文献情報
文献番号
202516003A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の病態の進行に影響する重症化因子の特定と進行予防への効果的な介入方法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GB1003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
川勝 忍(公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 松田 圭悟(名古屋大学 大学院情報学研究科複雑系科学専攻)
- 小林 良太(山形大学 医学部)
- 鈴木 匡子(東北大学 大学院医学系研究科高次機能障害学)
- 林 博史(福島県立医科大学 保健科学部作業療法学科)
- 伊関 千書(東北大学病院 リハビリテーション部)
- 井原 一成(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科 大学院医学研究科社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,866,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
認知症では発症早期から進行期まで全経過を踏まえた対応が重要である。原因疾患として最も多いアルツハイマー型認知症(AD)の場合で10年から15年程度と経過が長いが、診断後の経過と関連する重症化因子は不明な点が多く、認知症の当事者や家族だけでなく医療者においても適切な対応ができない要因である。認知症の病態の進行には個人差があり病態も異なる。本研究では、認知症の種類、病期を考慮した認知症の病態の進行に影響する重症化因子と緩徐進行因子を、国内外の知見を踏まえ、実臨床から精神症状、神経心理学的症状、神経画像検査などの臨床検査所見と遺伝的危険因子を調査し、神経病理学的検索を含めた後方視的検討と、前方視的検討を組み合わせて縦断的変化を明らかにする。
研究方法
アルツハイマー型認知症(AD)を中心にMRI画像(VSRAD:Voxel-Based Specific Regional Analysis System For Alzheimer's Diseaseを含む)と認知機能を含む臨床症状を必須検討項目として縦断的検討を行い、MMSEの年間変化率を指標として認知症の進行度と関連する要因を検討した。
結果と考察
AD症例は1年間隔153例、2年間隔92例、3年以上の間隔87例について解析した。1年間隔の検討では、認知症の進行と関係する因子として、初回評価時のVSRADでの白質萎縮率、高い介護負担度、認知症の行動心理症状(BPSD)が強いことが関係していた。デイサービス利用の有無と進行度速度とは関連がなかった。アポリポ蛋白E(ApoE)のε4キャリアおよびε2キャリアの有無も進行度には関連がなかった。剖検例の後方視的な検索からADおよびDLB例で側頭葉内側部萎縮が高度な例では例外なくLATE病理が併存していたことから、FLAIR画像での側頭葉内側部の高信号や海馬硬化を伴う例を辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症疑い(suspected-LATE:sLATE)として前方視的に検討した。sLATEは非sLATEより高年齢、長期経過、認知機能低下、VSRADのすべて指標で萎縮が高度だったが介護負担度、BPSDでは有意差がなく、進行が必ずしも速いわけではなかった。ApoEのε4のキャリアの割合は、sLATE47%、非sLATE28%であり有意にsLATEで多かった。2年間の検討からも、初回のBPSDが強いこと、手段的日常生活動作(IADL)が低いこと、VSRADの全脳灰白質萎縮が強いことが進行速度と相関していた。3年間の変化では、進行速度と全脳灰白質萎縮率は正の相関を示した。レビー小体型認知症(DLB)36例の1年間の変化では、進行速度と関連した要因は明らかではなかったが、BPSDが介護負担度と強い相関がみられた。
結論
ADではBPSDが強いことが早い進行速度と関係していた。これは単にADのサブタイプの違いを見ている可能性もあるが、BPSDの治療や予防が進行抑制敵にも働くかどうかは今後の検討課題である。LATEがADに併発すると進行が速いとする既報告と異なり、認知症の重症度や海馬の萎縮が強いにもかかわらず、必ずしも進行速度そのものは速くないことが示された。
公開日・更新日
公開日
2026-06-10
更新日
-