文献情報
文献番号
201024253A
報告書区分
総括
研究課題名
NOD2変異を基盤とするブラウ症候群/若年発症サルコイドーシスに対する診療基盤の開発
課題番号
H22-難治・一般-198
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神戸 直智(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 松江 弘之(千葉大学 大学院医学研究院)
- 池田 啓(千葉大学 医学部附属病院)
- 金澤 伸雄(和歌山県立医科大学 医学部)
- 武井 修治(鹿児島大学 医学部)
- 西小森 隆太(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ブラウ症候群および若年発症サルコイドーシスは,NOD2遺伝子の変異を背景とする肉芽腫性疾患である。しかし,NOD2の活性化が肉芽腫を形成させる機序は明らかでない。また,疾患概念が浸透しておらず,病勢を進行させている印象を抱いた。この様な実態を踏まえて,実態調査を行うとともに疾患概念の浸透を図り,また臨床症状からNOD2の活性化が関わる病態を明確化する。NOD2の活性化が患者においても確認できるのかを検討する。関節エコーによる観察が治療介入時の評価に有用であるかを検討する,ことを目的とした。
研究方法
全国の主要診療施設(小児科,皮膚科,眼科,内科)にアンケート調査を行い,疾患概念の浸透と疑診例の発掘を図った。同定したNOD2変異を細胞株へと遺伝子導入し,細胞株レベルで検索が進む系を立ち上げた。関節エコーが病態解析と病勢評価に足るものであるかを検討した。
結果と考察
500床以上の病院を対象にアンケートを送付し,1268通の返信を回収し(回収率:41.0%),診断確定例28例,疑い症例12例,という結果を得た。遺伝子解析で28症例の遺伝子型を集計し,ミスセンス変異のみでなく,6塩基欠失の症例を同定した。変異NOD2は,いずれもリガンド非依存的なNF-κB活性化能を認めた。臨床症状をまとめ,関節炎,手背・足背の嚢腫状腫脹,可動域制限を伴わない指趾中節関節の屈曲,自己抗体陰性が特徴的であり,関節炎は中核病態と思われた。嚢腫状腫脹と経過とともに顕在化する可動性を残した指趾中節関節の屈曲拘縮は本症に特有であり,鑑別に有用と思われた。ぶどう膜炎,弛張熱,皮疹がある例は,本症の可能性が高いことが示唆された。病態解析の試みとして,NOD2変異を導入したヒト単球系細胞株を樹立した。PMA刺激により接着性が亢進し,ICAM-1の持続的発現とPDGF-Bの一過性発現を伴うことを見出し,患者病変部皮膚でも確認した。関節病変を超音波検査で経時的に評価し,炎症の主座が腱鞘滑膜であること,自然寛解し得ること,しかし長期的な経過の結果,関節破壊を来し得ることが示された。
結論
本症の臨床像は特徴的であるため,医療関係者等の関心を高めることができれば,適切な医学的対応が可能となり,生活に支障を来す重度障害の予防ができる。このため,疾患の紹介と情報提供を今後も継続して行う必要があると考えた。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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