Usher症候群に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024113A
報告書区分
総括
研究課題名
Usher症候群に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-058
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工  穣(信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 岩崎 聡(信州大学 医学部附属病院人工聴覚器学講座)
  • 村田 敏規(信州大学 医学部眼科学講座)
  • 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科・聴覚センター )
  • 東野 哲也(宮崎大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 )
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学医学部耳鼻咽喉科学)
  • 古屋 信彦(群馬大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 )
  • 武市 紀人(北海道大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)
  • 石川 浩太郎(自治医科大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 池園 哲郎(日本医科大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
  • 福島 邦博(岡山大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 鎌谷 直之(理化学研究所ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Usher症候群は、感音難聴と網膜色素変性症を合併する常染色体劣性遺伝性の疾患である。Usher症候群の患者は視覚・聴覚の重複障害となるため、日常生活に多大な支障を来すため、どのようにQOLを確保するかが大きな課題となっている。我が国におけるUsher症候群の有病率は、1978年に人口10万人当たり0.6人と報告されていたが、2003年のIwasakiらの報告では人口10万人に対し6.8人と報告されており、我が国における実態は未だ不明確であり正確な実態把握が必要な状況である。本研究では、Usher症候群患者を対象に、罹患者頻度および臨床像の実態調査を行うとともに、遺伝子診断に基づくタイプ分類を進める事により、新しい診断基準と治療法確立のための基盤整備を目的とした。
研究方法
本研究では、研究班に所属する施設が中心となり、全国疫学調査のための調査項目の検討を行うとともに、日本耳鼻咽喉科学会の定める認可研修施設に疫学調査票を送付して臨床実態の把握を行った。また、臨床的特徴のとりまとめを行うとともにUSH2A遺伝子の解析を行い、日本人における原因遺伝子変異の解析を行った。
結果と考察
平成22年度は、主に聴覚障害に対する治療実態を把握する事を目的に、日本耳鼻咽喉科学会の定める認可研修施設(全国696施設)に疫学調査票を送付し259施設より回答を得た。その結果、24施設54名の患者の報告を得た。また、Usher症候群患者の実態把握を行った結果、臨床的に大きく2つのタイプに分類可能であることが明らかとなった。また、それぞれのタイプの臨床的特徴と、治療実態を把握する事が可能となったため、臨床的特徴を基に診断基準と治療指針(案)を策定した。さらにUsher症候群タイプ2患者を対象にUSH2A遺伝子の解析を行い5種類の新規遺伝子変異を見出した。
結論
本研究により、Usher症候群の実態把握(日本における罹患患者数・難聴の程度・進行性・随伴症状など)および治療実態の把握(補聴器・人工内耳の装用効果、言語成績など)がある程度進み、臨床的特徴を明らかにする事が出来た。また、成果を基に診断基準と治療指針(案)を策定した。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024113C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦におけるUsher症候群の臨床情報の精査を行ったところ、本邦においても海外の報告同様大きく2つのタイプに分類可能である事が明らかとなった。そのうち、後天性かつ軽度~中等度の難聴を呈するUsher症候群タイプ2に関して、USH2A遺伝子の解析を行ったところ新規遺伝子変異を見出した。また、変異の部位は欧米の報告とは一致せず民族特異性があることが明らかとなった。今後の遺伝子解析の進展により効果的に診断する手法が確立する事が可能であることが期待される。
臨床的観点からの成果
本年度の調査により、Usher症候群患者全体の特徴として、日本においても海外の報告と同様に、大きく2つのタイプに分類可能であることが明らかとなった。Usher症候群タイプ1症例では、先天性の高度難聴を呈し多くが最重度の難聴であった。一方、Usher症候群タイプ2のケースでは、難聴の程度がマイルドであり、進行性の難聴を呈する事が明らかとなった。また、網膜色素変性症に関しては夜盲の自覚症状が出てくる思春期以降に診断がなされていることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
本年度の調査より、本邦においても海外の報告と同様に、大きく2つのタイプに分類可能であることが明らかとなった。また、その臨床的特徴がある程度明確となったため、診断基準(試案)を策定した。次年度以降には遺伝子解析の結果も加えてより充実した診断基準を策定する計画である。
その他行政的観点からの成果
本年度の調査の対象となった全症例が中枢症状を伴わないため、高度難聴に対する医学的介入としては、人工内耳による介入が有効であると考えられる。しかし、現在人工内耳を装用している患者の多くは装用開始が遅いため、人工内耳をコミュニケーションの手法として活用できていないケースが多いことが明らかとなった。今後、遺伝子診断などにより早期に診断が行われる事でQOLの大幅な向上が可能であることが期待できる。
その他のインパクト
網膜色素変性症の患者の会(JRPS・日本網膜色素変性症協会)の会報に本研究班の研究内容と協力依頼の広告を行うとともに、日本網膜色素変性症協会全国大会にて研究内容の紹介と協力依頼を行った。患者の会との密接な連携関係が構築され実際に会報を見て研究協力のために来院する方も少しずつ得られており、来年度以降の継続により、患者の会経由でより多くの症例の収集が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Usami S, Moteki H, Suzuki N et al.
Achievement of hearing preservation in the presence of an electrode covering the residual hearing region.
Acta Otolaryngol  (2011)
原著論文2
Nakanishi H, Ohtsubo M, Iwasaki S et al.
Mutation analysis of the MYO7A and CDH23 genes in Japanese patients with Usher syndrome type 1.
J Hum Genet , 55 , 796-800  (2010)
原著論文3
akanishi H, Ohtsubo M, Iwasaki S et al.
Hair roots as an mRNA source for mutation analysis of Usher syndrome-causing genes.
J Hum Genet , 55 , 701-703  (2010)
原著論文4
中西啓、岩﨑聡、瀧澤義徳 et al.
非典型的臨床症状を示した USH2A 遺伝子変異例
耳鼻臨床 , 103 , 413-419  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024113Z