文献情報
文献番号
201024100A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性角膜内皮炎の実態把握と診断法確立のための研究
課題番号
H22-難治・一般-044
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 範子(同志社大学 生命医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 稲富 勉(京都府立医科大学大学院 視覚機能再生外科学)
- 大橋 裕一(愛媛大学医学系研究科 感覚機能医学講座 視機能外科学分野)
- 井上 幸次(鳥取大学医学部眼科)
- 西田 幸二(大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
- 望月 學(東京医科歯科大学医歯学総合研究科 眼科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
角膜内皮細胞に特異的な炎症を突然に生じる特発性角膜内皮炎は、重篤な視力障害を引き起こし最終的には水疱性角膜症に陥る病態不明な疾患であるが、診断基準や治療方法は確立されていない。本研究は、特発性角膜内皮炎(特にサイトメガロウイルス角膜内皮炎)の実態を把握し診断基準を確立することにより、厚生労働行政の重要課題の一つである視覚障害者の救済に貢献することを目的とする。
研究方法
研究班の各施設において、2004年から2010年にCMV角膜内皮炎およびCM前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)と診断された症例の臨床的特徴と診断および治療の実態、治療後の経過についてレトロスペクティブに解析した。これらの結果をもとにCMV角膜内皮炎の診断基準を作成した。次にCMV角膜内皮炎の日本における発生状況を把握するため、本研究で作成した診断基準を日本角膜学会会員(1160名)に周知し、CMV角膜内皮炎症例の発症状況を調査した。
結果と考察
上記の期間にCMV角膜内皮炎と診断された症例は34例35眼あり、平均年齢は66.2歳、男性28例、女性6例で、中高年男性に多い傾向が認められた。免疫不全を合併した症例はなかった。診断は臨床所見と前房水を用いたウイルスPCRによって行われていた。円形に配列する白色の角膜後面沈着物(コインリージョン)を全例に認め、コインリージョンはCMV角膜内皮炎に特徴的な臨床所見であると考えられた。高率に虹彩毛様体炎および高眼圧(続発緑内障)を合併した。角膜移植後にCMV角膜内皮炎を発症した症例では、虹彩毛様体炎を伴う原因不明の水疱性角膜症を背景とする場合があり、水疱性角膜症の原因としてのCMV角膜内皮炎の重要性が示唆された。CMV虹彩毛様体炎はCMV角膜内皮炎に比べてやや若年の男性に多く、約半数の症例で角膜内皮細胞密度の減少を認めたことから、CMV角膜内皮炎とCMV虹彩毛様体炎は同一スペクトラムの疾患である可能性が示唆された。これらの結果に基づきCMV角膜内皮炎の診断基準を作成した。全国調査ではCMV角膜内皮炎210例(確定107、疑い103)が報告された。
結論
CMV角膜内皮炎は免疫機能正常の中高年者に発症するCMV感染症であり、CMV虹彩毛様体炎と診断されている症例のなかに、CMV角膜内皮炎症例が含まれる可能性がある。抗CMV薬が有効であるが、角膜内皮障害が進行した症例では炎症がコントロールされても不可逆性の角膜内皮機能不全によって重篤な視覚障害をきたすことから、早期診断、早期治療が重要な疾患である。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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