Carney複合の全国調査ならびに診断指針等の作成に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024078A
報告書区分
総括
研究課題名
Carney複合の全国調査ならびに診断指針等の作成に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-022
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徳男(旭川厚生病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 一(旭川医科大学 医学部)
  • 梶野 浩樹(旭川医科大学 医学部)
  • 棚橋 祐典(旭川医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Carney複合(CNC)は粘液腫、皮膚の色素斑、内分泌機能亢進状態を合併した症例をまとめ、名付けられた比較的新しい疾患概念であるが、希少性ゆえに我が国における実態については不明な点が多い。本研究ではCNC患者数の把握を目的に全国調査を実施し、疾患に関連する基本的データを収集することを目標とし、また、原因遺伝子であるPRKAR1A遺伝子の解析を同意が得られた症例で行って診断を確定する。
研究方法
倫理委員会の審査・承認を得て、病床数200以上の医療機関で内科(内分泌科、循環器科)、小児科、皮膚科、形成外科に相当する標榜科合計5,143箇所に調査用紙を郵送し、一次調査を実施し、診療経験があると回答した36診療科の主治医宛に二次調査を行った。
結果と考察
一次調査の回答率は57.2%で、二次調査では対象の77.8%に相当する28診療科から回答を得ることができ、重複症例を除外すると本邦での患者数26症例を把握することができた。臨床像の特徴としてはこれまでの報告と大差なかったが、診断基準に示されている徴候のうち、大細胞石灰型セルトリ細胞腫、甲状腺癌、青色母斑・類上皮性青色母斑、乳管腺腫を有する比率は低く、砂腫状黒色神経鞘腫は1例も認められなかった。診断基準としては既に海外から示されたものをそのまま利用することで問題はないと考えられたが、上記の特徴を考慮して診断に当たることも有用と思われた。
PRKAR1A遺伝子異常の有無を検討したのは7例(27%)に留まり、その中で遺伝子異常を同定して診断を確定していたのは4例(15%)に過ぎなかった。うち2例は本研究班において実施され、各々に既報の遺伝子変異を同定して診断を確定した。
今後は、PRKAR1A遺伝子解析の継続的実施や、患者生体試料の収集・保管、それらライブラリーを用いた新規原因遺伝子の探索などの課題について研究を進めていくことが重要だと考えられた。
結論
CNCの全国調査を実施し、全国で26症例存在することを把握できた。臨床像の特徴としてはこれまでの報告と大差なかったものの、海外から示された診断基準に示されている徴候の中にも保有比率のかなり低いものが存在したが、この診断基準をそのまま利用することで問題はないと考えられた。PRKAR1A遺伝子異常の有無を検討したのは7例に過ぎず、このうち4例に遺伝子異常が同定され、うち2例は本研究班で解析を行った。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024078C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床診断を裏付け、診断を確定するための遺伝子診断をインフォームド・コンセント取得の上、患者2例において実施した。その結果、それぞれの症例において、これまで既に報告のある遺伝子変異を同定することができ、これにより診断を確定するに至った。
また、研究期間終了後にも本疾患の診断および遺伝子診断に関しての問い合わせが医療機関から2~3件/年の頻度で寄せられており、そのうち4家系について遺伝子解析を行ったところ、3家系において既知の遺伝子変異を同定し、診断を確定することができた。
臨床的観点からの成果
本疾患に関連すると思われる診療科を対象にして全国調査を実施することで、本疾患の疾患概念、診断基準について周知することができ、患者の臨床情報を集計することで各症候の多寡について傾向を示すことができたため、診断基準と合わせて利用することによって臨床診断に役立つ情報提供ができた。
研究期間終了後も本疾患の診断および遺伝子診断についての問い合わせが増え、こうした情報提供により本疾患の認知度が高まったと考えられた。また、一部の患者については個別に遺伝子診断を行い、診断を確定することができた。
ガイドライン等の開発
海外から発表されている診断基準に基づいた全国調査を行い、本邦でも同一基準を用いることに臨床上問題のないことを明らかにした。
その他行政的観点からの成果
全国調査を行った結果、臨床的に本疾患として診断されている症例を26例把握することができた。このうち医療費の公費負担を受給している患者は4名のみで、その全員が特定疾患医療受給者であることも明らかにした。

その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
1) PRKAR1A変異と内分泌腫瘍、ホルモンと臨床 60(8): 633-637, 201 2)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第85回日本内分泌学会学術総会(平成24年)にてポスター発表 「Carney複合の全国調査結果」
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
患者数の把握
その他成果(普及・啓発活動)
1件
全国調査の実施

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-20

収支報告書

文献番号
201024078Z