腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成

文献情報

文献番号
201024155A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成
課題番号
H22-難治・一般-100
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 晋(鳥取大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 晋一(鳥取大学 医学部)
  • 花木 啓一(鳥取大学 医学部)
  • 難波 栄二(鳥取大学 生命機能研究支援センター)
  • 五十嵐 隆(東京大学大学院医学系研究科)
  • 根東 義明(日本大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の腎性尿崩症(NDI)の診断法及び合併症・死因を明らかにするとともに遺伝子変異と重症度の関連を検討する。また、薬剤に起因するNDIの実態を明らかにする。
研究方法
1)NDIの実態調査(追加調査):新たに日本神経学会、日本小児泌尿器科学会、日本泌尿器科学会会員を対象にアンケート調査した。2)V2受容体およびアクアポリン2遺伝子の検索:全国から依頼された10例とNDI多発家系の遺伝子解析を行った。3)NDIの急性合併症、およびアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の母体による胎児病の検索:前者はWebと医学中央雑誌から、後者は医薬品医療機器情報提供ホームページから検索した。
結果と考察
1)追加アンケート調査で、14例のNDIが確認され(リチウム製剤内服2例)された。成人期に診断された先天性症例もみられた。合併症は、腎泌尿器系(7例)、精神発達遅滞(3例)であった。2)遺伝子解析を施行したNDI 10例で5例にV2R遺伝子の異常が見出された。NDIを呈する一大家系において、Asp85 Asnの遺伝子変異が同定された。臨床的に明らかな多飲・多尿を呈する女性でAsp85 Asnホモ接合と考えられる変異を同定した。3)169例の検討で、NDIの診断は、水制限試験とデスモプレシン負荷試験の併用によりなされている。検査所見では、先天性、二次性とで尿浸透圧と血漿AVP値は両者の間に有意の差がみられた。4)NDIは、水分摂取が困難な場合、極めて早期に脱水とそれに伴う高Na血症をきたす(高張性脱水)ことが明かとなった。高Na血症は,錯乱,神経筋の興奮,痙攣,また昏睡など重篤な中枢神経障害をきたすので、緊急に対処すべきことを熟知する必要があるある。5)2004年から2010年までに発生したARBによるACEI/ARB fetopathyの症例数は28例で、カンデサルタンレキシチル(ブロプレス)によりACEI/ARB fetopathyを発症した9例中3例にNDIが発症した。
結論
1)成人まで診断されないNDIが存在する。2)リチウム薬による後天性NDIが高頻度にみられる。3)高頻度に腎尿路系と中枢神経系合併症を有する。4)水分摂取の障害は極めて重篤な脱水症をきたす。5)妊婦へのACE1およびARB投与は禁忌である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024155Z