腎性低尿酸血症の全国的実態把握

文献情報

文献番号
201024259A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性低尿酸血症の全国的実態把握
課題番号
H22-難治・一般-204
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 洋孝(防衛医科大学校 分子生体制御学講座 )
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 内科学講座)
  • 高田 龍平(東京大学 医学部附属病院 薬剤部)
  • 市田 公美(東京薬科大学 病態生理学講座)
  • 中村 好宏(防衛医科大学校 数学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎性低尿酸血症について全国からの症例収集と複数の大規模健康診断データの活用により、本疾患に関する情報を集積し、診断基準を確立することを目的とする。
研究方法
無症候性低尿酸血症症例の収集と頻度解析のために、静岡県浜松地区の健診サンプル5,019例や、北海道八雲地区での570例について、健診データの解析とゲノム解析を実施した。自衛隊員の健康診断については、21,060例の健診データの収集を行った。また、症候性低尿酸血症症例(運動後急性腎不全などの合併症を持つ低尿酸血症)の収集については、国内外の症例の臨床データとゲノムサンプルの収集に努めた。これらのサンプルを用いて低尿酸血症の頻度解析と臨床遺伝学的解析を実施して、腎性低尿酸血症1型、2型における全国的な実態を把握し、疾患情報の十分な集積を行うとともに、診断基準の確立に向けた調査研究を行った。
結果と考察
健診サンプル5,019例についての低尿酸血症の頻度解析の結果、血清尿酸値 1.0 mg/dl以下の症例は、0.12%に認められた。尿酸値2.0 mg/dl以下の症例は0.18%、3.0 mg/dl以下の症例は2.51%に認められた。この5,019例の健診サンプルを対象に、尿酸値の調節に関わる3つの尿酸トランスポーター遺伝子(URAT1, GLUT9, ABCG2)について遺伝子変異(SNP)の解析を実施し、URAT1のW258X変異の血清尿酸値に対する影響が最も大きい事が確認された。また、症候性低尿酸血症症例については210例の症例が収集され、新規病因変異を含めて腎性低尿酸血症の病因変異が同定された。
結論
本研究により、重篤な合併症の存在が問題となる腎性低尿酸血症の全国的実態把握のための研究基盤ができた。すなわち、多数の健診サンプル及び症例の臨床データや遺伝子解析の結果を集積する体制、並びに新規病因遺伝子同定のための研究基盤が構築された。また、これにより患者の負担が大きい現行の薬物負荷試験に代わる効率的で安価なサブタイプ鑑別法の開発が期待される。全国的実態調査を伴う本疾患の分子機構の解明や診断方法の確立は、医療従事者および患者への適切な啓蒙にもつながり、ひいては重篤な合併症に対する効果的な予防対策につながることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024259C

成果

専門的・学術的観点からの成果
腎性低尿酸血症は、近位尿細管における尿酸再吸収不全に起因する尿酸輸送体病である。これまでの我々の研究により2つの尿酸輸送体遺伝子が病因遺伝子として同定され、それぞれ腎性低尿酸血症1型及び2型と分類されるようになった。また、いずれの型にも属さない3型の存在が明らかとなり、現在、原因遺伝子を探索中である。24年度末まで継続実施される本研究では、これら原因遺伝子の機能及び変異の解析により、本疾患の分子機構の全容解明並びに尿酸関連疾患の標的分子の同定が期待できる。
臨床的観点からの成果
腎性低尿酸血症は、尿路結石のほか重篤な運動後急性腎不全を引き起こすにも関わらず、現状では病名の認知度が低い。本研究によりその分子病態をより明らかにするとともに、普及・啓蒙活動を促進することにより、本疾患に関する医学的知識の普及が期待できる。病型分類の方法についても、これまでは患者に負担となる薬剤負荷試験のみが提唱されてきたが、本研究による遺伝子解析の結果を反映させることで、患者負担の少ない診断法の確立が期待できる。
ガイドライン等の開発
現在、ガイドラインを作成中である。平成24年度末までの研究成果をもって完成予定である。
その他行政的観点からの成果
上記のガイドラインに加えて、腎性低尿酸血症の重篤な合併症である運動後急性腎不全の対策をまとめる予定である。また、合併症の見落としを未然に防止するための意識啓発を目的とした、医療従事者向けの資料を24年度末までに作成する予定である。
その他のインパクト
シンポジウムや講演会での発表を通して、腎性低尿酸血症の分子病態並びにその重篤な合併症である運動後急性腎不全の対策や防止法等について、医療従事者を含めて普及・啓発活動に努めた。関連の学会発表については、Medical Tribune(医学関連の新聞)に紹介された。また、関連特許についても現在申請中である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
ガイドラインについては現在作成中である。平成24年度末までに完成予定。
その他成果(普及・啓発活動)
5件
シンポジウムや講演会での発表を通して、普及・啓発活動に努めた。関連の学会発表については、医学関連の新聞に紹介された。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024259Z