文献情報
文献番号
202516009A
報告書区分
総括
研究課題名
抗アミロイド抗体薬治療を踏まえた認知症の人の介護家族等への支援の実態調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25GB1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
冨本 秀和(国立大学法人 三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新井 哲明(筑波大学 医学医療系臨床医学域精神医学)
- 古和 久朋(神戸大学 大学院保健学研究科)
- 新堂 晃大(三重大学 大学院医学系研究科 神経病態内科学)
- 岩田 淳(東京都健康長寿医療センター)
- 武地 一(藤田医科大学 医学部)
- 粟田 主一(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
- 原 等子(新潟県立看護大学 看護学部看護学科)
- 矢吹 知之(認知症介護研究・研修仙台センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
11,472,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
抗アミロイド抗体薬は2023年に薬事承認されているが、問題点として高額薬剤であること、早期アルツハイマー病の正確な診断が必要となること、長期にわたって定期的な点滴による通院治療が必要となること、などが指摘されている。これらの問題点は受療者である患者・家族だけでは対応が困難であり、治療機会の均霑化を図るためには、治療に伴う課題を明確にして対策を行うことが喫緊に必要となっている。抗アミロイド抗体治療の導入にあたって認知症の人やその家族がリアルワールドで直面している課題を探り、効率的な支援を行うための行政提案を目指す。
研究方法
半構造化インタビューフォームを用いたスタッフに対するヒアリング、患者家族に対するアンケート調査(原則手渡し)を研究方法の2本柱として実施した。令和7年5月開催の実務担当者会議で半構造化インタビューフォームを作成し、6月開催の第1回班会議ではアンケート調査票原版の確定、10月開催の第2回班会議ではアンケート対象の範囲と調査方法について検討した。ヒアリングは令和7年10月下旬から令和8年1月初旬にかけて、研究代表者施設から4つの分担研究施設スタッフに対して個別に質問を行う形で実施した。アンケート調査は令和8年2月~3月の期間で、抗アミロイド抗体治療を実施している外来に受療中の患者・家族に調査票を手渡しし、各分担研究施設ごとに結果の解析を行った。筑波大学では軽度認知障害(MCI)デイケア、神戸大学では丹波市地域コホート、三重大学では脳の健康スクリーニング事業を実施しており、アンケート調査ではこれらの参加者も対象に含めた。
結果と考察
ヒアリング調査の結果、都市部の大規模医療施設においては治療フローが概ね標準化されている実態が明らかになった。抗アミロイド抗体治療は、かかりつけ医からもの忘れ外来に紹介される患者を抗アミロイド抗体治療担当医が診療する形で運用されており、とりわけ健康長寿医療センターでは疾患修飾療法(DMT)の専門外来が設けられていた。アミロイド沈着の検出は、都市部ではアミロイドPET検査が標準的であったが、丹波医療センターではアミロイドPET検査施設へのアクセスがないことから脳脊髄液検査を外来で実施し、一般外来で抗アミロイド抗体治療を行っていた。患者は初期導入施設での治療継続の希望が多く、調査時点ではフォローアップ施設への移行の準備段階にあった。フォローアップ施設との連携構築は都市部では進展がみられるが、丹波医療センターがある丹波医療圏域では専門医が同院に限られていることから、フォローアップ施設の確保に困難が予想されていた。一方、アンケート調査ではDMT受療者において治療法に対する高い関心度、受療動機として家族に迷惑をかけたくない思い、およそ半数の患者家族が治療に満足している現状、全般的に良好な治療法への理解(APOE遺伝子の理解を除く)、などが明らかになった。その一方で、丹波市地域コホート参加者や脳の健康スクリーニング事業参加者などの地域在住高齢者では、抗アミロイド抗体治療の認知度・情報提供の不足が著しく、治療の認知度向上に向けて取り組みが必要な状況が明らかとなった。治療中の患者・家族が気になる点としては、薬の効果、副作用、費用の3点が回答者の過半数から指摘され、通院の困難さ、治療期間の長さも半数近くで指摘された。課題解決に向けて想定される対策として、情報提供体制の充実、相談窓口の整備、患者家族への経済的支援、および地域連携体制の構築の必要性が挙げられた。
結論
今回の調査から、抗アミロイド抗体療法について全般的に良好な評価が得られているが、その一方で、今後に向けての解決すべき課題も明らかになった。それらの対策として治療のリスク・ベネフィットを理解し共同意思決定を支援するシステム、通院介助の支援や在宅治療薬の可能性、治療費負担の軽減のための高額療養費制度や自立支援補助制度などの案内強化、治療適応外となった患者家族への支援方法、APOE遺伝子検査の理解促進と啓発プログラム、などについて提言を行いたい。
公開日・更新日
公開日
2026-06-10
更新日
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