分子診断に基づくヌーナン症候群の診断基準作成と新規病因遺伝子の探索

文献情報

文献番号
201024095A
報告書区分
総括
研究課題名
分子診断に基づくヌーナン症候群の診断基準作成と新規病因遺伝子の探索
課題番号
H22-難治・一般-039
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
青木 洋子(東北大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松原洋一(東北大学 医学系研究科)
  • 緒方勤(独立行政法人国立成育医療センター研究所)
  • 黒澤健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター)
  • 岡本伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 水野誠司(愛知県心身障害者コロニー)
  • 大橋博文(埼玉県立小児医療センター)
  • 川目裕(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリングコース)
  • 呉繁夫(東北大学 医学系研究科)
  • 栗山進一(東北大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヌーナン症候群(Noonan syndrome)は、特異的顔貌・先天性心疾患・低身長・胸郭異常・停留精巣、精神遅滞などを示す常染色体優性遺伝性疾患である。本研究の目的は、1)わが国におけるヌーナン症候群の臨床診断と分子診断を集積し、診断基準の作成と疾患概念の再編成を行う、2)診療科を超えて患者数や合併症の実態を把握する、3)実態調査に基づいて、ヌーナン症候群の診療ガイドラインを作成する、4)まだ完全に解明されていないヌーナン症候群の新規原因遺伝子を探索することにある。
研究方法
1)わが国におけるヌーナン症候群の臨床診断と分子診断を集積し、診断基準の作成と疾患概念の再編成を行う。2)全国実態調査を行う。3)ヌーナン症候群の原因遺伝子の迅速なスクリーニングを確立し全国の診断希望患者に遺伝子診断・臨床診断を行うとともに、遺伝子陽性患者の詳細な臨床症状の検討を行う。4)新規原因遺伝子を明らかにするために次世代シークエンサーによる解析を行った。5)変異タンパクの機能的解析を行う。
結果と考察
1)全国1091病院と、重症心身障害児(者)施設210施設において実態調査を行い903主治医から回答を得た(約70%)。その結果、ヌーナン症候群全体の人数、成長ホルモン投与と悪性腫瘍の合併数も明らかになった。2)当研究班で診断した症例と論文で出版されている遺伝子変異陽性ヌーナン症候群例計315例の臨床症状を検討と、Pediatricsに掲載されたヌーナン症候群review論文を参考にして暫定的な診断ガイドラインを作製した。3)ヌーナン症候群で遺伝子変異を持つ頻度の高い遺伝子・エクソン計24個を同一条件でPCRを行いシークエンスを行う系を考案し、遺伝子診断と臨床診断を行った。SHOC2遺伝子解析と変異陽性患者の臨床症状を明らかにした。4)これまでに原因が不明であったヌーナン症候群について次世代シークエンサーによる解析を行った。5)変異タンパクの機能解析を行った。6)ヌーナン症候群における医療機関への支援と患者への情報提供を行うために、ホームページを作成し、情報を公開した。
結論
ヌーナン症候群において初めての全国調査を行い、ヌーナン症候群の患者数、成長ホルモン投与数、悪性腫瘍の合併数が明らかになった。今後詳細な調査を進め、病態や自然歴を把握し、罹患数を推定する予定である。それらをもとに診断基準の改定を行ってゆく。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024095C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヌーナン症候群についての疫学的調査は世界でも初めてである。全国調査によってヌーナン症候群と診断されている患者数とともに、低身長に対する成長ホルモン投与数や悪性腫瘍の合併数も初めて明らかになった。また、これまでに遺伝子変異が陰性だった患者においてSHOC2遺伝子変異同定と臨床症状について論文報告を行った。
臨床的観点からの成果
ヌーナン症候群の原因遺伝子の迅速なスクリーニングを確立し全国の診断希望患者に遺伝子診断・臨床診断を行った。遺伝子診断より、確定診断が可能になり、今後の医療管理に役立つと考えられる。また、これまでに遺伝子変異が陰性だった患者においてSHOC2遺伝子変異同定と臨床症状について報告した。SHOC2陽性患者はヌーナン症候群とCFC症候群の両方の症状を合併するが、抜けやすい毛髪が特徴的であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
当研究班で診断した症例と論文で出版されている遺伝子変異陽性ヌーナン症候群例計315例の臨床症状を検討と、Pediatricsに掲載されたヌーナン症候群のreview論文を参考にして暫定的な診断ガイドラインを作製した。2014-2015年、ヌーナン症候群が指定難病・小児慢性特定疾病に指定された。指定にあたって、本研究班における研究成果や診断基準が参考にされた。
その他行政的観点からの成果
PTPN11遺伝子変異陽性ヌーナン症候群には成長ホルモンの効果が少ないと報告されてきたが、いまだに統一見解はない。さらに他の遺伝子変異群における成長ホルモンの効果の検討はいまだに報告がない。今後成長ホルモン投与群と非投与群での身長増加の違いや血液パラメーターを比べることによって、ヌーナン症候群における成長ホルモンの効果を調べることが可能である。また成長ホルモン投与における腫瘍発生や肥大型心筋症の悪化など副作用発生の有無を注意深く観察することが重要と考えられる。
その他のインパクト
ヌーナン症候群における医療機関への支援と患者への情報提供を行うために、ホームページを作成し、情報を公開した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Komatsuzaki S, Aoki Y, Niihori T ,etal
SHOC2 mutation analysis in Noonan-like syndrome and hematologic malignancies.
J Hum Genet , 55 (12) , 801-809  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-06-08

収支報告書

文献番号
201024095Z