文献情報
文献番号
201024019A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小椋 祐一郎(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石橋 達朗(九州大学 医学部)
- 大路 正人(滋賀医科大学 医学部)
- 大鹿 哲郎(筑波大学 医学部)
- 坂本 泰二(鹿児島大学 医学部)
- 白神 史雄(香川大学 医学部)
- 高橋 寛二(関西医科大学 医学部)
- 高橋 政代(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター)
- 寺崎 浩子(名古屋大学 医学部)
- 根木 昭(神戸大学 医学部)
- 村上 晶(順天堂大学 医学部)
- 山本 修一(千葉大学 医学部)
- 湯沢 美都子(日本大学 医学部)
- 吉村 長久(京都大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性・進行性で視力予後不良な疾患である加齢黄斑変性、網膜色素変性症などの網膜脈絡膜萎縮をきたす疾患群と視神経萎縮をきたす疾患群を対象としてその実態調査、病態解明、治療法開発を目的とする。
研究方法
(1)加齢黄斑変性:光線力学的療法(PDT)に加え、2009年に抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が導入され、併用療法を含めると治療方法に多様性が生じているため、いずれの治療がより有効であるか病型別に検討した。また疫学調査および病態解明のための基礎研究、iPS細胞を利用した再生医療の臨床応用も進めている。(2)網膜色素変性症:日本人特有の遺伝子異常が報告されており、遺伝子治療や神経保護治療に向けての基礎となる遺伝子データベースの構築を目指す。特定疾患の診断基準の見直しを行う。また、病態解明、神経保護治療薬、遺伝子治療に関する基礎および臨床研究を進めている。(3)視神経萎縮:視神経萎縮の進行阻止のための神経保護治療の開発と、失われた視機能の回復を目的とした幹細胞による網膜再生治療と人工視覚の開発を行っている。その他、視覚障害者の原因疾患の割合を調査した。
結果と考察
(1)加齢黄斑変性:病型別の抗VEGF療法およびPDTの治療効果を検討し、滲出型加齢黄斑変性に対する治療指針を作成した。久山町における疫学調査では、日本人の多いとされるポリープ状脈絡膜血管症の割合が明らかになった。iPS細胞を利用した再生医療の臨床プロトコール作製中である。(2)網膜色素変性症:多施設で得た患者検体を1施設へ集約・解析するシステムを構築中である。長期発現型のサル由来レンチウイルスベクターによる遺伝子導入の動物実験における長期安全性が示され臨床試験の準備中である。(3)視神経萎縮や網膜変性:幹細胞から網膜の細胞への分化誘導や一定条件下での動物網膜への移植細胞の生着が可能となった。人工視覚については、埋植電極の耐久性、組織への安全性が示され今後も臨床応用に向けて開発を進める。視覚障害者の原因疾患として、1位:緑内障、2位:網膜色素変性、3位:糖尿病網膜症、4位:加齢黄斑変性となり、若干の順位変動は認めたが、前回の調査と同様の結果であった。
結論
加齢黄斑変性に対しては、今後、さらに有効な治療法や予防法開発のための臨床研究、病態解明が進むものと思われる。網膜色素変性や視神経萎縮においては、原因遺伝子の解析やデータベースの構築が進められ、また、遺伝子導入療法も臨床応用に向けて開発中である。萎縮した網膜や視神経の再生医療や人工視覚の臨床応用は、失明患者が熱望するものであり、今後も進展を目指す必要がある。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-