MRIを用いた脳卒中発症・再発予防のためのより有効な降圧治療のエビデンスの創出

文献情報

文献番号
201021015A
報告書区分
総括
研究課題名
MRIを用いた脳卒中発症・再発予防のためのより有効な降圧治療のエビデンスの創出
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第1内科)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 聡(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 吉川 公彦(奈良県立医科大学 放射線科)
  • 伊藤 裕(慶応義塾大学 内科学)
  • 杉山 正悟(熊本大学大学院 循環器病態学)
  • 森本 剛(京都大学大学院医学研究科付属医学教育推進センター)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学)
  • 山野 繁(奈良県総合リハビリセンター)
  • 堀井 学(奈良県立医科大学第1内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではMRIにて虚血性の変化あるいは脳梗塞が認められた高血圧症例を対象に、ARBとACEIのいずれが脳梗塞の発症,再発抑効果が勝るかを検討するものである。
研究方法
症候性脳卒中既往歴の有無を問わず,65歳以上の高齢者高血圧症例(心房細動症例を除く)で、脳血管障害を疑われる症例にMRIを実施し、中央管理方式でARB群とACEI群に割り付けて2年間フォローし、新たな症候性脳卒中の発症・再発、MRIで診断した脳血管障害の悪化を複合一次エンドポイントとして、クラス効果としてのARBの方がACEIより優れていること実証する.必要症例数はⅠ群175例と計算された。このランダム群の他、ARBとACEIにランダムに割り付けしない観察研究650例の2アームを計画した。米国NI Hに登録した(NCTOO126516)。
結果と考察
ランダム化研究および観察研究合わせて症例の登録を終了した平成23年1月末までに、奈良医大第一内科とその関連病院833例、同神経内科29例、熊本大学循環器内科34例、慶応大学腎臓高血圧内科30例の計926例の登録をすることができた。内訳はランダム化研究395例でコホート研究は531例であった.ランダム化研究では,ARB群199例、ACEI群196例であり、平均年齢はARB群75.2±6.3歳、ACEI群76.1±5.9歳、血圧は, ARB群142.0±16.2/77.1±10.1mmHg、ACEI群140.4±15.1/76.2±10.2mmHgであり、両群間に差はなかった.その他の臨床背景においても両群間に差はなく,うまくランダム化できている。
脳梗塞の再発を臨床症状でなく全員MRIを施行して評価している臨床研究は報告がなく、本研究が明らかになれば、有意義な情報を提供できる。
結論
65歳以上の高血圧症例で症候性脳梗塞の有無にかかわらずMRIを施行し、症候性脳梗塞、無症候性脳梗塞、大脳白質病変のいずれかを有する症例をエントリーし、ARB群とACEI群に395例ランダム化割り付けし、581例観察研究に登録した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201021015B
報告書区分
総合
研究課題名
MRIを用いた脳卒中発症・再発予防のためのより有効な降圧治療のエビデンスの創出
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第1内科)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 聡(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 吉川 公彦(奈良県立医科大学 放射線医学)
  • 伊藤 裕(慶応義塾大学 内科学)
  • 杉山 正悟(熊本大学大学院 循環器病態学)
  • 森本 剛(京都大学大学院医学研究科付属医学教育推進センター)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 健康政策医学)
  • 山野 繁(奈良県総合リハビリセンター)
  • 堀井 学(奈良県立医科大学 第1内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではMRIにて虚血性の変化あるいは脳梗塞が認められた高血圧症例を対象に、ARBとACEIのいずれが脳梗塞の発症,再発抑効果が勝るかを検討するものである。
研究方法
症候性脳卒中既往歴の有無を問わず,65歳以上の高齢者高血圧症例(心房細動症例を除く)で、脳血管障害を疑われる症例にMRIを実施し、中央管理方式でARB群とACEI群に割り付けて2年間フォローし、新たな症候性脳卒中の発症・再発、MRIで診断した脳血管障害の悪化を複合一次エンドポイントとして、クラス効果としてのARBの方がACEIより優れていること実証する. 必要症例数は、1年間のMRIによる虚血性変化の進行度(年間15%)であること、ARBがACEIより10%以上優れていると仮定して、必要症例数はⅠ群175例と計算された。このランダム群の他、ARBとACEIにランダムに割り付けしない観察研究650例の2アームを計画した。米国NI H Clinical Trials gov.に登録した(NCTOO126516)。
結果と考察
ランダム化研究および観察研究合わせて症例の登録を終了した平成23年1月末までに、ランダム化研究では,ARB群199例、ACEI群196例が登録された、登録時平均年齢はARB群75.2±6.3歳、ACEI群76.1±5.9歳、血圧は, ARB群142.0±16.2/77.1±10.1mmHg、ACEI群140.4±15.1/76.2±10.2mmHgであり、両群間に差はなかった.その他の臨床背景においても両群間に差はなく,うまくランダム化できていた。
予定症例が登録されたので2年後にはMRIによる結果を得て、ARBとACEIによる脳梗塞再発予防効果に対する効果が明らかにされる。
結論
65歳以上の高血圧症例で症候性脳梗塞の有無にかかわらずMRIを施行し、症候性脳梗塞、無症候性脳梗塞、大脳白質病変のいずれかを有する症例をエントリーし、ARB群とACEI群にランダム化割り付けし395例の登録を完了した。こ他コホートとして531症例の登録した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
RAA系抑制薬は降圧効果以外に脳保護効果が想定されている.脳卒中再発予防に対するACEIやARBの効果は証明されているが,どちらが優位かは不明である.実験的には,2型アンジオテンシンII受容体(AT2)遺伝子欠損マウスに作成した脳梗塞サイズは野生型より大きかったことから,AT2の脳保護効果が証明されたことより,ACEIよりARBがより有効であることが期待される.本試験で臨床的に証明されると考えられる
臨床的観点からの成果
本試験の結果により,脳卒中二次予防での降圧治療の薬剤選択の知見が得られる.特に,本試験は特定の薬剤ではなく,ACEIとARBのクラス効果を検証するもので臨床的に非常に有意義である.本試験は平成23年1月末で目標症例の登録を達成し修了した.今後2年間のフォローアップ期間を経て,2年後の頭部MRIを撮像し,最終エントリー症例でのフォローアップ修了は平成25年1月を予定している.登録時の患者背景については,ACEI群,ARB群で年齢・性別・登録時血圧・脈拍数に有意な差を認めなかった.
ガイドライン等の開発
日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009』では,脳血管障害を有する症例での降圧薬としてCa拮抗薬,ARB,ACEI,利尿剤が推奨されている.一方,脳卒中合同ガイドライン委員会の『脳卒中治療ガイドライン2009』では,脳梗塞再発予防に少なくとも140/90mmHg未満の降圧を推奨しているが,特定のクラスの降圧薬の優位を示すエビデンスは十分でないとされている.本試験はクラス効果を比較しており,これらのガイドラインに影響を与える十分なエビデンスが得られると期待できる.
その他行政的観点からの成果
健康日本21では,平均血圧2mmHg低下で脳卒中死亡は約1万人,発症は3500人の減少が見込まれている.脳卒中予防には降圧が最も重要であるが, RAA系抑制薬は降圧効果以外に脳保護効果が想定されている.本試験により,今後の脳卒中予防政策の策定において,単に血圧低下を目標とするだけでなく,より脳保護効果のある薬剤を推奨することにより,その予防効果の増強が得られることが期待される.また,サブ解析としてMMSEによる認知機能のデータを収集しており,高齢者の認知症予防政策決定の一助となると考えられる.
その他のインパクト
本試験の結果は2年後のフォローアップ期間の後に解析が開始されるため未だ明らかではないが,本試験は,症例の組み入れも順調に経過して,各界から注目を浴びており,解析結果の発表に大きな期待がかかっている.平成23年4月28日号のMedical Tribune誌においても本試験の進行状況が取り上げられた.本試験の結果は学会・医学雑誌等で発表を予定している.また,本試験の結果は実際の臨床にすぐに応用できるものであり,医療従事者のみならず,一般国民にもマスコミ等により広く結果を紹介していく予定である.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-10-07

収支報告書

文献番号
201021015Z