自己貪食空胞性ミオパチーの診断基準確立と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201024174A
報告書区分
総括
研究課題名
自己貪食空胞性ミオパチーの診断基準確立と治療法開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-119
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉江 和馬(公立大学法人 奈良県立医科大学 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
  • 金田 大太(大阪赤十字病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)は、筋細胞内の特異な自己貪食空胞(AVSF)を特徴とする稀な筋疾患である。AVM には、Danon病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチー(XMEA)が含まれるが、いずれも臨床病態や発症機序は未解明の部分が多い。AVMの正確な診断や適切な治療を行うためには、本疾患の診断基準確立と治療法開発は必要不可欠である。今年度は、本邦でのAVMの各臨床病型の実態を把握するため、本診断基準を踏まえて、専門医や関連施設を通じて全国での疫学調査を行い、患者数や有病率、臨床症状の多様性の把握に努める。
研究方法
今回、昨年度の本研究班で作成したAVMの診断基準を踏まえ、全国2,617の関連学会の施設に対し、本邦でのAVMの実態調査(第1次調査)を行った。また、研究実施機関である国立精神・神経医療研究センターで管理する、新規患者を含めたAVM患者の臨床情報の整理と、生検筋での筋病理学的特徴について解析した。さらに、生命予後決定因子となる重要な遺伝性心筋症の病態形成機構解明に関する研究も行った。
結果と考察
全国実態調査の第1次調査の結果、1409施設から回答があり(回収率 54%)、疑い例を含めAVM患者全体では 44例と大変稀少であった。AVM患者の約半数がDanon病であった。Danon病の男性患者は、確定 16例、疑い 6例で、XMEA患者は、確定 1例、疑い 4例であった。AVM患者の臨床情報の解析で、Danon病患者全例で致死性心筋症を認め、成人型は肥大型を呈した。XMEAとXMEA類似疾患では心筋障害は認めなかった。病理学的には全病型でAVSFを認めたが、細胞膜の重層化はDanon病以外の病型の特徴であり、遺伝子変異との関与が示唆された。今回の検討で、XMEAのアレル病が発見される一方、AVSFを有するAVMでありながら、既知の臨床病型に該当しない症例が複数見出され、今後、AVMの臨床病型の分類に再検討が必要と考えられる。一方、遺伝性心筋症の臨床病態解析を行い、心筋症における横紋筋I帯要素異常の発見し、筋ジストロフィーを来す横紋筋に特異的に発現する新規Z帯蛋白を同定した。
結論
今回、自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)の診断基準確立に向けて、本邦での疫学調査による実態調査を行った。今後は、現段階での適正な治療ガイドラインの策定、さらには基礎的な病理学的研究から根本治療法の開発が求められる。また、本研究でXMEAのアレル病を発見し、一方既知の病型に該当しないAVM例が複数見出され、今後、AVMの臨床病型の分類に再検討が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024174Z