文献情報
文献番号
202508017A
報告書区分
総括
研究課題名
特定健康診査における問診・検査項目の必要性・妥当性の検証、及び新たな項目の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FA1002
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
- 三浦 克之(国立大学法人滋賀医科大学 NCD疫学研究センター)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
- 荒木田 美香子(川崎市立看護短期大学 看護学部)
- 由田 克士(大阪公立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
- 田原 康玄(静岡社会健康医学大学院大学 社会健康医学研究科)
- 寳澤 篤(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
- 平田 匠(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 平田 あや(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
第4期の特定健診・特定保健指導が開始されたが、3期の内容と比べて、問診・検査項目の変更は最小限となっている。この制度は全保険者に実施を義務付けているためステークホルダーが多く、大きな変更を行うには十分なエビデンスと周知期間が必要である。そこで本研究では、次代の健康・保健に向けて、問診項目と検査項目の大幅な見直しが必要かどうかを検討する。研究目的を達成するために、現行項目の評価や新しい活用法をコホート研究や民間大規模データベース、NDBなどの解析を通じて行う。さらに新規健診・問診項目(研究としては実施されているが現行項目にはないもの)の検証を行う。本研究は、先行した3つの厚生労働科学研究の研究成果・資源を受け継いで実施されている。
研究方法
令和6年度は、現行の特定健診の問診項目、検査項目の内容、第4期での改訂の経緯を精査した上で、各研究者が関わっている地域コホート等で現行の健診・保健指導の有効性(発症予測能やリスク改善率)を検証した。また研究ベースで実施されている健診項目や問診項目のうち、特に有用な新規項目がないかを検証して自由な視点で今後の健診のあり方を議論した。また現行の項目の有用性について大規模データベースで解析できる体制を整えて、現行制度の費用対効果の検証を開始した。
令和7年度は、NDBや民間データベースを用いた解析で、現行の健診と問診の基本項目の組み合わせで新たな循環器病等のリスク評価が可能かどうかを検証した。さらに詳細健診項目の適用基準の意義と現状の課題を明らかにするとともに、今後の健診で導入が期待される新規健診・問診項目の意義についての検討を地域コホート研究で開始した。さらに特定保健指導の充実に向けた検討を行い、健診から保健指導を含む包括的な費用対効果の検証を実施した。
令和8年度は、前年度までの知見に基づいて、健診の基本項目の活用、詳細な健診項目の内容と適用対象、新規項目の追加、保健指導の階層化基準の修正や受診勧奨基準の設定を加味して、問診項目、検査項目の見直し案を提示し、ステークホルダーからの意見も収取し、新しい健診。保健指導モデル案を提示する。
令和7年度は、NDBや民間データベースを用いた解析で、現行の健診と問診の基本項目の組み合わせで新たな循環器病等のリスク評価が可能かどうかを検証した。さらに詳細健診項目の適用基準の意義と現状の課題を明らかにするとともに、今後の健診で導入が期待される新規健診・問診項目の意義についての検討を地域コホート研究で開始した。さらに特定保健指導の充実に向けた検討を行い、健診から保健指導を含む包括的な費用対効果の検証を実施した。
令和8年度は、前年度までの知見に基づいて、健診の基本項目の活用、詳細な健診項目の内容と適用対象、新規項目の追加、保健指導の階層化基準の修正や受診勧奨基準の設定を加味して、問診項目、検査項目の見直し案を提示し、ステークホルダーからの意見も収取し、新しい健診。保健指導モデル案を提示する。
結果と考察
1)現行の基本項目を用いて、脂肪肝指数(FLI)、推定sdLDL-Cが計算可能であり、これを用いて循環器病のハイリスク者の同定が可能であることを示した。またTG高値は循環器病だけでなく急性膵炎のリスクを顕著に高めること、問診の現在飲酒とγ-GTP 高値(50以上)を両方満たすと脳卒中発症のリスクが上昇することが示された。また肥満の有無に関係なく、高血圧かつ喫煙の脳卒中発症のリスクが最も高かった。
2)詳細項目である血清クレアチニン、貧血、心電図のうち眼底検査の実施率が特に低い。また心電図異常(ST-T変化など)、眼底所見、腎機能低下(eGFRで判定)は、いずれも血圧や血糖が基準値以内であっても循環器病のリスクが高い。eGFR低値の循環器病に対する人口寄与危険割合は大きくないが、腎臓疾患等もアウトカムと考えると測定意義が大きくなる。
3)新規項目として糖尿病の家族歴の聴取は発症リスクが高い者の発見につながる。また尿中Na/K比は、既存の検尿フローを活用して測定可能であり、血圧維持・改善の強力な指導ツールとなり得る。睡眠障害は循環器病のリスクであり、問診等を工夫して睡眠状態を把握することがリスク層別化に有効である。またNT-proBNPや高感度CRP、Lp(α)など、心負荷や炎症、動脈硬化を示す新規指標の各コホートでの測定状況を踏まえてリスク評価を開始した。
4) 縦断解析で、非肥満者でも、体重の微増や飲酒、食塩摂取が血圧上昇と関連しており、肥満の有無に関わらず高血圧等に適切に介入する対応が必要である。自治体でのウォーキングアプリの導入は進んでいるが、食事記録や健診データとの連携は限定的であり、現状ではこれらと専門職による人的支援との組み合わせが行動変容上有用である。
5) 35年間で設定した長期的なシミュレーションにより、特定健診・保健指導の費用対効果を評価したが、1 QALY(質調整生存年)を得るための費用は一般的な判断閾値である500万円を上回っており、現在の枠組みのままでは費用対効果が良いとは言い切れない可能性があった。アウトカムに直結する情報提供や受診勧奨の効果をモデルに組み込んでモデルの改良を進める。
2)詳細項目である血清クレアチニン、貧血、心電図のうち眼底検査の実施率が特に低い。また心電図異常(ST-T変化など)、眼底所見、腎機能低下(eGFRで判定)は、いずれも血圧や血糖が基準値以内であっても循環器病のリスクが高い。eGFR低値の循環器病に対する人口寄与危険割合は大きくないが、腎臓疾患等もアウトカムと考えると測定意義が大きくなる。
3)新規項目として糖尿病の家族歴の聴取は発症リスクが高い者の発見につながる。また尿中Na/K比は、既存の検尿フローを活用して測定可能であり、血圧維持・改善の強力な指導ツールとなり得る。睡眠障害は循環器病のリスクであり、問診等を工夫して睡眠状態を把握することがリスク層別化に有効である。またNT-proBNPや高感度CRP、Lp(α)など、心負荷や炎症、動脈硬化を示す新規指標の各コホートでの測定状況を踏まえてリスク評価を開始した。
4) 縦断解析で、非肥満者でも、体重の微増や飲酒、食塩摂取が血圧上昇と関連しており、肥満の有無に関わらず高血圧等に適切に介入する対応が必要である。自治体でのウォーキングアプリの導入は進んでいるが、食事記録や健診データとの連携は限定的であり、現状ではこれらと専門職による人的支援との組み合わせが行動変容上有用である。
5) 35年間で設定した長期的なシミュレーションにより、特定健診・保健指導の費用対効果を評価したが、1 QALY(質調整生存年)を得るための費用は一般的な判断閾値である500万円を上回っており、現在の枠組みのままでは費用対効果が良いとは言い切れない可能性があった。アウトカムに直結する情報提供や受診勧奨の効果をモデルに組み込んでモデルの改良を進める。
結論
本研究は、次の健診・保健指導制度の改訂に繋げるための研究であり、現行の健診・問診項目を最大限有効活用しながら、必要に応じて新しい指標を導入することも考えている。最終年度には将来の健診・保健指導制度のモデルを策定して、広く提言を行っていく予定である。
公開日・更新日
公開日
2026-09-04
更新日
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