わが国初の周産期心筋症の診断治療指針を作成するための臨床研究

文献情報

文献番号
201024197A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国初の周産期心筋症の診断治療指針を作成するための臨床研究
課題番号
H22-難治・一般-142
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 千津子(独立行政法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(独立行政法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
  • 植田 初江(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床検査部臨床病理科)
  • 岸本 一郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
  • 石田 充代(明治大学 農学部)
  • 神谷 厚範(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊娠に関連して発症する周産期心筋症は、妊産婦死亡の原因として重要な疾患であるが、わが国においては疾患概念すら周知されていない。そこで平成21年度、厚労科学研究として初の後方視的全国調査を実施し、発症率(約2万分娩に1例)、危険因子(高齢、高血圧合併、多胎、子宮収縮抑制剤の使用)、問題点(息切れ・むくみなどの心不全症状が、正常妊婦も訴える症状と類似していること、初診医の大多数が産科医や一般内科医であり、普段心不全診療に携わっていないこと)などを明らかにした。本研究は、後方視的調査では充分に検討できなかった既往歴・危険因子の詳細や長期予後、心エコー・血清検査を中心とした各種検査項目、新規治療成績について検討するため、前方視的全国調査や正常妊婦における検査値の検討を実施し、診断治療指針作成の基盤とする。
研究方法
2010年10月国立循環器病研究センターの倫理委員会にて研究承諾を得、前方視的全国調査を開始した。調査では、病歴や検査値などのデータ収集とともに、採血検体や、心筋生検施行例では組織検体も含めて採取を行い、かつ、近年新規治療として報告のある抗プロラクチン療法の有効性についても検討する。また、正常妊婦における心エコー・採血検査を実施した。
結果と考察
前方視的全国調査においては、現在までに7例の登録をいただいた。今後、調査についての広報を積極的に行い、まずは50症例の登録を目標とする。正常妊婦においても、心エコー検査は約70例、採血検査は約10例で実施した。今後症例を増やして比較検討を行う。
また、当研究班による全国調査結果のサブ解析では、高血圧合併周産期心筋症患者が、非合併患者に比して長期予後が良好であり、周産期心筋症の中でも高血圧合併が特異なサブカテゴリーに属する可能性が示唆された。心筋生検より心筋炎が強く疑われる症例や、海外からは遺伝性心筋症の原因遺伝子を持つ症例の報告もあり、周産期心筋症とひとくくりになっている疾患概念の中には、多種多様なetiologyの心疾患が混在していると考えるべきであろう。診断指針作成に当たっては、病因を明らかにとらえた疾患概念の確立が重要である。
 
 
結論
今後、妊婦の高齢化に伴い、わが国においても症例数の増加が予測される(現に、アメリカでは、年々発症数が増えていることが報告されている)。疾患概念を周知させ、リスクを把握し、予防もしくは早期発見早期治療にむけた取り組みが必須である。今後、本調査結果をもとにした診断・治療ガイドライン作成が急務の課題である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024197Z