高グリシン血症の実態把握と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201024146A
報告書区分
総括
研究課題名
高グリシン血症の実態把握と治療法開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-091
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 清次(島根大学 島根大学)
  • 遠藤 文夫(熊本大学 熊本大学)
  • 大浦 敏博(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 松原 洋一(東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高グリシン血症は、筋緊張低下、無呼吸、けいれん、などの重篤な中枢神経症状を特徴とし、「グリシン脳症」とも呼ばれる小児の神経難病の一つである。本症はグリシン開裂酵素(GCS)の遺伝的欠損により生じ、グリシンが体液中に蓄積する先天性アミノ酸代謝異常症の一つである。本症の多くは新生児期に発症し、水頭症や脳梁欠損などの脳形成異常を高率に合併する。現在、未解決の問題は、1) 患者数が不明。2) 有効な治療法が未確立で予後が悪い、の2点である。1)に対し、タンデムマス試験を用いた多数の新生児の血中グリシン濃度分析を行い、新生児スクリーニングを基盤とした患者数把握を目指す。2)に対し高グリシン血症モデルマウスを作成し、その表現型を明らかにした後、幾つかの候補薬剤による治療実験を行う。
研究方法
現在幾つかの施設で実施されているタンデムマス試験による新生児スクリーニングのパイロット試験の際に、血中グリシン濃度が測定されている。この血中グリシン濃度データを多数収集し、その濃度分布などの解析を行った。治療法開発の際にモデルマウスとして利用する目的で、GCS活性を全く欠くノックアウト・マウスを作成し、変異ホモ接合体マウスの表現型を解析した。GCSは葉酸代謝に関与するため、妊娠マウスへ葉酸及びその代謝物質を投与後、産仔の表現型を解析して、投与薬剤の有効性を検討した。
結果と考察
現在までに8万人以上の新生児において、血中グリシン濃度を測定した。新生児血中グリシン濃度の平均値は、387.8uMであり、標準偏差は126.7 uMであった。全体の0.03%の検体が+8SDを超えていた。モデルマウスとして作成したノックアウト・マウスには、脳梁欠損、水頭症、神経管欠損症など、種々の脳形成異を認めた。これらの脳形成異常は、遺伝的背景に依存して変化しており、本症に伴う脳形成異常の発生に複数の遺伝子が関与していると考えられた。妊娠マウスに葉酸やその代謝物の投与実験を行ったところ、葉酸は無効であったが、一つの葉酸代謝物質の投与により脳形成異常の発生が有意に低下することを見出し、本症治療における有効性が示唆された。
結論
タンデムマス試験にて多数の新生児血中グリシン濃度を検索し、その濃度分布を明らかにした。の検索を行うともに、モデルマウスの作製・表現型解析・治療実験を行い、有効な候補薬剤を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024146Z