濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究

文献情報

文献番号
202524039A
報告書区分
総括
研究課題名
濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 喜多村 真紀(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和7年度は、次の目的を設定した。【研究1】依存症専門医療機関を受診する患者について、青少年の市販薬使用障害における臨床的特徴を明らかにすること。【研究2】本研究では、デキストロメトルファン、アリルイソプロピルアセチル尿素およびジフェンヒドラミンを対象に、薬理作用および中枢神経系への影響、依存性に関する科学的知見を整理するとともに、国内外における販売状況や規制動向、乱用実態を包括的に把握すること。【研究3】SNS(X:旧Twitter)上の投稿データを活用し、市販薬問題の動向把握と当事者の回復過程を構造化すること。
研究方法
研究1:依存症専門医療機関を対象とする患者調査
研究2:文献調査
研究3:SNS解析
結果と考察
【研究1】依存症専門医療機関を受診した青少年の市販薬使用障害における臨床的特徴を明らかにした。
1. 女性であること
2. 無職であること
3. 精神医学的診断として「F1x.1:有害な使用」が多いこと
4. 併存障害として「F4神経症性障害」「F8心理的発達の障害」が多いこと
5. 「友人関係のトラブル」「学校でのトラブル」をきっかけとして乱用を開始していること
6. 乱用に期待する効果・作用が「現実逃避」や「希死念慮への対処」であること

【研究2】
1. デキストロメトルファン(DXM)およびその代謝物はモノアミン再取り込み阻害作用を有し、使用動機に関連する機序が示唆された。代謝物も活性を持つため、CYP2D6遺伝子多型や併用薬の影響により症状には個人差が生じ得る。米国では乱用率は高くないが、低年齢層や青年層での意図的摂取と急性中毒は看過できない。
2. アリルイソプロピルアセチル尿素はGABA系への明確な直接作用は確認されず、作用機序は未解明である。
3. ジフェンヒドラミンは、主にヒスタミンH1受容体拮抗作用およびムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗作用を有し、副次的にドパミンD2受容体拮抗作用も関与することで、鎮静および意識変容作用を呈すると考えられる。諸外国では若年層、とくに思春期女性の自殺関連症例増加が課題となっている。


【研究3】
1. X上で過量服薬の対象として言及される製品群はBRONからMEDICONへと推移しており、解熱鎮痛薬など精神作用が乏しい製品群も新たに確認されたことから、対象製品の多様化が示唆された。
2. リポスト機能による情報拡散は21時から22時にピークを迎える一方、深夜から早朝にかけてはリポスト率が低下し、他者からの反応を得にくい状況に置かれている可能性が示唆された。
3. TTMに基づく分析により、関心期から維持期の各ステージに特化したリスク要因の存在が推察された。
結論
1. 青少年の市販薬使用障害には、成人と異なる臨床像がある:女性・無職が多く、診断は「有害な使用(F1x.1)」が多い。併存として神経症性障害(F4)や心理的発達の障害(F8)が目立ち、友人/学校トラブルを契機に「現実逃避」「希死念慮への対処」を期待して乱用を開始しやすい。
2. 意図的摂取されやすい製品は拡大・変動している:エスエスブロン錠、ウットに加え、(新たな指定濫用防止医薬品候補を含む)ジフェンヒドラミン製剤(レスタミン、ドリエル)、DXM製剤(メジコンせき止め錠Pro)、カフェイン製剤(エスタロンモカ等)が抽出され、ナロンエースTは2024年以降、流行の兆候がみられた。
3. 有効成分ごとに作用機序と個人差・リスク像が異なる:デキストロメトルファンは(代謝物も含め)モノアミン再取り込み阻害作用が示唆され、CYP2D6多型や併用薬で症状の個人差が生じ得る。ジフェンヒドラミンはH1/ムスカリン拮抗(+副次的D2拮抗)を通じ鎮静・意識変容に関与し、海外では若年層(特に思春期女性)の自殺関連事例増加が課題。アリルイソプロピルアセチル尿素は機序未解明である。
4. SNS上の投稿は製品・時間帯・心理段階に沿って特徴がある:Xでは過量服薬の対象がBRONからMEDICONへ推移し、解熱鎮痛薬など精神作用が乏しい製品も含め対象の多様化が示唆された。情報拡散(リポスト)は21~22時がピークで、深夜〜早朝は反応が得にくい可能性がある。TTM分析では関心期〜維持期の各段階に特化したリスク要因の存在が推察された。

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

文献情報

文献番号
202524039B
報告書区分
総合
研究課題名
濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 富山 健一(国立精神神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 喜多村 真紀(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
【研究1】依存症専門医療機関を受診する患者について、青少年の市販薬使用障害における臨床的特徴を明らかにすること。【研究2】本研究では、デキストロメトルファン、アリルイソプロピルアセチル尿素およびジフェンヒドラミンを対象に、薬理作用および中枢神経系への影響、依存性に関する科学的知見を整理するとともに、国内外における販売状況や規制動向、乱用実態を包括的に把握すること。【研究3】SNS(X:旧Twitter)上の投稿データを活用し、市販薬問題の動向把握と当事者の回復過程を構造化すること。
研究方法
研究1:依存症専門医療機関を対象とする患者調査
研究2:文献調査
研究3:SNS解析
結果と考察
【研究1】依存症専門医療機関を受診した患者について、青少年の市販薬使用障害には主として以下の6つの臨床的特徴があることが明らかとなった。
1. 女性であること
2. 無職であること
3. 精神医学的診断として「F1x.1:有害な使用」が多いこと
4. 併存障害として「F4神経症性障害」「F8心理的発達の障害」が多いこと
5. 「友人関係のトラブル」「学校でのトラブル」をきっかけとして乱用を開始していること
6. 乱用に期待する効果・作用が「現実逃避」や「希死念慮への対処」であること

【研究1業務委託】中毒相談に関する情報を通じて、意図的摂取されやすい製品として、エスエスブロン錠、ウットのほか、新たに指定濫用防止医薬品に指定されるレスタミンコーワ糖衣錠・レスタミンUコーワ錠(ジフェンヒドラミン含有アレルギー用薬)、ドリエル(ジフェンヒドラミン含有催眠鎮静薬)、メジコンせき止め錠Pro(デキストロメトルファン含有鎮咳去痰薬)、および規制されていないエスタロンモカ錠・エスタロンモカ12(カフェイン含有眠気防止薬)が抽出された。また、ナロンエースT は2024年に意図的摂取の件数、OD indexともに上昇が確認され、流行の徴候が確認された。
【研究2】文献的調査を通じて以下の3点が明らかとなった。
1. デキストロメトルファン(DXM)およびその代謝物はモノアミン再取り込み阻害作用を有し、使用動機に関連する機序が示唆された。代謝物も活性を持つため、CYP2D6遺伝子多型や併用薬の影響により症状には個人差が生じ得る。米国では乱用率は高くないが、低年齢層や青年層での意図的摂取と急性中毒は看過できない。
2. アリルイソプロピルアセチル尿素はGABA系への明確な直接作用は確認されず、作用機序は未解明である。
3. ジフェンヒドラミンは、主にヒスタミンH1受容体拮抗作用およびムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗作用を有し、副次的にドパミンD2受容体拮抗作用も関与することで、鎮静および意識変容作用を呈すると考えられる。諸外国では若年層、とくに思春期女性の自殺関連症例増加が課題となっている。
 なお、日本ではDXM・ジフェンヒドラミンは薬機法で指定濫用防止医薬品に指定することで販売強化を予定しており、今後は制度改正による影響の確認等が必要である。また、アリルイソプロピルアセチル尿素はこれまで調査した情報では本成分の取扱いの見直しを行うほどの根拠は得られておらず、今後も引き続き、継続的かつ多角的な解析が求められる。

【研究3】SNSを情報源とする研究を通じて以下の3点が明らかになった。
1. X上で過量服薬の対象として言及される製品群はBRONからMEDICONへと推移しており、解熱鎮痛薬など精神作用が乏しい製品群も新たに確認されたことから、対象製品の多様化が示唆された。
2. リポスト機能による情報拡散は21時から22時にピークを迎える一方、深夜から早朝にかけてはリポスト率が低下し、他者からの反応を得にくい状況に置かれている可能性が示唆された。
3. TTMに基づく分析により、関心期から維持期の各ステージに特化したリスク要因の存在が推察された。
結論
1. 青少年の市販薬使用障害には、成人と異なる臨床像がある
2. 意図的摂取されやすい製品は拡大・変動している
3. 有効成分ごとに作用機序と個人差・リスク像が異なる
4. SNS上の投稿は製品・時間帯・心理段階に沿って特徴がある

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の依存症専門医療機関を対象とする悉皆調査により、乱用の対象となっている市販薬の有効成分に関する情報、および市販薬を主たる薬物とする症例の臨床的特徴を明らかにすることができた。この成果は、厚生労働省薬事審議会(医薬品等安全対策部会)で報告され、行政的に活用された。
臨床的観点からの成果
市販薬を主たる薬物とする症例の臨床的特徴が明らかになったことで、市販薬症例、特に若者に対する支援を充実させていく上での基礎資料となった。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
研究成果は、令和7年度厚生労働省薬事審議会(医薬品等安全対策部会)にて報告され、改正薬機法における「指定濫用防止医薬品」の指定範囲を検討する上での根拠となった。結果として、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミンが新たに指定された。
その他のインパクト
一般への研究成果報告会を年度末に開催した。
令和7年3月7日(オンライン)
令和8年3月13日(オンライン)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
喜多村真紀,高田雅弘,江藤不二子,首藤誠,嶋根卓也
X(旧Twitter)投稿文に基づく市販薬過量服薬の動向:社会情勢との関連に着目して
日本アルコール・薬物医学会雑誌  (2026)

公開日・更新日

公開日
2026-06-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202524039Z