膝痛の診断・治療に関する調査研究 -関節マーカーを用いた早期診断と予後予測の確立に関する研究-

文献情報

文献番号
201025008A
報告書区分
総括
研究課題名
膝痛の診断・治療に関する調査研究 -関節マーカーを用いた早期診断と予後予測の確立に関する研究-
課題番号
H20-長寿・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山田 治基(藤田保健衛生大学 医学部 整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石黒 直樹(名古屋大学大学院医学系研究科 整形外科 )
  • 馬淵 昭彦(東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻 人類遺伝学分野 )
  • 宗田 大(東京医科歯科大学 大学院 運動器外科学 )
  • 岩崎 倫政(北海道大学大学院医学研究科 整形外科学分野 )
  • 福井 尚志(独)国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 阿久根 徹(東京大学大学院22世紀医療センター臨床運動器 医学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,570,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
要介護となる末期変形性膝関節症(OA)患者を減少させるためOAを発症、重症化するpopulationを特異的なマーカーにより早期選別することを目的とする。
研究方法
1)大規模地域住民コホートに対するマーカーによる病態評価、2)OA軟骨変性に特異性の高い新規マーカーの開発の2方面からマーカーの有用性を検証した。
結果と考察
合計1600名に上るコホートを経年的に観察し基本データを蓄積した。本コホートについてCOMP、CTX-II、CTX-I、MMP-3、HA、CPIIの合計6種類を測定した。血清COMPは左右膝関節ともK-Lグレードとおおむね正の相関を示していた。また尿CTX-IIと血清HAもK-Lグレードによる臨床病期と正相関を示した。一方、血清MMP-3は末期で高い状態であった。CP-IIは初期および中期で上昇する傾向を示し、尿CTX-Iは中期で高い傾向を示した。一方腰椎SPについて、血清COMPは病期後半で上昇傾向を示したものの、尿CTX-IIは末期で、尿CTX-Iは初期で高い傾向を示すなど変動を認めた。血清HAは病期とともに上昇し、血清MMP-3も中期から末期で高い傾向を示した。新規糖鎖N-glycanについてはヒトOA軟骨においてhigh-mannose型糖鎖が変化していた。マウスOAモデルにおいて同定した糖鎖が軟骨におけるサイトカインやタンパク分解酵素の発現を制御していることが明らかになった。既知の複数のバイオマーカーの組み合わせによる高い精度のOAの病態評価の可能性を目指してOA症例と対照群から血液、尿の検体を採取し、19項目に及ぶ既知マーカーを計測して種々の解析を行った結果、OA症例と健常対照者を高い精度で識別できる因子の組み合わせを見出した。しかしOA症例の中で関節裂隙の狭小化が進行する症例と進行しない症例の識別は今回計測した因子をどのように組み合わせても困難であることも明らかになった。
結論
OA病態をマーカーにより評価することが可能であり本評価法はOA発症、重症化を予知する簡便なスクリーニング法として応用が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201025008B
報告書区分
総合
研究課題名
膝痛の診断・治療に関する調査研究 -関節マーカーを用いた早期診断と予後予測の確立に関する研究-
課題番号
H20-長寿・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山田 治基(藤田保健衛生大学 医学部 整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 馬淵 昭彦(東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻 人類遺伝学分野)
  • 石黒 直樹(名古屋大学大学院医学系研究科 整形外科)
  • 宗田 大(東京医科歯科大学 大学院 運動器外科学)
  • 岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究科整形外科学分野)
  • 福井尚志(独)国立病院機構相模原病院 臨床研究  センター)
  • 阿久根徹(東京大学大学院22世紀医療センター臨床運動器 医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
要介護となる末期変形性膝関節症(OA)患者を減少させるためOAを発症、重症化するpopulationを特異的なマーカーにより早期選別することを目的とする。
研究方法
1)大規模地域住民コホートに対するマーカーによる病態評価、2)OA軟骨変性に特異性の高い新規マーカーの開発の2方面からマーカーの有用性を検証した。

結果と考察
合計1600名に上るコホートについてCOMP、CTX-II、CTX-I、MMP-3、HA、CPII、ペントシジンの計7種類のマーカーを測定した。血清COMP、CTX-II、血清HAは膝関節ともK-Lグレードとおおむね正の相関を示していた。血清MMP-3は末期で高い状態であった。CP-IIは初期および中期で上昇する傾向を示し、尿CTX-Iは中期で高い傾向を示した。血漿ペントシジン高値は変形性膝関節症の有無や膝指標値と有意に関連していた。ヒトOAの発症ではhigh-mannose型糖鎖が重要な機能を担っている可能性が示され同定された糖鎖のOAの病態における機能も証明された。OAの関節液中に存在する間葉幹細胞は骨髄由来のものよりも滑膜由来のものに類似した。関節液中の間細胞から抽出した遺伝子は関節液・滑膜由来の間葉幹細胞と骨髄間葉幹細胞を鑑別するin vivoマーカーとして有用であった。いわゆる生活習慣病に対する効果を持つと考えられる生活習慣の維持している群について軟骨分解産物であるC2Cによる評価においては、このような生活習慣が維持されなかった群に比して良い状態にあると考えられた。新規マーカーであるC2C評価も加えることによる骨軟骨の代謝状態の把握は運動継続など健康状態維持のマーカーとしての可能性があると考えられる。既知の複数のバイオマーカーの組み合わせによる高い精度のOAの病態評価の可能性を目指してOA症例と対照群から血液、尿の検体を採取し、19項目に及ぶ既知マーカーを計測して種々の解析を行った結果、OA症例と健常対照者を高い精度で識別できる因子の組み合わせを見出した。

結論
OA病態をマーカーにより評価することが可能であり本評価法はOA発症、重症化を予知する簡便なスクリーニング法として応用が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-08-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201025008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
OAの発症には明かな人種差があるが本研究により軟骨マトリックスの代謝を反映する血中、尿中のマーカーであるCOMPおよびCTX-IIがOA病態と密接に相関していることが本邦の大規模コホートを用いてはじめて明かとなった。新規マーカーとして糖鎖N-glycan、関節液中幹細胞、II型コラーゲンの酵素による切断片などがOA病態を反映していることが明かとなった。ROC解析で検討した結果、既知マーカーの効率的な組み合わせによりOAの診断、評価能が高められることが示された。
臨床的観点からの成果
OAは初期には自己修復の期待できる疾患であり高度な機能低下を来す前に早期診断できれば本症に起因する将来の要介護者を効果的に減少させ得る。OAの早期診断法としてMRIを用いた画像診断法が盛んに報告されているがOA患者数を勘案すると効率、コストなどの面での大きな制約が存在する。本研究によりOA病態を体液マーカーにより評価することが可能であることが本邦の大規模コホートを使用してはじめて明らかにされ患者数の膨大なOAの発症、重症化を予知する簡便なスクリーニング法として有用な事が示された。

ガイドライン等の開発
本邦の地域住民コホートにおいてOAの発症を精度よく識別できる軟骨マーカーについて非常に精度の高いデータが得られ経年調査結果の統計解析、および身体機能評価項目の強化を行うことによって要介護となり得る有症患者の早期評価につながる指標を見出すことができる可能性が示された。最終的にはOAの早期診断及び重症化予測に有用と思われる標的マーカーを用いた簡便かつ実用的な診断支援ツールの開発に寄与させ早期発見による予防治療介入によってOAの進行を未然に防止し介護予防力の向上に資するマーカー診断法の確立を狙う。
その他行政的観点からの成果
OAは初期には骨・軟骨の自己修復が期待できる疾患であり関節マーカーによ早期に検知して生活習慣の改善、体重軽減、運動療法等といった啓蒙を効果的に組み合わせることで進行を防止し将来的な要介護患者の発生を低下させることが可能である。関節マーカーにより診断された早期OA患者について効果的な介入により仮に「新健康フロンティア戦略」の目標である3割が重症化を免れたとすると4500億円の介護経費削減につながることが予想されるほか人工関節等の高額医療費の軽減が見込まれるなど、その費用対効果は非常に大きい。
その他のインパクト
わが国のOAは約3000万人(平成16年国民生活基礎調査)といわれており、今後増加の一途をたどる。要介護の原因の10%がOAとされているが要介護者数は2015年には500万人に達すると予想されており50万人が該当する。一人当たりの介護費用を年300万円とすると1兆5000億円が必要となる。本マーカーの応用により将来の重症化するpopulationを効率的に把握することによりOAに起因する要介護者に対して集学的に予知、予防が可能となり国民総医療費の抑制でのインパクトは大きい。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
76件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
取得1件、出願中3件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukui N, Yamane S, Ishida S et al.
Relationship between radiographic changes and symptoms or psysical examination findings in subjects with symptomatic medial knee osteoarthritis:a three-year prospective study
BMC Musculoskeletal disorders , 269 (11) , 1471-2474  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201025008Z