食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究

文献情報

文献番号
202523001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所応用疫学研究センター)
  • 八幡 裕一郎(国立保健医療科学院疫学部)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 熊谷 優子(和洋女子大学家政学部健康栄養学科)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染症サーベイランスシステム(NESID)データ、検査機関におけるアクティブサーベイランスデータ、食中毒を疑わせる事例の疫学調査データ、環境中のウイルスのデータ、状態空間モデルの利用による、散発事例も含めた食品媒介感染症被害実態の推計方法を検討する。
研究方法
2023-2024年度に関する臨床検査機関を対象としたアクティブサーベイランスデータを用いて食品由来下痢症実患者数の推定を行なった。協力自治体における感染性胃腸炎集団感染事例及び食中毒事例の記述疫学的検討を踏まえ、曝露、発症、外来受診、入院、死亡等を含む疾病負荷の全体像を可視化するための疾病負荷ピラミッド作成に向けた基礎的情報収集を試みた。自己対照ケースシリーズ法(SCCS法)を用いて、疾病負荷の検討が可能な範囲について検討した。地域のノロウイルス流行を探知するために、二枚貝を採取しRNA抽出を行い、ノロウイルス遺伝子検索を実施した。調理従事者等を対象としたノロウイルス便検査のデータや、下水から検出されるノロウイルス遺伝子のデータを元に、ノロウイルス感染者数の推定を試みた。医科レセプトデータを用いた食品由来感染症およびギランバレー症候群について年齢別・性別の発生状況を検証できることを確認するとともに、検査実施率を考慮した推計の実行可能性を確認した。さらに、食中毒統計では確認できないロタウイルスなどのウイルス感染による食品由来感染症の実被害患者数の推計の実行可能性を確認した。DALYsの導出計算過程に着目して、日本国民の労働生産性 と YLDを導出するための平均治療期間(L)と障害の重み付(W)とを考慮して、労働生産性の損失を導出する方法を考案した。
結果と考察
全国における下痢症の食品由来実患者数の推定値の平均値は、2024年ではCampylobacterは2,431,346人、Salmonellaは787,975人、Vibrio parahaemolyticusが8,947人であった。SCCS法により推定されたIRRは32.0(95%信頼区間:12.5-82.1)であった。これに基づき算出したARPは96.9%(95%信頼区間:92.0-98.8%)であった。
本研究で対象とした「焼肉店の利用」はWhitakerらが示したSCCS法の前提条件[6]である、①「イベントの発生が独立か、稀であること」、②「イベントの発生がその後の観察期間の長さに影響を与えないこと」、③「イベントの発生がその後の曝露に影響を与えないこと」、④「曝露がイベント後の行動変化がないこと」、⑤「時間変動交絡(年齢・季節など)はモデル化されていること」を概ね満たしていると考えられた。このため、IRRの推定が可能であり、さらにIRRを用いたARPの算出も可能であると考えられた。二枚貝の採取は2021年4月より継続しているが2024年は6月、1月、2月に陽性率が高く、採取時期の前に感染者が多く存在した可能性が示唆された。2024年度のデータに対して、下水中のノロウイルスGII濃度を利用し感染者数を推定した。推定された仙台市の総感染者数中央値は最小341から最大1324の間で推移しており、平均として予測報告症例数の中央値の約9倍であった。潜在総感染者数の推定値を下水ウイルスデータの有無で比較したところ、ほとんど差が見られなかった
結論
全国レベルで、Campylobacterでは約210~970倍、Salmonellaでは約25~330倍、Vibrio parahaemolyticusでは約20~200倍の患者が存在している可能性が考えられた。また、20年間(2005~2024年)の各菌の推定患者数と報告患者数の経年変化は互いに連動しているとは言えず、食中毒統計の報告数だけで実患者数の変動を把握することは難しいことが示唆された。これらの結果から平常時から散発事例等を含めたデータ収集を継続して行うアクティブサーベイランスシステムの有効性およびその必要性が強調された。河川生息の二枚貝や、下水流入水といった環境検体は、定点報告での感染性胃腸炎の増減を反映していると考えられる。統計的な解析を加えることで流行状況の探知が行えると考えられた。食品に由来することが疑われる疾患について医科レセプトデータから、抽出したデータについて性別・年齢別の特徴を解析は食中毒統計での患者情報を保管することが可能であることが確認できた。従来の評価指標であるDALYsの導出計算過程に着目して、日本国民の労働生産性 と YLDを導出するための平均治療期間(L)と障害の重み付(W)とを考慮して、労働生産性の損失を導出する方法を考案できた。

公開日・更新日

公開日
2026-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-14
更新日
-

文献情報

文献番号
202523001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所応用疫学研究センター)
  • 八幡 裕一郎(国立保健医療科学院疫学部)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 熊谷 優子(和洋女子大学家政学部健康栄養学科)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染症サーベイランスシステム(NESID)データ、検査機関におけるアクティブサーベイランスデータ、食中毒を疑わせる事例の疫学調査データ、環境中のウイルスのデータ等を活用することで、散発事例も含めた食品媒介感染症被害実態の推計方法を検討した。複数年度にわたる推計を行うことで食品由来感染症被害の発生動向の把握を可能とし、食中毒対策の検討やその効果の評価に活用する手法とそれに使用する指標や基礎的なデータを精査することで、食品衛生行政での活用方法を検討した。またWHOや他の各国の食品由来疾患被害実態推計研究との情報交換を行うことで研究の推進および国際対応への準備を行う。
研究方法
宮城県および全国における積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握では、令2022~2024年の病原菌検出状況の被害実態の推定を行なった。ウイルス性食中毒を疑わせる事例の疫学調査データ等からの詳細な実態把握手法等の研究では、令和5年度は、協力自治体Aにおいて、2018年から2022年8月までに発生した感染性胃腸炎集団感染63事例を対象に記述疫学的検討を行った。令和6年度は、協力自治体Bにおいて、2015年9月から2022年8月までの感染性胃腸炎集団感染122例を解析した。令和7年度は、これらの成果を踏まえ、ノロウイルス感染症の疾病負荷を、死亡、入院、外来受診、集団感染、未受診例、休業・欠席等を含む疾病負荷ピラミッドとして把握するための基礎的情報収集を実施した。広域に発生する主に細菌性疾患の疫学情報とゲノム情報の分析と監視に基づく疾病負荷軽減策の検討では初年度は共通化した疫学調査情報、感染症発生動向調査情報、食中毒調査支援システム情報を比較し、共通調査票による情報収集は迅速性の点で有用であった。一方で、データ集約・解析の効率化が課題であることを示した。2年目はMLVA法により同一分子タイプとされたEHEC O157VT1VT2症例37例を対象に、焼肉店の利用を曝露因子として自己対照ケースシリーズ法(Self-Controlled Case Series法:SCCS法)による解析を行った。3年目はこのIRRを用いて寄与リスク割合(Attributable Risk Percent:ARP)を算出した。大量調理施設衛生管理マニュアルで推奨される調理従事者等を対象としたノロウイルス便検査のデータや、下水から検出されるノロウイルス遺伝子のデータを元に、状態空間モデルにより、年間のノロウイルス感染者数の推定を試みた。また、地域のノロウイルスの感染流行状況を探知する手段として河川生息二枚貝を採取し、ノロウイルス遺伝子の検索を実施し、リアルタイムPCRによるノロウイルス陽性数の変化と感染性胃腸炎の増減トレンドの比較を行った。食品媒介感染症被害実態の推計に基づく施策評価のための研究では、令和5年度は国内外における食品由来感染症への対策に関する情報を収集し、整理、分析した。令和6年度は2018年から2023年の医科レセプトデータを用いた食品由来感染症(7種)の実被害患者数を推計し、その実行可能性を検証した。令和7年度は医科レセプトデータを用いた食品由来感染症、及びギランバレー症候群について年齢別・性別の発生状況を検証できることを確認するとともに、検査実施率を考慮した推計の実行可能性を確認した。より現場で活用しやすく、また一般に理解が得られやすい指標の検討ではDisability-adjusted Life Years (DALYs)に代わる、分かりやすい新たな指標策定を検討した。
結果と考察
サーベイランスによる推定食中毒患者数と比べて報告患者数はいずれの年も推定患者数より大幅に少なく、変動の傾向は過去のサーベイランス結果も含めて必ずしも一致していなかった。二枚貝でのノロウイルス検出陽性数の高さが地域の流行状況を反映していることが窺えた。医科レセプトデータを用いた食品由来感染症の実被害患者数を推計し、医科レセプトデータ活用における課題を抽出した。従来の評価指標であるDALYsの導出計算過程に着目して、日本国民の労働生産性 と YLDを導出するための平均治療期間と障害の重み付とを考慮して、労働生産性の損失を導出する方法を考案した。
結論
当研究班において検討している各種推定手法を検討することで、各種データの整理およびそれぞれの特徴を把握することができた。より効果的かつ一般の人に理解がしやすい、同時に負担が少ない推定手法を今後も精査する必要が求められた。さらに行政施策に具体的に効果的に反映する指標や手段の検討をはじめ、蓄積が進んでいる食中毒事件調査結果詳報をはじめとする行政データベース情報の活用も有効であることが確認された

公開日・更新日

公開日
2026-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202523001C

収支報告書

文献番号
202523001Z