文献情報
文献番号
201024107A
報告書区分
総括
研究課題名
早期再分極(early repolarization)症候群の病態と遺伝基盤、長期予後に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-052
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 史郎(国立循環器病研究センター 心臓血管内科不整脈部)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 呼吸循環器内科)
- 草野 研吾(岡山大学医学部 循環器内科)
- 萩原 誠久(東京女子医科大学 循環器内科)
- 杉 薫(東邦大学医学部大橋医療センター 循環器内科)
- 清水 昭彦(山口大学医学部 保健学科)
- 清水 渉(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防検診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では早期再分極(early repolarization)症候群とそれに近似する病態を全国的な規模で集積し、後ろ向きと前向きに予後を観察し、同時に種々の心電図検査、電気生理学検査、遺伝子検査等を行って本症候群の病態、機序と、予後を解明することを目的とする。
研究方法
以下の症例を全国的な規模で登録する。1)Haissaguerreらの定義した早期再分極症候群、すなわち、II,III,aVF誘導とI,aVL,V4-V6誘導のうち、2誘導以上でnotchまたはslur波形を呈し1mm以上のJ波増高を有する症例、2)0.5mm以上1mm未満のJ波増高を有する境界型例、3)心室細動の既往のあるBrugada症候群、4)特発性心室細動、QT短縮症候群。全例から突然死家族歴と失神歴を聴取し、高位肋間を含む12誘導心電図、薬物負荷心電図、心エコー図、ホルター心電図、運動負荷検査を、一部の例に加算平均心電図、心磁図、TWA検査を行う。同意の得られた例では電気生理学的検査、遺伝子解析を行う。この他に早期再分極症候群とBrugada症候群に関して個別研究を行う。
結果と考察
初年度で登録目標300例の約1/2に相当する165例(早期再分極症候群:28例、Brugada症候群:137例) を登録できた。心室細動を伴う早期再分極症候群23例の後ろ向き解析では、約30%が非Type1Brugada型心電図を有し、Brugada症候群と同様な病態と不良な予後を呈したが、残りの例では全く異なった病態と良好な予後を呈していた。疫学調査においてJ波は全人口の1.7%に認められたが、Brugada症候群ではその20%に、QT短縮症候群では66%に存在していた。Brugada症候群における検討では、運動負荷回復初期のST上昇が、無症候群と失神群の不良な予後に関係することが判明した。また本疾患に関わる新しい原因遺伝子としてIto電流を修飾するKCNE5の変異を発見した。
結論
1)早期再分極症候群で得られた知見から、本症候群はBrugada症候群類似の予後不良の病態と、それとは異なる予後良好な病態の2つから構成されている可能性が示唆された。2)運動負荷回復初期のST上昇指標を用いて、Brugada症候群の中の無症候群、失神群の予後を予測しうると考えられた。3)KCNE5遺伝子変異の解析を進めることにより、Brugada症候群の性差や病態を解明できると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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