劇症1型糖尿病のウイルス原因説に関する研究

文献情報

文献番号
201024152A
報告書区分
総括
研究課題名
劇症1型糖尿病のウイルス原因説に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-097
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
永淵 正法(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 勝田仁(九州大学医学研究院)
  • 栗崎宏憲(九州大学医学研究院)
  • 下田和哉(宮崎大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1型糖尿病(insulin-dependent diabetes mellitus:IDDM)は膵島β細胞が破壊され,絶対的なインスリン欠乏に陥る自己免疫疾患である.一方,1型糖尿病の約20%,劇症1型糖尿病の約70%の症例において発熱や上気道炎などの風邪症状を伴うことから,その発症にウイルス感染の関与が示唆されているが,直接の証拠に乏しい.今回、実験的ウイルス糖尿病の防御に自然免疫あるいは獲得免疫いずれが重要であるのかを明らかにする。さらに、その自然免疫に関る感受性因子として、Tyk2 (Tyrosine kinase 2)遺伝子に着目した。Tyk2はIFNレセプターの下流に位置し,IFNシグナル伝達を惹起し,自然免疫および獲得免疫に深く関与している.この変異がマウスの感受性を決定していることが示唆されているので、その検証とヒトにおけるTYK2遺伝子多型の意義、さらにTYK2と相互作用して細胞傷害を来す可能性のある分子の探索とその意義を明らかにすることを目的とした。
研究方法
Tyk2 KOマウス、感受性SJLマウスに同定されたTyk2遺伝子変異をマーカーに、抵抗性マウス系統C57BL/6に5代の戻し交配し、逆に野生型Tyk2をSJLに同じく5代戻し交配を行い、糖尿病の感受性を検討した。ヒトで風邪症状先行例で、TYK2の遺伝子多型を探索した。Tyk2と相互作用するアポトーシス誘導因子を探索した。
結果と考察
Tyk2 KOマウスはTyk2 WTマウスに比較して有意に高血糖状態を呈し,高率に糖尿病を発症した。Tyk2 変異を有する抵抗性マウス系統C57BL/6は、ウイルス攻撃により糖尿病を発症したが、野生型Tyk2 を有するSJLはウイルス糖尿病に抵抗性となった。Tyk2 と相互作用するアポトーシス誘導因子Sivaを同定した。風邪邪症状が先行した1型糖尿病患者において、TYK2 遺伝子のエキソン部とプロモーター領域に遺伝子多型を同定した。
結論
Tyk2 遺伝子が実験的ウイルス糖尿病マウスおよびヒトの劇症1型糖尿病の感受性要因であることが示唆されている。その関連アポトーシス分子の意義も含め、今後、マウスおよびヒトにおける更なる検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-04-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024152Z