文献情報
文献番号
201024256A
報告書区分
総括
研究課題名
孔脳症の遺伝的要因の解明
課題番号
H22-難治・一般-201
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
才津 浩智(横浜市立大学 医学部 環境分子医科学遺伝学教室)
研究分担者(所属機関)
- 萩野谷 和裕(東北大学 医学部 小児科)
- 加藤 光広(山形大学 医学部 小児科)
- 小坂 仁(神奈川県立こども医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
孔脳症(porencephaly)は、大脳半球内に脳室との交通を有する嚢胞または空洞がみられる先天異常で、片側の側脳室体部に隣接する脳実質に観察されることが多い。脳性麻痺、特に片麻痺の重要な原因である。諸外国においては、発症率は10万人に0.5-3.5人程度とされるが、本邦での正確な頻度は不明である。胎生期における梗塞や出血といった脳循環障害により発生すると推測されているが、その原因の多くは不明である。これまで、プロコラーゲン4A1(COL4A1)遺伝子の異常が一部の家系例で報告されているのみで、弧発例におけるCOL4A1を含む遺伝学的検討の報告は皆無であった。本研究は、孔脳症における遺伝要因の解明を目的としている。
研究方法
孔脳症のほとんどは弧発例であるため、従来行われてきた家系例による連鎖解析では責任遺伝子の単離に限界がある。弧発例がほとんどである疾患においては、転座や欠失といった染色体構造異常を手がかりとして疾患責任遺伝子を同定する手法が有効である。本研究では、COL4A1遺伝子およびその機能的関連遺伝子の変異解析と並行して、全ゲノム解析用高密度オリゴDNAマイクロアレイを用いて発症に関与する染色体コピー数異常を網羅的に検索する。
結果と考察
COL4A1遺伝子およびその機能的関連遺伝子について変異解析を行った。現在までに20症例を解析し、うち2例において遺伝子Aのde novoのミスセンス変異を同定した。これら2つの変異は正常検体400例で認められない変異であり、遺伝子Aの変異が、弧発例の孔脳症の原因になっていることは明白である。また、高密度オリゴDNAマイクロアレイを用いて、遺伝子変異が同定されない症例に対して全ゲノム微細構造異常解析を開始した。既に16症例でマイクロアレイ解析および定量PCRによる検証が終了しており、遺伝子を含む新規CNVを計11ヶ所検出している。
結論
本研究班では、既に2例において遺伝子Aのde novo変異を同定しており、遺伝子異常が脳性麻痺を引き起こすという、画期的な研究成果が得られ始めている。本研究により、弧発例の孔脳症に遺伝子異常が関与していることは明らかであり、今後解析を続けることで変異症例が蓄積し、特定の遺伝子変異による臨床病型を確立できる可能性が高いと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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