薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の開発

文献情報

文献番号
202524010A
報告書区分
総括
研究課題名
薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田口 真穂(白木 真穂)(横浜薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 周子(横浜薬科大学 薬学部)
  • 藤田 健二(横浜薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,055,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では地域包括ケアの推進や慢性疾患患者の増加に伴い、薬局薬剤師には調剤にとどまらず、服薬支援、副作用モニタリング、治療継続支援等を通じて、患者の薬物治療の質と安全性に貢献することが一層求められている。一方で、これらの対人業務は薬局現場で日常的に行われているにもかかわらず、その質や成果を客観的に把握し、継続的な改善につなげるための評価指標は十分に整備されていない。そこで本研究では、外来患者に対する薬局薬剤師の薬学的管理業務の質を評価するQuality Indicator(以下QI)を開発するとともに、QIの導入・運用に対する薬局薬剤師の受容性と課題を明らかにすることを目的とした。
研究方法
初年度に作成したQI候補60項目について、臨床経験を有する医師3名及び薬剤師7名、計10名から構成される専門家パネルを設置し、デルファイ変法により表面的・内容的妥当性を評価した。評価は、第1回適切性評価、オンライン形式の専門家パネル検討会、第2回適切性評価の3段階で実施した。評価基準は「原則として薬局薬剤師が行うべきサービスか」及び「遵守率が高いほど質の高いケアといえるか」とし、9段階リッカート尺度で評価した。採用基準は、一致率が80%以上とした。
 また、全国の保険薬局の経営・管理及び実務に携わる薬剤師を対象に、薬局における対人業務の質評価の現状及び指標導入に関する意識についてWeb方式の自記式質問紙調査を行った。
結果と考察
専門家委員によるQI候補の内容的妥当性評価では、第1回評価では34項目が採用基準である一致率80%以上を満たした。その後、オンライン形式の専門家パネル検討会において、未合意項目を中心に文言修正、類似項目との統合、削除及び新規QI作成の必要性を検討し、24項目を第2回評価の対象とした。第2回評価では12項目が採用基準を満たし、最終的に44項目のQIを採用した。内訳はプロセス指標33項目、アウトカム指標11項目であり、糖尿病治療薬及び抗血栓薬に関するQIが多かった。ケア別では、禁忌確認、検査値確認、服薬アドヒアランス評価、副作用評価等が中心であった。専門家パネルでは、薬局薬剤師が担うべき中核的業務として併用禁忌確認の重要性が確認された一方、検査値把握やアウトカム指標の運用には、情報連携、分母・分子の定義、記録負担への配慮が必要であることが示された。
薬局における対人業務の質評価の現状及びQI導入に関する意識調査では全国の保険薬局薬剤師1,290名の回答が解析対象となった。電子薬歴の使用経験は96.5%と高く、SOAP記録や検査値記録等は一定程度普及していたが、自動集計型QIに必要な介入内容の標準化は十分ではなかった。何らかの質評価の取組は69.2%で実施されていたが、QIを用いた評価経験は4.9%、QIの内容をよく知る者は4.0%に限られた。一方、客観的指標評価の必要性には71.8%が肯定的であり、QI評価システムの受容群は76.1%であった。ただし、その多くは条件付き又は懸念を伴う受容であり、無条件に前向きな者は4.8%にとどまった。ロジスティック回帰分析では、年齢、QIの事前認知度、客観的指標評価の必要性認識が受容性と関連した。因子分析及び自由記述からは、有用性・活用期待と、監視・査定感、報酬連動、業務負担、評価の公平性・妥当性等への懸念が併存することが示された。
結論
本研究では、外来患者に対する薬局薬剤師の薬学的管理業務の質を評価するため、令和6年度に作成した60項目のQI候補について、専門家パネルによるデルファイ変法を用いた表面的・内容的妥当性評価を実施し、最終的に44項目のQIを採用した。採用されたQIは、禁忌確認、検査値確認、服薬アドヒアランス評価、副作用評価、患者背景の把握等を含み、薬局薬剤師の日常的な対人業務を具体的に評価する指標セットとして位置づけられる。また、全国の保険薬局薬剤師を対象とした意識調査により、QI概念の認知は十分ではないものの、客観的指標による質評価の必要性には多くの薬剤師が肯定的であり、QI導入にも一定の受容性が示された。一方で、その受容は条件付きであり、公平な指標設計、現場負担への配慮、報酬連動への慎重な対応、改善支援型の活用が重要であることが確認された。本研究で得られたQIは、既報の在宅訪問業務や多剤併用高齢患者に関するQIと併せて、薬局における自己点検、教育、質改善活動及び患者安全向上に資する基礎的評価枠組みとして活用されることが期待される。今後は、薬局現場に過度な事務的・経済的負担を生じさせない形で段階的に活用可能性を検討し、薬局薬剤師の専門性の可視化と薬物治療の質向上につなげていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

文献情報

文献番号
202524010B
報告書区分
総合
研究課題名
薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KC1007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
田口 真穂(白木 真穂)(横浜薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田 健二(横浜薬科大学 薬学部)
  • 佐藤 周子(横浜薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域包括ケアの深化や多疾患併存患者の増加に伴い、薬局薬剤師には、処方内容、服薬状況、症状の変化等を薬学的知見に基づき評価し、医薬品の適正使用及び薬物治療の質と安全性に貢献する役割が求められている。一方、対人業務の質や成果を客観的に把握し、継続的改善につなげる評価指標は十分に整備されていない。本研究では、薬局薬剤師の対人業務の実態を踏まえ、医薬品関連問題(Drug Related Problem:DRP)を体系的に整理する分類表及び薬学的管理業務の質を評価するQuality Indicator(QI)を開発し、QI導入に対する受容性と課題を明らかにすることを目的とした。
研究方法
日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業に報告された疑義照会や処方医への情報提供に関する事例395,001件を対象に、ガイドライン等で薬剤師の介入が推奨される内容に基づき、薬局薬剤師が発見・対応しているDRPを解析した。国際的に使用されている「PCNE薬剤関連問題分類V9.1」及び文献レビューを基に、日本の薬局実務に適合するDRP分類表を作成し、薬剤師10名による修正デルファイ法及び31件の事例分類により内容的妥当性と評価者間信頼性を検証した。海外調査では、オランダ視察及びPCNEでのワークショップを通じて薬局QIの開発・運用状況を把握した。さらに、「薬局における疾患別対応マニュアル」及び「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」から新規QI候補60項目を作成し、医師3名及び薬剤師7名によるデルファイ変法で妥当性を評価した。QI導入に関する意識調査は、全国の保険薬局薬剤師を対象とする横断的Web調査として実施し、1,290名の回答を解析した。
結果と考察
DRP事例解析では、催眠鎮静・抗不安薬のCYPを介した相互作用、腎機能低下時の抗菌薬・抗ウイルス薬使用、副作用・有害事象評価、重複投与や長期継続投与の妥当性確認、疾患別治療薬のフォローアップが多く認められた。薬局薬剤師は、処方内容から得られる情報確認にとどまらず、腎機能、検査値、症状及び服薬状況等を踏まえて薬物療法の安全性及び妥当性を総合的に評価していることが示唆された。
DRP分類表は4主要カテゴリ、52サブカテゴリ(原因31、介入9、受諾4、結果8)で構成され、主要カテゴリのFleissのκ係数は0.82~0.97であり、高い一致度を示した。本分類表により、薬剤師が発見した問題、提案した解決策及び処方等に反映された結果を共通の枠組みで整理・蓄積することが可能となり、薬局薬剤師の対人業務の可視化と、医薬品適正使用及び患者安全への貢献を示すエビデンス構築に資する基盤となると考えられた。
海外調査では、薬局QIが国家レベルで制度化され継続的に運用されていた事例はオランダのみであった。同国では、当初は調剤データに基づく客観的QIとベンチマーク、追加報酬との連動が行われていたが、長期運用により指標の識別力は低下し、2018年以降は少数QIと成長ラダーを用いた自己評価・チーム討議を重視する運用へ移行していた。
QI候補60項目の妥当性評価では、最終的に44項目を採用した。採用QIはプロセス指標33項目、アウトカム指標11項目であり、糖尿病治療薬、抗血栓薬、禁忌確認、検査値確認、服薬アドヒアランス評価等に関する項目が中心であった。既報の在宅訪問・高齢者多剤併用QIと併用することで、外来を含む対人業務の質をより広く把握できる可能性がある。
意識調査では、薬局における質評価の取組は一定程度実施されていたが、QIを用いた体系的評価経験は限定的であり、QIを内容まで知っていた者は3.9%にとどまった。一方、客観的指標評価の必要性には72.1%が肯定的で、QI評価システム導入の受容群は76.5%であった。ただし、その受容は、自己点検や業務改善への活用を前提とした条件付きの受容であり、公平な指標の設計、薬局規模・立地・患者背景への配慮、指標による画一的評価により個別事例に応じた対応や専門的判断が損なわれること、監視や査定、報酬連動、業務や経済的負担への懸念などが併存していた。電子薬歴は広く普及していたが、介入内容の標準化・コード化は十分ではなく、QIの自動集計には記録の標準化とデータ品質の確保が課題であると考えられた。
結論
本研究により、薬局薬剤師の対人業務の実態を踏まえた日本版DRP分類表と、薬学的管理業務の質を評価する具体的なQIの一覧が開発された。また、QIの今後の活用に当たって留意すべき実務上・制度上の課題が明らかとなった。これらの成果は、薬局における自己点検、教育、対人業務の質の改善、患者安全向上及び薬剤師の専門性の可視化に資する基礎的評価の枠組みとして活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202524010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬局薬剤師が医療・介護分野にて実施している対人業務を体系的に把握するために、薬局ヒヤリ・ハット事例等に基づき薬局薬剤師が対応する医薬品関連問題(Drug Related Problems: DRPs)を分類・体系化し、内容的妥当性と高い評価者間信頼性を有するDRP分類表を開発した。また、薬学的管理の質を評価する44項目の質評価指標(Quality Indicator;QI)を確立した。これらは、日本の薬局薬剤師の対人業務を定量的に可視化するうえで、学術的・社会的意義を有する成果である。
臨床的観点からの成果
薬局薬剤師の対人業務のうち、相互作用や禁忌の確認、検査値確認、服薬アドヒアランス評価、副作用評価、患者背景の把握等を具体的な質評価指標(QI)の一覧表として示した。これにより、各薬局及び薬剤師が日常的業務を自己点検し、薬学的管理の標準化、患者安全の確保及び薬物治療の有効性・安全性向上に向けた改善活動へ活用可能な基礎資料が得られた。
ガイドライン等の開発
本研究ではガイドラインそのものの作成は行っていないが、薬局薬剤師の対人業務を評価する新規の44項目の質評価指標(QIセット)及びDRP分類表を開発した。これらは、今後、薬局における自己点検、教育・研修、質改善活動の手引きや評価枠組みを検討する際の基礎資料として活用可能である。
その他行政的観点からの成果
薬局薬剤師の対人業務の質を可視化する44項目の質評価指標(QI)を確定し、QI導入に関する全国意識調査により、受容性、促進要因、障壁を明らかにした。薬局機能の質評価、患者安全対策、対人業務の均てん化を検討するうえで、厚生労働行政に資する基礎資料となる。
その他のインパクト
全国の薬局薬剤師を中心に開催される日本薬剤師学術大会にて、薬局薬剤師の対人業務の質評価指標の活用や有用性に関するセミナーや分科会「薬剤師のあり方と対人業務の未来を拓く 〜対人業務の質向上に向けた「見える化」の取り組みと展望」を開催し、研究について発表した。本研究については、薬事日報やPHARMACY NEWSBREAK(じほう社)等の新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
第58回日本薬剤師学術大会、第9回日本老年薬学会学術大会、日本社会薬学会第43年会、日本薬学会第146年会
学会発表(国際学会等)
2件
第83回国際薬剤師・薬学連合(FIP)国際会議、PCNE Working Conference 2025
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
薬局の対人業務の質評価指標(QI)及び日本版医薬品関連問題(DRP)分類表の作成
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演・シンポジウム3件、マスコミ発表3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-07-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202524010Z