正常圧水頭症の疫学・病態と治療に関する研究

文献情報

文献番号
201024017A
報告書区分
総括
研究課題名
正常圧水頭症の疫学・病態と治療に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
新井 一(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(洛和会音羽病院 正常圧水頭症センター)
  • 和泉 唯信(徳島大学医学部 歯学部附属病院 神経内科)
  • 稲富 雄一郎(済生会熊本病院 脳卒中センター神経内科)
  • 大井 静雄(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 折笠 秀樹(富山大学大学院医学薬学研究部 バイオ統計学・臨床疫学)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 加藤 丈夫(山形大学医学部内科学第三 神経・内分泌代謝・血液内科学講座)
  • 榊原 隆次(東邦大学医療センター佐倉病院 神経内科)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科 神経内科学分野 臨床神経学)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学 先端医療研究センター)
  • 澤本 和延(名古屋市立大学大学院医学研究科 再生医学分野)
  • 鈴木 則宏(慶応義塾大学医学部 神経内科)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院 脳神経外科)
  • 中野 今治(自治医科大学 神経内科)
  • 橋本 卓雄(聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院 脳神経外科)
  • 橋本 康弘(福島県立医科大学 医学部生化学講座)
  • 平田 好文(熊本託麻台病院 脳神経外科)
  • 藤井 幸彦(新潟大学脳研究所 脳神経外科分野)
  • 堀 智勝(森山記念病院 東京女子医科大学非常勤嘱託)
  • 松前 光紀(東海大学医学部 脳神経外科)
  • 三宅 裕治(西宮協立脳神経外科病院)
  • 宮田 元(秋田県立脳血管研究センター 脳神経病理学研究部)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 高次機能障害学)
  • 森 敏(松下記念病院 神経内科)
  • 山田 晋也(東海大学大磯病院 脳神経外科)
  • 湯浅 龍彦(鎌ヶ谷総合病院 千葉神経難病医療センター 難病脳内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性正常圧水頭症(iNPH)の原因及び病態を明らかし、治療法と予防法を確立し、老年期の難治性病態の一つを解決に導くことである。
研究方法
各分担者がおのおのの課題について研究を行い、斑全体の研究として、全国規模の前向き観察研究であるJapan Shunt Registry(JSR)が実施され、Asymptomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI(AVIM)の研究班内調査が開始された。更に本年度はガイドラインの改定作業が行われた。
結果と考察
はじめて家族性iNPHが報告され、iNPHの病因・病態にも遺伝素因が関与している可能性が示唆された。今後この方面の研究を推進することにより、早期診断と予防法の確立、更にはiNPHの病因の解明に繋がるとことが期待される。髄液中トランスフェリンを測定する事でiNPHとアルツハイマー病との鑑別が可能となった。タップテストの欠点を補う新たな補助診断法として期待される。AVIMの登録、追跡調査を開始した。この調査結果はiNPHの自然経過と病態を把握する上で極めて重要である。iNPH多施設共同研究(SINPHONI)の成果を踏まえて、ガイドラインの改定作業が開始された。新しい診断基準ではタップテストからMRI画像に診断の中心が移行する。JSRの結果の中間報告があった。転倒予防の面から退院後の地域リハビリテーションと地域医療機関の連携の重要性が強調された。
結論
遺伝子素因と内科的治療と新たな研究課題がでてきた。AVIMの登録•追跡調査やJSRは、これからが本研究班の活動を完結すべき段階となる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024017B
報告書区分
総合
研究課題名
正常圧水頭症の疫学・病態と治療に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
新井 一(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(洛和会音羽病院 正常圧水頭症センター)
  • 和泉 唯信(徳島大学医学部 歯学部附属病院 神経内科)
  • 稲富 雄一郎(済生会熊本病院 脳卒中センター神経内科)
  • 大井 静雄(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 折笠 秀樹(富山大学大学院医学薬学研究部 バイオ統計学・臨床疫学)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 加藤 丈夫(山形大学医学部内科学第三 神経・内分泌代謝・血液内科学講座)
  • 榊原 隆次(東邦大学医療センター佐倉病院 神経内科)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科 神経内科学分野 臨床神経学)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学 先端医療研究センター)
  • 澤本 和延(名古屋市立大学大学院医学研究科 再生医学分野)
  • 鈴木 則宏(慶応義塾大学医学部 神経内科)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院 脳神経外科)
  • 中野 今治(自治医科大学 神経内科)
  • 橋本 卓雄(聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院 脳神経外科)
  • 橋本 康弘(福島県立医科大学 医学部生化学講座)
  • 平田 好文(熊本託麻台病院 脳神経外科)
  • 藤井 幸彦(新潟大学脳研究所 脳神経外科分野)
  • 堀 智勝(森山記念病院 東京女子医科大学非常勤嘱託)
  • 松前 光紀(東海大学医学部 脳神経外科)
  • 三宅 裕治(西宮協立脳神経外科病院)
  • 宮田 元(秋田県立脳血管研究センター 脳神経病理学研究部)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 高次機能障害学)
  • 森 敏(松下記念病院 神経内科)
  • 山田 晋也(東海大学大磯病院 脳神経外科)
  • 湯浅 龍彦(鎌ヶ谷総合病院 千葉神経難病医療センター 難病脳内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性正常圧水頭症(iNPH)の原因及び病態を明らかし、治療法と予防法を確立し、老年期の難治性病態の一つを解決に導くことである。
研究方法
病因、病態及び治療研究を各分担者がおのおのの課題について研究を行った。斑全体として、全国規模の前向き観察研究であるJSRが実施、iNPHのpreclinical stageであるAVIMの研究班内調査の開始とガイドラインの改定作業が行われた。
結果と考察
AVIMは70歳の地域住民の1.5%に認められ、その後の追跡調査により8年間に約50%に神経症状が出現した。AVIMの年間発生率は0.2%と推測された。家族性正常圧水頭症が報告され、SFMBT1遺伝子の異常が遺伝的リスクになっている可能性が示唆された。髄液中トランスフェリンを測定する事でiNPHとアルツハイマー病との鑑別が可能となり、タップテストの欠点を補う新たな補助診断法として期待される。iNPHのリスクファクターである糖尿病に伴う脳の細動脈硬化により、脳のコンプライアンス低下が生じることが動物実験にて明らかにされた。MRIにてvoxel-based morphometry によりiNPHを類似疾患と高精度に識別することが可能となった。新たにiNPHの剖検が得られ、この例では細動脈、細小動脈硬化の他に毛細血管の硬化を認め、毛細血管を含む微小血管の硬化は水頭症の原因である可能性が示唆された。地域連携による地域リハビリテーションの重要性が明らかにされた。
結論
遺伝子素因と内科的治療と新たな研究課題がでてきた。AVIMの登録、追跡調査やJSRは、これからが本研究班の活動を完結すべき段階となる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性正常圧水頭症が初めて報告され、iNPHの病因・病態にも遺伝素因が関与している可能性が示唆された。今後この方面の研究を推進することで、早期診断と予防法の確立、更にはiNPHの病因の解明に繋がるとことが期待される。髄液マーカーの探索では、新たに髄液中トランスフェリンを測定する事でiNPHとアルツハイマー病との鑑別が可能となった。全国規模でのAVIMの登録、追跡調査を開始し、追跡調査の結果が明らかになるには数年先になるが、この調査結果はiNPHの自然経過と病態を把握する上で極めて重要である。
臨床的観点からの成果
iNPH前向き観察研究として「Japan Shunt Registry (INPH-JSR)」の結果の中間報告があった。日本におけるiNPH治療の現状を把握できると考えられる。この結果を踏まえて、iNPHの安全で効果のある外科的治療の提案を行いたい。更に何らかの原因により外科的治療が出来ない患者と外科的治療において効果が十分でなかった患者に対する有効な内科的治療が報告された。転倒予防の面から退院後の地域リハビリテーションと地域医療機関の連携の重要性が強調された。
ガイドライン等の開発
2004年の診療ガイドラインの発表の後、iNPHの認知度は格段に上がり、全国のシャント術件数も急速に増え、臨床研究や基礎研究も拡大しつつある。研究論文数は、この8年間で初版時に検索された約40年分の論文数を超えるほどの勢いで、エビデンスレベルの高い論文も増加した。そこで正常圧水頭症研究会と共同で診療ガイドラインの改訂を進めた。
その他行政的観点からの成果
iNPH全国調査(SINPHONI)の100例を対象に、介護保険の費用と手術費用を併せた医療経費を算出した。術後の介護保険の費用介護度改善に伴う医療経費削減の有無を検討すると、手術により約50%の介護費削減が得られ、手術の年度ではマイナスになるが、治療翌年からは医療費全体としても削減効果が得られた。従って、iNPH治療のは行政的観点からも大きな意義を有すると考えられる。
その他のインパクト
平成23年2月6日山形県高畠町にてiNPHの市民公開講座を開催した。 新聞、ラジオ、テレビなどのマスコミを通して積極的にiNPHについての啓蒙活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
96件
原著論文(英文等)
99件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakakibara R et al.
Mechanism of bladder dysfunction in idiopathic normal pressure hydrocephalus
Neurourol Urodynam , 27 , 507-510  (2008)
原著論文2
Hiroji Miyake
Development of a Quick Reference Table for Setting Programmable Pressure Valves in Patients With Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus
Neurol Med Chir(Tokyo) , 48 (10) , 427-432  (2008)
原著論文3
Ishikawa M,Hashimoto M,Kuwana N et al.
Guidelines for management of idiopathic normal pressure hydrocephalus
Neurol Med Chir Tokyo , 48 , 1-23  (2008)
原著論文4
Ishii K,Kanda T,Harada A et al.
Clinical impact of the callosal angle in the diagnosis of idiopathic normal pressure hydrocephalus
Eur Radiol. , 18 (11) , 2678-2683  (2008)
原著論文5
Hiraoka K,Meguro K,Mori E
Prevalence of idiopathic normal-pressure hydrocephalus in the elderly population of a Japanese rural community
Neurol Med Chir Tokyo , 48 (5) , 97-200  (2008)
原著論文6
Nakajima M,Miyajima M,Arai H
Lumboperitoneal shunt placement using computed tomography and fluoroscopy in conscious patients.
J Neurosurg , 111 (3) , 618-622  (2009)
原著論文7
Yamashita F,Sasaki M,Takahashi S et al.
Detection of changes in cerebrospinal fluid space in idiopathic normal pressure hydrocephalus using voxel-based morphometry
Neuroradiology  (2009)
原著論文8
Norihiro Suzuki,Shinichi Yakahashi,Tomohisa Dembo et al.
Mechanism of the cerebrospinal fluid removal test responsible for improving the gait disturbance in patients with iNPH,as evaluated using the XeCT-CBF method.
Mov Disord , 24 , 424-425  (2009)
原著論文9
Ishikawa M et al.
Clinical significance of cerebrospinal fluid tap test and MRI/CT findings of tight high cinvexity in patients with possible idiopathic normal pressure hydrocephalus
Neurologia Medico-Chirurgica(Tokyo) , 50 (2) , 119-123  (2010)
原著論文10
Hashimoto M,Ishikawa M,et al.
Diagnosis of idiopathic normal pressure hydrocephalus is supported by MRI-based schema-a prospective cohort study
Cerebrospinal Fluid Research , 7 , 18-  (2010)
原著論文11
Yuichiro Inatomi,Toshiro Yonehara,Yoichiro Hashimoto et al.
Corellation between ventricular enlargement and white matter change
J Neurol Sci , 169 (1) , 12-17  (2008)
原著論文12
Oi.S
Hydrocephalus research update--controversies in definition and classification of hydrocephalus
Neurol Med Chir(Tokyo) , 50 (9) , 859-869  (2010)
原著論文13
Takaya M,Kazui H,Tokunaga H et al.
Global cerebral hypoperfusion in preclinical stage of idiopathic normal pressure hydrocephalus.
J Neurol Sci , 298 , 35-41  (2010)
原著論文14
Iseki C,Kawanami T,Nagasawa H et al.
Asymptomatic ventriculomegaly with features of idiopathic normal pressure hydrocephalus on MRI(AVIM) in the elderly:A prospective study in a Japanese population.
J Neurol Sci , 277 , 54-57  (2009)
原著論文15
Kato T,Sato H,Emi M et al.
Segmental copy number loss of SFMBT1 gene in elderly individuals with ventriculomegaly:A community-based study.
Intern Med  (2011)
原著論文16
Wyndaele JJ,Kovindha A,Madercbacher H et al.
Neurologic urinary incontinence.
Neurourol Urodyn. , 29 (1) , 159-164  (2010)
原著論文17
Yamashita F,Sasaki M,Takahashi S et al.
Detection of changes in cerebrospinal fluid space in idiopathic normal pressure hydrocephalus using voxel-based morphometry.
Neuroaradiology , 52 (5) , 381-386  (2010)
原著論文18
Hiraoka K et al.
Changes in the volumes of the brain and cerebral fluid spaces after shunt surgery in idiopathic normal-pressure hydrocephalus.
Journal of Neurological Sciences , 296 (1) , 7-12  (2010)
原著論文19
Hiraoka K et al.
Is the midbrain involved in the manifestation of gait disturbance in idiopathic normal-pressure hydrocephalus?
Journal of Neurology  (2011)
原著論文20
Matsuo K,Mizuno T,Yamada K et al.
Cerebral white matter damage in frontotemporal dementia assessed by diffusion tensor tractography
Neuroradiology , 50 , 605-611  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201024017Z