大規模コホート共同研究による生活習慣病発症予防データベース構築とその高度利用に関する研究

文献情報

文献番号
201021011A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模コホート共同研究による生活習慣病発症予防データベース構築とその高度利用に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(滋賀医科大学 生活習慣病予防センター)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院 薬学研究科医薬開発構想寄附講座)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科社会環境医学講座公衆衛生学)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院環境医学)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 医学部内科学第二講座)
  • 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学 公衆衛生学講座)
  • 山田 美智子(財団法人放射線影響研究所 臨床疫学部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座)
  • 岡山 明(公益財団法人結核予防会 第一健康相談所)
  • 中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
37,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度の本班の研究目的は、1)総死亡データベースにおける喫煙・総死亡の関連分析、2)現存コホートの追跡研究、3)大規模データベースを用いた共同研究の3つである。
研究方法
1)の総死亡データベースを利用した喫煙・総死亡の関連分析では、40歳以上90歳未満の総計183,251人(男性:69,502人、女性:113,749人)を対象とし、多変量調整ハザード比を性・年齢階級別に推定した。またその結果を利用して、喫煙による過剰死亡割合(Population attributable fraction(以下PAF))および喫煙による年間過剰死亡者数を推定した。2)の現存コホートの継続研究では各コホートの追跡が実施されるとともに、研究成果の公表が行われた。3)データベース高度利用を目的とした共同研究では、前年度に引き続き5つの重点テーマ(血圧、喫煙、血清脂質、血糖・糖尿病、慢性腎臓病(CKD))を中心に研究が推進された。
結果と考察
1)では、全体のPAFは男性24.6%、女性6.0%で、喫煙による年間過剰死亡者数は121,854人(男性: 109,998人、女性: 11,856人)と推定された。性・年齢階級別のPAFは男性では60歳代の47.7%、女性では50歳代の12.2%が最高であった。高年齢である70歳代では男性15.4 % 、女性 8.0 %、80歳代では男性3.5% 、女性1.5 %と、単独コホート研究では通常不可能であった性・年齢階級別のPAF、特に高齢群でのPAF推定が可能となった。2)の現存コホートの継続研究では英文学術雑誌40編のエビデンス発信がなされた。3)の共同研究においては、総コレステロール値の第1五分位(<169mg/dl)に対する第5五分位(230mg/dl<=)の冠動脈疾患死亡HR(95%信頼区間)は若年男性で1.26(1.11-1.41)、高齢男性で2.79(1.10-7.07)とリスク上昇が認められたこと、心血管病死亡に対する多変量調整ハザード比は, eGFR90≦群に比べ60-89群1.1 (0.9-1.3), 45-59群1.4 (1.2-1.7), <45群2.0 (1.6-2.6) とeGFR低下に伴い有意に上昇することなどが示された。
結論
喫煙による年間過剰死亡者数の性・年齢階級別の推定がなされるとともに、日本の代表的なコホートからの継続的なエビデンス発信、大規模データベースを用いた共同研究からの成果創出が行われた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201021011B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模コホート共同研究による生活習慣病発症予防データベース構築とその高度利用に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(滋賀医科大学 生活習慣病予防センター)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院 薬学研究科医薬開発構想寄附講座)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科社会環境医学講座公衆衛生学)
  • 玉腰 暁子(愛知医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院環境医学)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 医学部内科学第二講座)
  • 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学 公衆衛生学講座)
  • 山田 美智子(財団法人放射線影響研究所 臨床研究部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座)
  • 岡山 明(公益財団法人結核予防会 第一健康相談所)
  • 中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)
  • 村上 義孝(滋賀医科大学 社会医学講座医療統計学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国を代表する13の生活習慣病コホート研究を統合して総死亡および循環器疾患死亡の統合データベースを構築するとともに、各種生活習慣病危険因子と死亡リスクとの関連を詳細に検討した。加えて現存コホート研究の継続・推進を実施、研究成果を発信することにより、生活習慣病予防に関するエビデンスを創出した。また構築された統合データベースの高度利用や保管方法について検討を行った。
研究方法
13コホートを統合した計18万人の総死亡データベースに加え、循環器疾患統合データベース(10コホート、計9万人)を構築し、スケールメリットを生かした性・年齢階級別の詳細な解析を進めた。現存コホート研究の継続・推進を3年間進め、各コホートからのエビデンス発信に務めた。統合データベースの高度利用においてはワークショップなどを通じ班員同士の討論を行うとともに、「EPOCH-JAPANにおける論文執筆等に関する覚え書き(以下論文執筆覚え書き)」を作成し、共同研究遂行のルールを定めた。
結果と考察
総死亡統合データベースからは喫煙による過剰死亡割合(Population attributable fraction(PAF))が年齢階級別に推定され、60歳代男性では40%を超えること、わが国の喫煙による年間過剰死亡者数は約12万人であることなどが推定された。循環器疾患死亡データベースからは、高血圧による循環器疾患リスク上昇は性・年齢に関わらず明らかであること、確立された4つの循環器危険因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)集積による循環器疾患死亡リスク上昇は顕著であること、CKDと循環器死亡の間には明確な関連があることなどが示された。現存コホートの継続研究では英文学術雑誌101編のエビデンス発信がなされた。統合データベースの高度利用に関しては、開催されたワークショップの内容、論文執筆覚え書きを資料として報告書に残した。
結論
3年間の研究班を通じ、総死亡データベースの解析、循環器疾患死亡データベースの構築と解析を実施するとともに、既存コホートからのエビデンス発信および共同研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国のコホート研究に基づく19万人、追跡人年約200万を有した総死亡データベースを用い、喫煙と総死亡との詳細な関連を検討し、学術的評価を得た(Preventive Medicine 2011:52;60-65)。現存コホート研究からは101編の欧文学術論文が発表されるとともに、循環器疾患死亡データベースを用いた共同研究が多く実施され、その中の1つが日本腎臓病学会会長賞を受賞した。
臨床的観点からの成果
喫煙による人口寄与危険割合(PAF)は男性24.6%、女性6.0%、その年間過剰死亡者数は121,854人(男性: 109,998人、女性: 11,856人)と推定された。性・年齢階級別PAFは男性60歳代の47.7%、女性50歳代の12.2%が最高であること、高齢者のPAFは70歳代男性15.4 % 、女性 8.0 %、80歳代男性3.5% 、女性1.5 %であった。単独コホートでは不可能な性・年齢階級別PAF、特に高齢群のPAFを算出した意義は大きい。
ガイドライン等の開発
本研究班の研究分担者などにより発表された論文は、本班分担研究者(京都大学・中山健夫教授)を通じて、医療技術評価総合研究医療情報サービス事業Minds(マインズ)に登録され、診療ガイドラインの基盤となるわが国発のエビデンスとして活用される機会が拡大された。(http://www.minds4.jcqhc.or.jp/cohort/)
その他行政的観点からの成果
喫煙による年間過剰死亡者数を性・年齢階級別に定量的に提示した本班の結果は、無煙社会実現を推進する上での重要な基礎資料になり得る。また各危険因子と循環器疾患死亡との関連の検討は大規模データベースによるものであり、その信頼性は高く、厚生労働行政の公衆衛生施策立案の基本データとなる。
その他のインパクト
平成21年度厚生労働科学研究費循環疾患等生活習慣病対策総合事業及び推進事業の啓発パンフレットに研究成果の一部として、喫煙と総死亡に関する話題が紹介された。また市民公開講座「自分でできる生活習慣病の予防」(平成23年2月19日 於:ピアザ淡海(滋賀県大津市)を開催し、生活習慣病予防の市民啓発がなされた。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
101件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
99件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murakami Y, Hozawa A, Okamura T, et al.
Relation of blood pressure and all-cause mortality in 180,000 Japanese participants: pooled analysis of 13 cohort studies.
Hypertension , 51 (6) , 1483-1491  (2008)
原著論文2
Kikuya M, Ohkubo T, Metoki H, et al.
Day-by-day variability of blood pressure and heart rate at home as a novel predictor of prognosis: the Ohasama study.
Hypertension , 52 (6) , 1045-1050  (2008)
原著論文3
Kokubo Y, Kamide K, Okamura T, et al.
Impact of high-normal blood pressure on the risk of cardiovascular disease in a Japanese urban cohort: the Suita study.
Hypertension , 52 (4) , 652-659  (2008)
原著論文4
Inoue R, Ohkubo T, Kikuya M, et al.
Stroke risk of blood pressure indices determined by home blood pressure measurement:The Ohasama Study.
Stroke , 40 (8) , 2859-2861  (2009)
原著論文5
Hara A, Ohkubo T, Kondo T, et al.
Detection of silent cerebrovascular lesions in individuals with 'masked' and 'white-coat' hypertension by home blood pressure measurement: the Ohasama study.
Journal of Hypertension , 27 (5) , 1049-1055  (2009)
原著論文6
Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, at el.
Low-density lipoprotein cholesterol and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort study: The Suita study.
Atherosclerosis , 203 (2) , 587-592  (2009)
原著論文7
Watanabe M, Okamura T, Kokubo Y, et al.
Elevated serum creatine kinase predicts first-ever myocardial infarction: a 12-year population-based cohort study in Japan, the Suita study
International Journal of Epidemiology , 38 (6) , 1571-1579  (2009)
原著論文8
Hozawa A, Kuriyama S, Kakizaki M, et al.
Attributable Risk Fraction Prehypertension on Cardiovascular Disease Mortality in the Japanese Population: The Ohsaki Study.
American Journal of Hypertension , 22 (3) , 267-272  (2009)
原著論文9
Naganuma T, Kuriyama S, Kakizaki M, et al.
Green tea consumption and hematologic malignancies in Japan: the Ohsaki study.
American Journal of Epidemiology , 170 (6) , 730-738  (2009)
原著論文10
Kasagi F, Yamada M, Sasaki H, Fujita S.
Biological score and mortality based on a 30- year mortality follow-up: Radiation Effects Research Foundation Adult Health Study.
Journals of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences , 64 (8) , 865-870  (2009)
原著論文11
Irie F, Iso H, Noda H, et al.
Associations between metabolic syndrome and mortality from cardiovascular disease in Japanese general population, findings on overweight and non-overweight individuals. Ibaraki Prefectural Health Study.
Circulation Journal , 73 (9) , 1635-1642  (2009)
原著論文12
Watanabe Y, Metoki H, Ohkubo T, et al.
Parental longevity and offspring's home blood Association of environmental tobacco smoke exposure with elevated home blood pressure: the Ohasama study.
Journal of Hypertension , 28 (2) , 272-277  (2010)
原著論文13
Seki M, Inoue R, Ohkubo T, et ai.
pressure in Japanese women: the Ohasama study.
Journal of Hypertension , 28 (9) , 1814-1820  (2010)
原著論文14
Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, et al.
Triglycerides and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort: the Suita study.
Atherosclerosis , 209 (1) , 290-294  (2010)
原著論文15
Turin TC, Kokubo Y, Murakami Y, et al.
Lifetime risk of stroke in Japan.
Stroke , 41 (7) , 1552-1554  (2010)
原著論文16
Hozawa A, Kuriyama S, Watanabe I, et al.
Participation in health check-ups and mortality using propensity score matched cohort analyses.
Preventive Medicine , 51 (5) , 397-402  (2010)
原著論文17
Hirokawa W, Nakamura K, Sakurai M, et al.
Mild metabolic abnormalities, abdominal obesity and the risk of cardiovascular diseases in middle-aged Japanese men.
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis , 17 (9) , 934-943  (2010)
原著論文18
Nakamura K, Sakurai M, Miura K, et al.
Homeostasis model assessment of insulin resistance and the risk of cardiovascular events in middle-aged non-diabetic Japanese men.
Diabetologia , 53 (9) , 1894-1902  (2010)
原著論文19
Noda H, Iso H, Irie F, Sairenchi T, et al.
Gender difference of association between low-density lipoprotein cholesterol concentrations and mortality from coronary heart disease among Japanese: The Ibaraki Prefectural Health Study.
Journal of Internal Medicine , 267 (6) , 576-587  (2010)
原著論文20
Murakami Y, Miura K, Okamura T, et al.
Population attributable numbers and fractions of deaths due to smoking: a pooled analysis of 180,000 Japanese.
Preventive Medicine , 52 (1) , 60-65  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,302,000円
(2)補助金確定額
45,302,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と、支出の「合計」の差額は利息である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-