文献情報
文献番号
202527008A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の中長期的な心身の健康リスクの解明とフォローアップ・支援体制の構築に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
河野 由美(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 諫山 哲哉(国立成育医療研究センター 新生児科)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域)
- 長 和俊(北海道大学病院周産母子センター)
- 豊島 勝昭(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 新生児科)
- 岩田 幸子(名古屋市立大学 新生児・小児医学分野)
- 平野 慎也(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
- 中野 有也(昭和大学 医学部)
- 竹内 章人(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部) 成育医療推進室)
- 落合 正行(九州大学病院 小児科)
- 橋本 圭司(昭和大学 医学部リハビリテーション医学講座)
- 永田 雅子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
低出生体重児は乳幼児期に成長発達の遅れや神経発達症のリスクが高いことが報告されているが、学童期以降の長期的な心身の健康リスクに関する日本のデータは不足している。極低出生体重児を中心とした成人期までのフォローアップ体制を整備するため、本年度は、1)低出生体重児の成人期までの成長発達および心身の健康状態に関する文献の系統的レビュー(以下、系統的レビュー)の完成、2)学童期以降の極低出生体重児を対象とした実態調査(以下、患者実態調査)の解析、3)これらの結果を基に、自治体や一次医療機関の専門職者が利用可能な「低出生体重児の中長期的な心身の健康のための支援の手引き」(以下、支援の手引き)の作成を目的とした。
研究方法
1)系統的レビュー:低出生体重児・早産児の成人期予後を包括的に把握するアンブレラレビューを実施した。昨年度までにPROSPERO登録後、一次・二次・フルスクリーニングを行い抽出した論文について、本年度は長期予後のカテゴリー化を行い、全論文を精査して要約を作成した。
2)患者実態調査:対象は極低出生体重で出生したA群(8~10歳)、B群(12~14歳)、C群(16~18歳)、D群(22~24歳)の本人および保護者とした。2024年8~12月に郵送で回収した質問紙の回答をデータベース化し、解析を行った。
3)支援の手引き作成:退院後から成人期まで児と家族を継続して支援するために必要な情報をまとめ、自治体や一次医療機関の保健職・医療職向けの手引きを作成した。内容は本研究の結果に加え、健康にかかわる医療情報、福祉・教育の情報を包括し、自治体保健師の意見も反映させた。
2)患者実態調査:対象は極低出生体重で出生したA群(8~10歳)、B群(12~14歳)、C群(16~18歳)、D群(22~24歳)の本人および保護者とした。2024年8~12月に郵送で回収した質問紙の回答をデータベース化し、解析を行った。
3)支援の手引き作成:退院後から成人期まで児と家族を継続して支援するために必要な情報をまとめ、自治体や一次医療機関の保健職・医療職向けの手引きを作成した。内容は本研究の結果に加え、健康にかかわる医療情報、福祉・教育の情報を包括し、自治体保健師の意見も反映させた。
結果と考察
1)系統的レビューでは、約4800論文の一次スクリーニングから抽出された約220論文のフルスクリーニングをすすめ、最終的に80論文が対象となった。最終対象論文の成人期予後のカテゴリー分類を作成し、評価年齢、主要結果、副次的結果のまとめを作成した。
2)患者実態調査は、A群284名、B群286名、C群303名、D群173名の合計1046名を対象とした。健康と生活状況では、医療機関を定期受診中の割合は、どの年齢群でも40%を超えており、成人期まで高率であった。成人期のADHDの自己記入式症状チェックリストの解析では、D群の不注意優位型のADHDに該当する症状をもつ割合は一般成人より高率だった。ASDの特性を示すAutism-Spectrum Quotientスコアはすべての群で一般集団より高く、陽性率も高率であった。A群、B群の平均QOLスコアは子・親の評価ともに一般集団のQOLスコアより低く、下位項目の中では身体的健康のスコアが最も低値であった。C群、D群のQOLスコアは一般集団と比べ平均値が極端に低下している項目はなかったが、神経発達症および精神疾患の合併がスコアの低下と有意に関連していた。これらの調査結果は、身体的健康、神経発達、社会的機能の長期的なフォローアップと社会的支援の重要性を示唆していた。
3) 支援の手引きの作成では、系統的レビューと調査結果に基づき、自治体や一次医療機関等の専門職者が利用できる、中長期的な支援の手引きを作成し、公開した。医療機関入院中、退院後から成人期までの低出生体重児、早産児の成長発達、健康課題やQOLの現状、必要とされる支援について解説し、家族から多い相談への年齢区分別の具体的な対応方法などを記載した。
2)患者実態調査は、A群284名、B群286名、C群303名、D群173名の合計1046名を対象とした。健康と生活状況では、医療機関を定期受診中の割合は、どの年齢群でも40%を超えており、成人期まで高率であった。成人期のADHDの自己記入式症状チェックリストの解析では、D群の不注意優位型のADHDに該当する症状をもつ割合は一般成人より高率だった。ASDの特性を示すAutism-Spectrum Quotientスコアはすべての群で一般集団より高く、陽性率も高率であった。A群、B群の平均QOLスコアは子・親の評価ともに一般集団のQOLスコアより低く、下位項目の中では身体的健康のスコアが最も低値であった。C群、D群のQOLスコアは一般集団と比べ平均値が極端に低下している項目はなかったが、神経発達症および精神疾患の合併がスコアの低下と有意に関連していた。これらの調査結果は、身体的健康、神経発達、社会的機能の長期的なフォローアップと社会的支援の重要性を示唆していた。
3) 支援の手引きの作成では、系統的レビューと調査結果に基づき、自治体や一次医療機関等の専門職者が利用できる、中長期的な支援の手引きを作成し、公開した。医療機関入院中、退院後から成人期までの低出生体重児、早産児の成長発達、健康課題やQOLの現状、必要とされる支援について解説し、家族から多い相談への年齢区分別の具体的な対応方法などを記載した。
結論
極低出生体重児を中心とした低出生体重児の成人期までの心身の健康リスクについて、系統的レビューにより既存の課題を整理した。患者実態調査では、年齢群別の健康状態や社会生活状況を把握し、ADHD・ASD特性の合併、QOL評価を、一般集団の標準値と比較して示した。前年度までの結果も加えて、中長期的な心身の健康支援のための支援の手引きを作成した。手引きの活用は、医療・保健・福祉・教育を横断した切れ目のない支援に寄与すると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2026-07-22
更新日
-