%、59%に発生し、不穏、うつなどの精神症状が約半数を占めた。薬剤数の変化で分類して解析したところ、入所・入院後1ヶ月以内の有害事象は、療養病床の薬剤増加群で多く、老健の薬剤不変群で少なかった。その後2ヶ月間では、療養病床の薬剤増加群で多く、老健の薬剤増加群で少なかった。3)経管栄養療法の実態調査:参考ガイドラインがあると回答したのは3割、経管栄養療法導入の最優先理由は「全身状態の改善および合併症の予防」、臨床経験年数にかかわらず約4割の医師が認知症による食欲低下・食失行を経管栄養療法の適応であるとし、約7割の医師が少なくとも生命予後が12週間以上あることが胃瘻適応に望ましいと考えているとの結果であった。
結論
高齢者医療に求める優先順位について、患者側は医療に期待するのに対し、提供側は現実的な傾向がうかがえた。死亡率低下の優先順位が低いなど、高齢者医療のあり方を考えさせる結果である。また、施設形態によって薬剤数の変化と有害事象との関連は異なることがわかった。老年病専門医の約4割は認知症による食欲低下・食失行を経管栄養療法の適応と考えていた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201025026Z