文献情報
文献番号
201024098A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性膿疱性毛包炎の病態解明と新病型分類の提言
課題番号
H22-難治・一般-042
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 良樹(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
- 戸倉 新樹(浜松医科大学皮膚科学)
- 椛島 健治(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学 )
- 松村 由美(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学)
- 加藤 真弓(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学)
- 江川 形平(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学)
- 谷岡 未樹(京都大学 大学院医学研究科皮膚科学)
- 山本 洋介(京都大学 大学院医学研究科医療疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、我が国から提唱された疾患概念である好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis:EPF)における①発症頻度、難治性の検証、従来使用されていた薬剤の治療効果を再検討などの疫学研究、②病態に則した病型の再分類、③病態の解明を目的とする。
研究方法
1.疫学調査:全国皮膚科専門医研修認定施設(97施設)にアンケート用紙を送り、EPFの発症頻度を調査する。
2.病型分類の検討:本邦におけるEPFの特色、またEPFの病態形成に関与する因子の関連に基づいて、EPFの病型の再分類を試みる。
3.病態の解明:インドメタシンが有効の症例が認められる事より、COXの下流にあるプロスタグランジン(PG)の病態への関与が示唆される。患者組織標本の病理学的解析によりPG合成酵素の発現の検討や脂腺細胞へのPGD2の効果を検証する。
2.病型分類の検討:本邦におけるEPFの特色、またEPFの病態形成に関与する因子の関連に基づいて、EPFの病型の再分類を試みる。
3.病態の解明:インドメタシンが有効の症例が認められる事より、COXの下流にあるプロスタグランジン(PG)の病態への関与が示唆される。患者組織標本の病理学的解析によりPG合成酵素の発現の検討や脂腺細胞へのPGD2の効果を検証する。
結果と考察
世界初の全国規模の疫学調査を実施した。HIV陽性型の割合を初めて算出し、5%超であった。欧米の報告に比べ現在はかなり低いものの、今後はHIV感染の増加に伴う上昇が予想される。インドメタシン内服使用に関しては、高い奏効割合からも,第一選択薬としての使用が妥当であることを示唆した。しかしながら、不応例や再発例が存在する事も明らかになった。また、ステロイド外用・抗生剤内服は病型によって奏効割合に差が認められた。
また、EPF患者のQOLは、生物製剤適応となる重症尋常性乾癬などの難治性皮膚疾患と同程度のQOL低下を来していることがDLQIアンケート調査により明らかになった。
PGD2合成酵素が毛包周囲に発現し、さらにPGD2が脂腺細胞に作用して好酸球の浸潤を誘導するという病態解明に迫る研究成果を得るに至った。
また、EPF患者のQOLは、生物製剤適応となる重症尋常性乾癬などの難治性皮膚疾患と同程度のQOL低下を来していることがDLQIアンケート調査により明らかになった。
PGD2合成酵素が毛包周囲に発現し、さらにPGD2が脂腺細胞に作用して好酸球の浸潤を誘導するという病態解明に迫る研究成果を得るに至った。
結論
本疾患の特徴として、アトピー性皮膚炎などと誤診され、漫然とステロイドを長期に亘り投与されるケースが多いことが挙げられる。難治性でありながら、正しい診断に至ればインドメタシンなどの幾つかの治療選択肢がある疾患であるため、診断を早期にかつ正確に行うための道標を提起することが強く望まれている。本研究の臨床に直結した病型分類と治療アルゴリズムや簡易診断法の確立は、正確かつ迅速な診断の助けとなることが期待され、患者にとっての福音となることが期待される。今後、我が国発の疾患概念に対する本邦からの更なる研究を通して、本疾患の患者の苦痛の軽減、ひいては厚生労働事業における還元を図りたい。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-