文献情報
文献番号
202525010A
報告書区分
総括
研究課題名
定量的化学物質発がん性予測のためのゲノム安全性評価新規解析手法の開発研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25KD1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
堀端 克良(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
- 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
- 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
- 津田 雅貴(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
- 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- 魏 民(大阪公立大学 大学院医学研究科)
- 松田 俊(京都大学 大学院工学研究科都市環境工学専攻環境衛生学講座)
- 諸角 涼介(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
25,680,000円
研究者交替、所属機関変更
旧研究分担者:津田雅貴(安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部 室長)
新研究分担者:諸角涼介(安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部 任期付研究員)
変更年月日:令和7年7月1日
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、発がん性の定量的評価に資する情報が不足している化学物質について、ゲノム安全性の観点から新たな評価指標を見出し、定量的化学物質発がん性予測に活用可能な解析手法を開発することを目的とする。特に、既存の発がん性試験を新たに実施することが困難な化学物質を対象に、DNA損傷応答、染色体不安定性、代謝活性化依存的な遺伝毒性、変異頻度・変異スペクトル等のゲノム安全性関連指標を用いて、発がん性の強さを半定量的又は定量的に推定するための基盤を構築する。また、既存の発がん性試験結果や遺伝毒性試験結果との関係性を整理し、新規手法の行政評価における活用可能性を検討する。
研究方法
本研究では、複数の分担研究により相補的な解析を実施した。まず、化審法、室内空気濃度指針及び家庭用品に係る有害性評価における発がん性定量評価の現状と課題を整理した。次に、クロマチン免疫沈降法、クロマチン分画ウエスタンブロット法及びクロマチン定量プロテオミクス法を用いて、DNA損傷応答関連タンパク質のクロマチン結合変動を解析した。また、第Ⅱ相薬物代謝を考慮するため、ラット肝S9存在下でPAPS又はPAPS合成系を補充したin vitro小核試験系を検討した。さらに、抗γH2AX抗体を用いた病理組織学的小核試験、ecNGS法によるin vivo変異原性評価、及びDEN誘発ラット肝発がんモデルを用いた免疫組織化学解析・snRNA-seq解析を行い、発がん過程に関連するゲノム安全性指標の探索と検証を進めた。
結果と考察
有害性評価の現状整理から、変異原性の有無を明確に判断できない場合には発がん性の閾値判断が困難であること、また、変異原性が確認されても発がん性定量評価に必要な情報が不足する場合には有害性評価値を導出できないことが課題として確認された。DDR法の検討では、組織標本を用いたChIP法には可溶化条件上の課題が残った一方、ChWB法では紫外線照射やアルキル化剤処理に伴うγH2AX、モノユビキチン化PCNA、APE1、POLB等のDNA損傷応答を検出できた。クロマチン定量プロテオミクス法では、ETP曝露によりγH2AX、MDC1、53BP1、RAD50、XRCC6のクロマチン結合量増加を確認し、発がん関連応答の評価指標となる可能性が示された。代謝を考慮したin vitro小核試験では、PGS補充によりSULT依存的な遺伝毒性活性化を反映し得る系の有用性が示唆された。病理組織学的小核試験では、抗γH2AX抗体が小核検出に有効であり、遺伝毒性肝発がん物質の検出に有用である可能性が示された。ecNGS法では、エレミシン投与ラット試料において変異頻度及び変異スペクトルの用量依存的変化が確認され、in vivo変異原性の定量評価に有用である可能性が示された。さらに、DEN誘発肝発がんモデルのsnRNA-seq解析により、前がん病変関連細胞集団及びDDR活性上昇傾向を示す細胞集団が同定され、細胞集団別解析の有用性が示された。
結論
本年度の検討により、単一の指標のみで発がん性を定量的に評価することには限界がある一方、DNA損傷応答、染色体不安定性、代謝活性化依存的遺伝毒性、変異頻度・変異スペクトル、細胞集団別DDR応答など、複数のゲノム安全性指標を組み合わせることで、発がん性評価を補完できる可能性が示された。各手法には適用範囲と技術的課題が残るものの、既存の発がん性試験データが不足する化学物質について、発がん性の強さを推定するための基盤的知見が得られた。今後は、各指標と既存の発がん性試験結果及び遺伝毒性試験結果との関係性をさらに整理し、行政評価における活用場面を明確化するとともに、将来的な評価手法の高度化及び国際的議論に資する科学的根拠として体系化する。
公開日・更新日
公開日
2026-06-12
更新日
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