Menkes病・occipital horn症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発

文献情報

文献番号
201024271A
報告書区分
総括
研究課題名
Menkes病・occipital horn症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発
課題番号
H22-難治・一般-216
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 浩子(帝京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 英伸(帝京大学 医学部)
  • 藤澤 千恵(帝京大学 医学部)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 清水 教一(東邦大学 医学部)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 顧 艶紅(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Menkes病 (MD) は銅欠乏による重篤な中枢神経障害や結合織異常を呈する。早期治療開始で神経障害は予防できるが、結合織障害は予防できない。したがって早期診断法と有効な治療法の開発が待たれている。Occipital horn症候群(OHS)はMDの軽症であるが、発症頻度は不明で、治療法もない。本研究の目的は両疾患の発症頻度等を実態調査で解明し、早期診断基準を作成する。さらに同意の得られたMD患者に新規治療法を試み、その効果・副作用を検討し、治療法を確立する。
研究方法
1.実態調査:両疾患の診療経験について、関連施設医師に全国アンケート調査を行った。
2.遺伝子型―表現型の関連:遺伝子解析を希望する患者で、遺伝子解析を行い、臨床情報と遺伝子解析結果との相関を調べた。
3.新規治療法(ジスルフィラム経口投与とヒスチジン銅皮下注射)の検討
①モデルマウスでの検討:MDモデルマウスを治療群と対象群(銅のみ投与)に分けた。体重増加および治療1カ月後の脳の銅濃度、チトクロームCオキシダーゼ活性等を分析し、肝機能、腎機能等も検討した。
②患者への新規治療の実施:ジスルフィラムはアルコール中毒治療薬として保険認可薬である。患者に本併用療法を行い、効果の評価および副作用を明らかにする。
結果と考察
1.実態調査、広報活動:3,11施設にアンケート調査を依頼して、62例のMD、7例のOHSを登録した。2次調査で、早期症状などが明らかになり、早期診断法が確立すると思われる。広報活動として、両疾患の情報webを立ち上げた。
2.遺伝子型―表現型の関連の解明:57例のMD、2例のOHSの遺伝子解析を行い、OHSはsplice-site変異とmissense変異であることを明らかにした。
3.新規治療法の検討
①マウスでの検討結果:治療群では体重増加が良好で、小脳・血液の銅濃度、小脳チトクロームCオキシダーゼ活性が改善した。明らかな副作用はなかった。
②患者への新規治療の実施:7名のMenkes病患者で併用療法を開始した。1例で血清銅・セルロプラスミン値は上昇し、よく笑う、上肢をよく動かす等の全身状態の改善が見られた。全例において明らかな副作用は見られていない。まだ開始したばかりであり、今後経過を観察する。
結論
両疾患の発症頻度がほぼ解明された。新規治療法が有効であることを示唆する結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024271C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は平成22年度の2次募集の事業で、平成22年8月26日に採択になり研究を開始した。24年度が最終年度であった。全国実態調査の解析によりMenkes病(MD)、Occipital horn症候群(OHS)両疾患の発症頻度を明らかにし、発症前の詳細な症状の解明により早期診断法を確立した。更に、患者でジスルフィラム経口投与とヒスチジン銅皮下注射の新規併用療法を実施し、数例で臨床症状や血清銅・セルロプラスミン値の改善が認められている。両疾患の新規治療法確立に向けて、確実に前進することができた。
臨床的観点からの成果
MD及びOHSには、有効な治療法がなく、特にMDは難治性痙攣、頭蓋内出血など症状が重篤である。本研究成果により両疾患の早期診断法が確立された。今後、一般小児科医などに認知されることにより、両疾患の早期診断の進展に繋がることが期待される。ジスルフィラム(ノックビン)経口投与とヒスチジン銅皮下注射の新規併用療法を検討し、有効であることを示唆する結果を得ることができた。副作用も認められていない。今後、より詳細に検討する必要はあるが、本研究成果は、患者・家族にとって非常に有益である。
ガイドライン等の開発
全国実態調査の解析により、MD及びOHS両疾患の発症頻度を明らかにした。また発症前の詳細な症状の解明により早期診断法を確立することができた。新規併用療法では、副作用は見られておらず、有効であることを示唆する結果を得ることができた。これらの研究成果を踏まえ、24年度に両疾患の診断・治療指針の原案を作成した。MD及びOHSの診断・治療指針作成に当たっては、日本小児神経学会の支援共同研究として採択されている。更に改良を加え、より充実したものに改正し、25年度内に日本小児神経学会の承認を得る計画である。
その他行政的観点からの成果
MD患児は難治性痙攣、骨折、繰り返す尿路感染、頭蓋内出血などの障害を呈し、重度心身障害児である。重度の神経障害や結合織異常に苦しんでおり、有効な治療法の開発が切望されている。本研究成果により、早期診断が可能になり、早期に新規併用療法を開始することによって、上記障害を予防・改善させることが可能になり、厚生行政に非常に貢献すると考えられる。すなわち、本事業の課題である“希少かつ難治性疾患の克服”が真に達成され、医療費抑制への貢献も大である。
その他のインパクト
メンケス病家族会を平成23年10月に帝京大学で、平成25年4月大阪市立大学で開催した。数名の患者、その家族が参加し意見交換を行った。また、平成25年2月に帝京大学で公開シンポジウムを開催した。研究者、医療関係者、患者、患者家族など50名以上が参加して、研究成果の発表、患者家族の発表などを行った。更に、本研究成果は、平成23年10月にトルコで開催されたISTERH 2012国際学会、平成24年9月にイギリスで開催されたSSIEM 2013国際学会で発表され、国内外の研究者や医療関係者に公表された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
公開シンポジウム「難病・希少疾患を理解し克服する」平成23~25年2月開催、ホームページURL(http://www.pediatric-world.com/menkes/index.html)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kodama H, Fujisawa C, Bhadhprasit W.
Inherited copper transport disorders: biochemical mechanisms, diagnosis, and treatment.
Curr Drug Metab. , 13 (3) , 237-250  (2012)
原著論文2
Bhadhprasit W, Kodama H, Fujisawa C et al.
Effect of copper and disulfiram combination therapy on the macular mouse, a model of Menkes disease.
J Trace Elem Med Biol. , 26 , 105-108  (2012)
原著論文3
Ogawa E, Kodama H.
Effect of disulfiram treatment in patients with Menkes disease and occipital horn syndrome.
J Trace Elem Med Biol. , 26 , 102-104  (2012)
原著論文4
Gu YH, Kodama H, Kato T.
Congenital abnormalities in Japanease patients with Menkes disease.
Brain and Dev. , 34 (9) , 746-749  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024271Z