と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究

文献情報

文献番号
202523003A
報告書区分
総括
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 感染症制御学講座)
  • 下島 優香子(東洋大学 食環境科学部)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
13,367,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食肉の安全性確保には、農場から、と畜・食鳥処理、加工・流通、保存、調理・消費に至るフードチェーン全体でリスク管理を行うことが必要である。と畜場・食鳥処理場では、加熱等の確実な殺菌工程を含まないため、HACCPに基づく衛生管理の妥当性確認及び検証を継続的に行うことが重要である。本研究では、国内のと畜場・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理向上に資することを目的として、衛生管理実態、微生物汚染実態、病原菌の性状、汚染低減策、環境モニタリング手法、危害要因分析表及び外部検証評価手法について検討した。
研究方法
農場段階では乳用牛、肉用牛及び養豚農場を対象に、農場HACCP導入後の安全性、生産性、記録管理等に関するアンケート調査及びデータ解析を行った。と畜処理段階では、豚枝肉に付着した糞便、残皮、胆汁等の異物付着部位の微生物検査、85℃温湯処理による豚枝肉表面の微生物負荷低減効果、肥育豚におけるHelicobacter suisの保菌状況及び枝肉汚染状況を調査した。また、牛、豚及び鶏処理に係る危害要因分析表を作成した。食鳥処理及び食鳥肉については、認定小規模食鳥処理場の衛生管理実態、市販国産鶏肉のListeria属菌汚染、鶏レバーのCampylobacter汚染及び低減策を検討した。さらに、市販牛肉・豚肉等の微生物汚染実態、食肉中のProvidencia属菌の検出法、と畜場・食肉処理施設の環境モニタリング手法、牛と畜場の外部検証微生物試験データの解析を実施した。
結果と考察
農場HACCPは生産物の安全性確保に寄与する一方、文書・記録作成の負担軽減とデジタルツールの活用が課題であった。豚枝肉の異物付着部位では微生物汚染が認められ、糞便だけでなく残皮等も衛生管理上重要であり、ゼロトレランス、確実なトリミング及び異物付着防止対策の重要性が確認された。豚枝肉への温湯処理は、枝肉表面の微生物負荷低減及び低温保存中の品質保持に有用である可能性が示された。H. suisについては肥育豚の保菌が確認されたが、適切な内臓摘出及び枝肉衛生管理により枝肉汚染リスクは低く管理できる可能性が示された。認定小規模食鳥処理場では、多くの施設でHACCPの考え方に基づく衛生管理が実施され、冷却工程、保管温度、金属探知機等がCCPとして設定されていた。市販国産鶏肉ではListeria monocytogenesを含むListeria属菌が高頻度に検出され、環境モニタリング及び汚染経路推定の指標として活用できる可能性が示された。鶏レバーでは33検体中18検体、54.5%がCampylobacter陽性であり、次亜塩素酸ナトリウム水浸漬処理や表面焼烙処理のみではリスクを十分に低減できないと考えられた。市販牛肉・豚肉では主要食中毒菌は検出されなかったが、低温増殖性細菌を含めた微生物動態の把握が重要であった。Providencia属菌については、一般的な衛生指標菌のみで汚染を評価することは困難であり、Multiplex PCR法と選択分離培地を組み合わせた方法が有用と考えられた。環境モニタリングでは、一般生菌数、腸内細菌科菌群数及びListeria属菌を組み合わせることで、施設内の衛生状態及び汚染経路の把握に有用な情報が得られた。外部検証データの解析では、施設の衛生管理状態に応じた検証頻度の合理化に資する基礎資料が得られた。
結論
本研究により、と畜場・食鳥処理場及び関連施設における微生物汚染実態、汚染低減策、環境モニタリング手法、危害要因分析表及び外部検証評価手法に関する成果が集積された。これらの成果は、HACCPに基づく衛生管理の実効性向上、食肉衛生検査所による衛生指導、外部検証の効率化、並びに国産食肉・食鳥肉の安全性向上に資する基礎資料となると思われる。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202523003B
報告書区分
総合
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 感染症制御学講座)
  • 下島 優香子(東洋大学 食環境科学部)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
と畜場・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資することを目的として、3年間に、研究対象を①農場及び搬入家畜、②と畜・食鳥処理工程、③施設環境、④製品、⑤流通・保存、⑥消費段階の6段階に整理して調査した。
研究方法
① 1)農場HACCP導入効果, 2)搬入家畜の病原微生物保菌状況を調査した。② 1)枝肉の衛生状況、異物付着及び温湯処理、2)HACCP外部検証の評価、3)食鳥処理場の衛生管理実態、4)危害要因分析及び海外情報等を調査した。③施設環境については食鳥処理場及びと畜場についてアンケート調査及びリステリアを用いた環境モニタリングを実施した。④1)市販鶏肉・鶏レバーの病原微生物及び衛生指標菌、2)鶏レバーの表面・内部汚染、3)市販鶏肉のListeria属菌、4)市販食肉のProvidencia属菌について調査した。⑤ 市販牛肉および豚肉の細菌叢等を解析した。⑥ 鶏レバー中のカンピロバクターの加熱や次亜塩素酸ナトリウムによる殺滅等の効果を検討した。
結果と考察
①農場HACCP導入農場では生産物の安全性確保に有効であることが確認された。と畜場搬入黒毛和種牛ではEHECが18%(16/90)、カンピロバクターが50%(45/90)から検出された。サルモネラは糞便262検体から未分離であった。肥育豚ではH. suisの保菌が確認されたが枝肉からは検出されなかった。②めん羊枝肉では部位により衛生指標菌数が異なり、豚枝肉では糞便、残皮、消化管内容物、胆汁、獣毛、接触痕等の異物付着部位に微生物汚染が認められた。85℃温湯処理は豚枝肉表面の細菌数を低減した。全国の外部検証微生物試験データの解析から、工程管理目標の目安として牛・豚では一般生菌数4.0、腸内細菌科菌群2.0 log CFU/cm²以下、食鳥ではそれぞれ5.5及び4.0 log CFU/cm²以下が推定され、食鳥とたいのカンピロバクターでは2.6又は3.0 log CFU/gが工程管理目標案となり得ることが示された。牛・豚・鶏の危害要因分析表等を作成した。③環境モニタリングの実施経験を有する施設は34.5%にとどまったが、一般生菌数、腸内細菌科菌群及びリステリア属の検査により、床、排水溝、設備、冷蔵庫、副産物処理エリア等の施設内汚染を可視化できた。④市販鶏肉・鶏レバーからカンピロバクター及びサルモネラが検出され、衛生指標菌数のみから主要病原菌汚染を予測することは困難であった。鶏レバーでは高率にカンピロバクターが検出され、内部又は割面からもカンピロバクター及びAeromonas属菌が検出された。市販鶏肉ではListeria monocytogenesの陽性率が約29.2%、Listeria属菌全体では68.8%であった。Providencia属菌は市販食肉149検体中81検体(54%)から検出され、P. alcalifaciens及びP. rustigianiiが主要菌種であり、P-multiplex PCRを用いたモニタリング手法を構築した。⑤市販牛肉・豚肉では主要な食中毒菌は検出されなかったが、4℃での保存中に一般生菌数が増加し、Pseudomonas属、Serratia属等の低温増殖性細菌が菌叢変化及び品質劣化に関与することが示された。⑥加熱不十分な鶏レバーの喫食リスクを踏まえ、表面焼烙及び次亜塩素酸ナトリウム水処理の有効性を検討した。肝臓54.5%(18/33)がカンピロバクター陽性であった。10~200 ppm、5又は30分間の次亜塩素酸ナトリウム水処理では明確な低減効果は認められず、汚染菌数レベルは個体差よりもロット、すなわち鶏群に依存する傾向が示された。
結論
①農場及び搬入家畜、②と畜・食鳥処理工程、③施設環境、④製品、⑤流通・保存、⑥消費段階の各段階について、衛生管理の実態と微生物学的リスクを明らかにした。6分担研究は個別に完結するものではなく、農場・搬入家畜の危害情報をと畜・食鳥処理工程の危害要因分析へ反映し、外部検証データと環境モニタリングにより工程の実効性を評価し、製品・流通段階の病原微生物及び菌叢データで残存リスクを確認し、最終的に消費時の加熱による安全確保へつなげる相互補完的な関係にある。HACCPの実効性を高めるためには、衛生管理計画の作成・記録確認だけでなく、外部検証微生物試験、病原微生物及び衛生指標菌のモニタリング、環境モニタリング、菌叢解析、目視汚染の確認及び低減処理の妥当性確認を組み合わせ、施設ごとの工程管理状態を科学的に継続評価することが重要である。本研究で得られた成果は、と畜場・食鳥処理場におけるHACCPの妥当性確認及び検証、衛生管理計画の改善、外部検証の効率化並びに食肉・食鳥肉の安全性向上に資する基礎資料として活用して欲しい。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202523003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)研究成果 農場から消費段階までの微生物汚染実態を調査し、農場HACCPの効果と課題、豚枝肉異物付着部位の汚染、温湯処理効果、鶏肉・施設環境のListeria属菌、鶏レバーのカンピロバクター汚染等を明らかにした。
(2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義 食肉衛生管理を科学的に評価する基礎資料を示し、HACCPの検証、外部検証、環境モニタリング、衛生指導及び消費者への食中毒予防啓発に活用でき、国産食肉・食鳥肉の安全性向上に資する。
臨床的観点からの成果
(1)研究成果 本研究は患者対象の臨床研究ではないが、鶏レバーのカンピロバクター高頻度汚染、市販鶏肉のListeria属菌汚染、食肉中のProvidencia属菌の存在可能性を示し、食肉由来感染症予防に資する知見を得た。
(2)研究成果の臨床的・国際的・社会的意義 本成果は、食中毒事例の背景要因の理解、食品由来感染症のリスク評価、消費者・食品取扱者への予防啓発に活用でき、食肉・食鳥肉の安全性向上に貢献する。
ガイドライン等の開発
牛、豚及び鶏処理に係る危害要因分析表の作成を進めている。本表では、各処理工程の生物学的、化学的及び物理的危害要因、管理手段、妥当性確認及び検証の考え方を整理し、と畜場・食鳥処理場の衛生管理計画の作成・見直し及び行政による衛生指導に活用可能な資料として整備する予定である。なお、現時点で審議会等での検討実績はない。
その他行政的観点からの成果
牛と畜場の外部検証微生物試験データを解析し、施設区分や衛生管理状態に応じた外部検証頻度の合理化に資する基礎資料を得た。また、環境モニタリングや危害要因分析表に係る成果は、食肉衛生検査所による監視指導、衛生管理計画の確認、職員研修資料として活用可能である。なお、現時点で審議会等での活用実績はない。
その他のインパクト
本研究成果は、学会発表、専門誌発表、行政関係者・業界関係者・市民向け講習等を通じて広く普及した。特に食肉衛生、ジビエ、カンピロバクター、リステリア等に関する講演・説明会を多数実施し、食品衛生行政、食肉産業、教育及び消費者啓発への波及効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
日本食品微生物学雑誌 43(1) 1-11、獣医公衆衛生研究,28(2),14-18、vesta (141) 50-53
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
1件
IAFP 2025,7/27-30,Cleaveland,USA, Verification of HACCP in poultry slaughterhouses in Japan: A resul
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
22件
市民向け説明会 合計6件,業界関係者向け説明会 合計7件,行政関係者向け説明会  合計9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202523003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,800,000円
(2)補助金確定額
16,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,722,053円
人件費・謝金 724,500円
旅費 1,314,503円
その他 2,624,336円
間接経費 3,433,000円
合計 16,818,392円

備考

備考
山﨑先生が直接経費1,908,000円のところ、物品費1,926,392円支出(18,392円自己より支出)

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-