文献情報
文献番号
201024044A
報告書区分
総括
研究課題名
新規拡張型心筋症モデルマウスを用いた拡張型心筋症発症機序の解明
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-難治・一般-044
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 塩島 一朗(大阪大学大学院 医学系研究科 心血管再生医学)
- 赤澤 宏(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学 )
- 岡 亨(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
37,413,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
拡張型心筋症の予後は、非常に不良である。また、拡張型心筋症の最終的な治療法は現在のところ心臓移植しかなく、新たな治療法の確立が望まれている。拡張型心筋症の原因の約30%が遺伝子変異であることが明らかとなってきたが、それらの遺伝子変異により収縮機能不全をきたす機序は未だ不明である。そこでマウスモデルを用いて拡張型心筋症の発症機序を明らかにすることを本研究の目的とした。
研究方法
我々は、ヒトで報告されている変異型心筋αアクチン遺伝子(cardiac α-actin R312H)を心臓特異的に過剰発現させた遺伝子改変マウスを作成し、この拡張型心筋症モデルマウスを用いて、心筋症発症機序の解析を行ってきた。昨年度までの結果から、CaMKIIδの活性化とそれにともなうp53の発現増加、さらにp53依存性心筋細胞アポトーシスが拡張型心筋症の発症機序として重要であることが明らかになった。そこで本年度はCaMKIIδ活性化のメカニズムを明らかにするために、単離心筋を用いてカルシウム感受性の測定および心筋細胞内カルシウム動態の解析をおこなった。
結果と考察
拡張型心筋症モデルマウスおよび野生型マウスからスキンドファイバーを作成し、カルシウム感受性を測定したところ、最大カルシウム張力には両者で変化がみられなかったが、カルシウム感受性は拡張型心筋症モデルマウス由来心筋繊維で低下していることが明らかになった。また、単離心筋における心筋細胞内カルシウム濃度変化についてカルシウム蛍光指示薬を用いて検討したところ、野生型マウスおよび拡張型心筋症モデルマウス由来の単離心筋では心筋細胞内カルシウム濃度変化については差がみとめられなかった。以上の結果から、カルシウム感受性の低下にともなって心筋局所のカルシウム濃度が上昇し、CaMKIIδを活性化しているものと考えられた。
結論
変異型心筋αアクチン遺伝子を心臓特異的に過剰発現することにより得られた拡張型心筋症モデルマウスにおいて、心筋症発症機序の検討をおこなった。その結果、カルシウム感受性低下にともなう局所のカルシウム濃度上昇が CaMKIIδの活性亢進をきたし、さらにp53による心筋細胞アポトーシスを増加させることが、心筋症発症の機序として重要であることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-