Wolfram症候群の実態調査に基づく早期診断法の確立と診療指針作成のための研究

文献情報

文献番号
201024157A
報告書区分
総括
研究課題名
Wolfram症候群の実態調査に基づく早期診断法の確立と診療指針作成のための研究
課題番号
H22-難治・一般-102
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
谷澤 幸生(山口大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 芳知(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 山田 祐一郎(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 和田 安彦(高知女子大学 生活科学部)
  • 雨宮 伸(埼玉医科大学 医学部)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学 東医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本でのWolfram症候群(WFS)の発症率・有病率、症候や治療の実態を明らかにし、遺伝子検査を組み合わせて早期診断法を確立する。さらに、その実態に基づいて診療指針を提案し、患者の福祉向上に資する。同時に、基礎的、臨床的研究によりWFSの病態を明らかにする。
研究方法
糖尿病・内分泌代謝専門医、小児慢性特定疾患治療研究事業(糖尿病)登録医に対して調査を行った。WFSの経験者に詳細な病歴調査を依頼し、患者の同意を得て遺伝子診断を進めた。患者の視神経萎縮について詳細な眼科的検討を行い、Wfs1ノックアウトマウスを用いて基礎研究を行った。
結果と考察
104人の糖尿病(DM)と視神経萎縮(OA)合併例が報告された。56症例が他の主要徴候を合併し、33例で主要4徴候が揃っていた。
遺伝子検査は22例(21家系)について行なった。DMの平均発症年齢は9.9歳、OAは13.5歳で、変異が同定されたのは12家系、13例(57.1%)。変異の有無によりDM、OAの発症年齢や合併徴候数に差はなかった。DM、尿崩症(DI)を7歳で発症し、18歳時にOAと難聴を診断された1例が報告された。OAがDI診断からかなり遅れて診断されている点は注目に値する。また、WFS患者のOAは特異な像を呈することが示唆された。同意を得た症例について、「難治性疾患由来外来因子フリー人工多能性幹細胞の委託製作とバンク化」研究代表者 熊本大学江良教授の協力のもと、iPS細胞の樹立を試みている。
糖尿病発症機構として、小胞体ストレス応答にかかわる機能に加えて、WFS1蛋白がインスリン分泌顆粒に存在し、顆粒内の低pHの維持に重要であることを発見した。β細胞の機能異常にインスリン分泌顆粒上のWFS1蛋白の欠損が関係する可能性がある。
WFS1遺伝子変異をもつ患者において、GLP-1アナログによりわずかに残存するインスリン分泌の改善と投与インスリン必要量の減少が観察された。動物モデルにおいてもDPP4阻害薬がDMの進行を抑制する可能性が示唆された。
結論
日本でのWFSの臨床徴候は諸外国からの報告にほぼ等しい。WFS1遺伝子変異によるものが約6割で、多様性が存在する。OAに先だってDIが診断された例は早期診断の観点から注目すべきである。これらを元に、診断・診療指針をまとめて行く。基礎研究からも重要な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024157Z