化学物質による体細胞ゲノム毒性の検出手法およびin vitroリスク評価法開発のための研究

文献情報

文献番号
202525004A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質による体細胞ゲノム毒性の検出手法およびin vitroリスク評価法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部 第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 由香里(重本 由香里)(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
  • 堀端 克良(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センターゲノム安全科学部)
  • 伊澤 和輝(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター  変異遺伝部)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター  変異遺伝部)
  • 小泉 修一(山梨大学 医学部)
  • 柳井 修一(独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 実験動物施設)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
15,309,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、化学物質が細胞分裂を伴うことなく、DNA突然変異やメチル化等のエピジェネティクス異常を引き起こすことが明らかとなり、ヒト健康影響が懸念されている。本研究ではゲノム毒性のin vitroリスク評価系を開発する。生後、体細胞分裂がほとんど起こらない神経細胞と体細胞分裂が非常にゆるやかなミクログリアにはゲノム毒性が蓄積していると見込まれる。これらの細胞をモデルとし、経年蓄積した体細胞突然変異やエピジェネティクス異常等の検出技術を確立する。化学物質影響としてのゲノム毒性を検証する。
研究方法
<化学物質によるゲノム毒性検出法の開発>
1. 化学物質による体細胞突然変異検出法の開発
DNA抽出条件の検討を進めた。DNA断片分子確保プロトコル最適化・ライブラリ作製を行った。ecNGS解析手法としてはPECC-Seqを用いた。
2. DNAメチル化異常を介した化学物質によるゲノム毒性の検出
グローバルメチル化の評価にナノポアシークエンサーを用いた。
3. 転写に関連した突然変異生成の解析
CHO-KTG5細胞株にてCHO/TAM解析を行った。
<神経細胞、ミクログリアの採材法開発と細胞老化指標の明確化>
若齢/老齢マウスから神経細胞/ミクログリアを単離するプロトコルを確立した。若齢/老齢マウスの凍結海馬切片を免疫組織化学的に解析した。若齢/老齢マウス 神経細胞/ミクログリアについてscRNAseq解析を行った。
<化学物質によるゲノム毒性等生体影響の最小化に関する検討>
老齢マウスミクログリアの形態解析を行った。ミクログリア置換のためPLX3397を餌に混ぜて、2週間投与した。
<自然老化マウスの提供>
老齢マウスは、取得ずみ老化マウスの生存曲線や病理所見発症率との妥当性を担保した上で各機関に提供された。
結果と考察
<化学物質によるゲノム毒性検出法の開発>
1. 1000Gで5分間遠心をした場合に解析十分量のDNAが回収可能であった。100 ng~300 ng程度のDNAを用いてライブラリを作製した。若齢と老齢サンプル間で有意な変異頻度差が見られなかった(N=3)。老齢ミクログリアにおいて、変異頻度の上昇傾向が見られた。老化細胞においては、N=3で有意差がつくほどの劇的な体細胞突然変異は見られないことがわかったが、例数をあげることで有意差がつく微細な変異が起こっている可能性が示唆された。
2. 老齢/若齢 神経細胞/ミクログリアCpGサイトのメチル化に大きな差は見られなかった。神経細胞―ミクログリアの比較では、若齢、老齢ともに神経細胞に比べてミクログリアのメチル化レベルが低い傾向が見られた。今後は、LINE-1配列やepigenetic clock遺伝子のメチル化レベルの解析を行う予定である。
3. TAM 解析において、Roscovitine (ROS) により S 期進行を抑制した条件下においても、突然変異頻度が上昇し得ることを示す結果を得た。
<神経細胞、ミクログリアの採材法開発と細胞老化指標の明確化>
確立した細胞単離プロトコルでは、いずれの細胞も生存率95%以上であった。回収細胞は、①ゲノム毒性検出系確立グループへの提供、②scRNAseq解析をおこなった。高次解析を進め、老齢マウスにあらわれる細胞性状と体細胞変異・エピジェネティクス変化を紐付ける予定である。免疫組織染色により海馬を観察した。老齢マウスでは、MAP2シグナルが減弱し神経突起構造が不連続になっていた。Iba+ミクログリアの細胞数が増大し、アメボイド型へと変化していた。CD68は貪食活性化したミクログリアのマーカーとして用いられるが、老齢マウスでは、CD68+Iba1+ミクログリアが観察できた。老齢動物において、神経細胞とミクログリアの細胞老化度が亢進していること示唆された。
<化学物質によるゲノム毒性等生体影響の最小化に関する検討>
老齢マウスでは、CSF-1R拮抗薬感受性が低下しており、周辺の機能低下に寄与している可能性が示唆された。今後は、老齢マウスにおいてミクログリアのリセット、置換が可能であるかを確認し、悪影響の最小化とそのメカニズムの解析を行う。
結論
ゲノム毒性検出系を確立した。少量DNAから解析ライブラリを作製するプロトコルを整備しライブラリを作製した。若齢/老齢 神経細胞/ミクログリアのecNGSの実行に至った。ナノポアシークエンサーを用いたメチル化解析法を用いて、若齢/老齢 神経細胞/ミクログリアのグローバルメチル化レベルを簡便迅速に解析することが可能となった。老齢神経細胞/ミクログリアにおいて、細胞老化度等の脆弱性が亢進している可能性が示された。scRNAseqデータと共に、体細胞変異、エピジェネティクス異常と関連があるかどうかについて検討する。神経細胞系細胞株を採用し化学物質影響評価を行うこととした。

公開日・更新日

公開日
2026-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202525004Z