封入体筋炎(IBM)の臨床病理学的調査および診断基準の精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
201024172A
報告書区分
総括
研究課題名
封入体筋炎(IBM)の臨床病理学的調査および診断基準の精度向上に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-117
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 森まどか(吉村まどか)(国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)
  • 日下 博文(関西医科大学神経内科学講座)
  • 樋口 逸郎(鹿児島大学医学部・歯学部附属病院・神経内科)
  • 近藤 智善(公立大学法人和歌山県立医科大学・神経内科)
  • 内野 誠(熊本大学大学院神経内科学分野)
  • 梶 龍兒(国立大学法人徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部臨床神経科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
封入体筋炎(Sporadic Inclusion Body Myositis:以下IBM)は骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ炎症細胞浸潤を伴う難治性・進行性筋疾患である。欧米では高齢者の筋疾患の中で最多という報告もあるが、IBMの日本での自然歴や有病率は検討されたことがない。本研究は日本での診断基準の作成、有病率の推定、病態の解析の基盤となることが目的である。
研究方法
日本人での後向き調査を元に欧米で用いられている診断基準を見直し、IBM診断基準を作成する。さらに筋病理診断数から有病率を推定するとともに、神経内科専門医・患者アンケートにより有病率を推定し、自然歴を解析する。
結果と考察
国立精神・神経医療研究センターの全国からの検体情報と各協力施設の症例を検討し日本での有病率の概数を2003年時点で10万人当り1.17人と推定した。これは1990年代前半の0.25人と比較して5倍弱の増加であり日本でIBMが増加していることを裏付ける結果であった。現在日本には1000-1500人前後のIBM患者がいると考えられる。この後向き調査を元に暫定的な日本語版の診断基準を作成した。平成22年度は全国の神経内科専門医を対象に新規診断数および外来受診者数の調査を行った。2005年からの5年間での神経内科専門医による新規診断数は1047名と算定された。さらにIBM患者アンケートでは症状の出現時期としてはしゃがみ立ち不能が発症後4.6年、車椅子が7.3年、電動車椅子が13.7年、ペットボトルの開栓不能が6.6年、洗顔不能が7.2年であった。これらは将来的な治験などを行ううえで自然歴として重要なマイルストーンと考えられる。また患者アンケートにより病期のマイルストーンや患者の抱く不安について明らかにすることができた。公費負担を含めた社会的支援も必要と考える。
結論
全国からの検体情報と各協力施設の症例を検討することにより日本でIBMが増加していることを裏付ける結果であった。現在日本には1000-1500人前後のIBM患者がいると推定できる。今回の後向き調査を元に暫定的な日本語版の診断基準を作成することができた。今後は継続した前向き調査での病態解明や患者数把握が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024172Z