糖尿病性合併症の評価法・管理法の確立

文献情報

文献番号
202508014A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性合併症の評価法・管理法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1021
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 英紀(愛知医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 良(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 姫野 龍仁(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 下田 博美(愛知医科大学 医学部)
  • 三浦 絵美梨(愛知医科大学 医学部内科学講座 糖尿病内科)
  • 加藤 誠(愛知医科大学 医学部 内科学講座 糖尿病内科)
  • 速水 智英(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 麻生 好正(獨協医科大学 内科学(内分泌代謝))
  • 出口 尚寿(鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 有村 愛子(冨田 愛子)(鹿児島大学 医学部)
  • 水上 浩哉(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 村上 千恵子(鈴木 千恵子)(弘前大学 医学部)
  • 折本 有貴(愛知医科大学 血管外科)
  • 三木 篤也(愛知医科大学 医学部)
  • 児玉 章朗(愛知医科大学 血管外科)
  • 天野 哲也(愛知医科大学 循環器内科)
  • 安藤 博彦(愛知医科大学 循環器内科)
  • 松尾 幸果(愛知医科大学 循環器内科)
  • 下田 昌弘(愛知医科大学 循環器内科)
  • 濵田 瑞綺(愛知医科大学 眼科 )
  • 瓶井 資弘(愛知医科大学 医学部)
  • 城島 輝雄(獨協医科大学 医学部 内科学(内分泌代謝))
  • 齋藤 昌大(獨協医科大学  内科(内分泌代謝))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,020,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は高血糖を特徴とする代謝異常症候群であるが、高血糖そのものが直接的に患者のQOLを低下させる頻度よりも、長い病歴の中で併発する各種合併症がQOLを低下させる頻度の方が高い。多様な合併症を発症することは、多分野の専門家による集学的医療を要することを意味するが、集学的医療の道筋が明示されておらず、現状では個々の症例に応じた弥縫策が展開されている。その結果、合併症全体を包括する予防のための管理指針は十分に確立・普及されていない。
一般的に三大合併症と称される高頻度の合併症、糖尿病性神経障害(DPN)・糖尿病網膜症(DR)・糖尿病性腎症のうち腎症以外の2つの合併症に対しては早期介入のための効果的なスクリーニングおよび診断法が十分に確立・普及しておらず、大血管合併症(MC)である虚血性心疾患、下肢閉塞性動脈疾患等に対しても同様である。ただ例外的に最近ようやく、糖尿病性腎症に対しては進展予防のための対策が確立され保険診療下での対策が進んでいる。糖尿病性腎症の管理指標として推定糸球体濾過率(eGFR)と尿中アルブミンの妥当性が証明されており、これらは容易に繰り返し実施できることより国内外で広く普及しつつある。
そこで本研究では、eGFRや尿中アルブミンのような簡易的で妥当性のある評価法の可能性をDPNおよびDRにおいて探索しつつ、管理上の課題を抽出し、解決策を検討し、効果的かつ継続的な管理法を確立することを目指した。
研究方法
統括研究「糖尿病性合併症予防のための包括的管理指針の策定」の元、各種の糖尿病性合併症の予防・管理指針を検討した。本指針に含まれる合併症としては、DPN、DR、糖尿病性腎症、MCとし、糖尿病学・病理学・脳神経学・循環器学・血管学・眼科学の専門家が連携できる研究班体制で実施する。なお、糖尿病性腎症については、国内外で十分なエビデンスの蓄積があり明確な診療指針も示されていることより、本研究では新たな検討は実施しなかった。
結果と考察
【結果】
DPNにおいては診断基準を策定し、公開に向けた出版手続き中である。
以下に最終的な診断基準を示す。
[糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準]
必須項目
以下の2項目を満たす
1. 糖尿病が存在する
2. 糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる

条件項目
以下のA、Bのいずれかを満たす場合、糖尿病性多発神経障害と診断する
A) 症候学的項目:以下のうち2項目以上を満たす
1.糖尿病性多発神経障害に基づくと考えられる自覚症状
2.両側アキレス腱反射の低下あるいは消失(膝立位で実施)
3.両側内踝振動覚低下(C128音叉にて10秒以下)

B) 電気生理学的項目:以下のうち2項目以上を満たす
1 .腓腹神経伝導速度の低下
2 .腓腹神経活動電位振幅の低下
3 .安静時の心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)<1.6%

 包括的な合併症に関する実態調査に関しては、日本糖尿病学会会員を対象とするアンケート調査を終了した

【考察】
本研究により簡便に評価できる項目を用いた明解なDPNの診断基準を策定できたが、その診断基準の臨床的有用性特に予後における重要性については今後の検討が必要である。また、患者の療養意欲を引き出すうえでは、診断のみならずDPNの重症度を判定する基準の策定も進めることが求められている。本研究で策定した診断基準が普及することで定量的データが常時蓄積されることが期待できることより、それらのデータと予後データを用いたより詳細な解析を実施することでDPNの重症度判定基準を作成することが可能であると考えている。
結論
DPNについては馬場分類の2度以上を診断することを目的とするDPNの診断基準を作成した。簡易NCS機器と心電計を用いることで高い診断能を有する診断基準を実現した。今後の運用の中で、その意義を確立することが肝要であり、また、詳細についての改訂作業が必要である。
DR/MCについては今後、実態調査を進めその結果を通して管理法の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

文献情報

文献番号
202508014B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病性合併症の評価法・管理法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1021
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 英紀(愛知医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 良(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 姫野 龍仁(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 下田 博美(愛知医科大学 医学部)
  • 三浦 絵美梨(愛知医科大学 医学部内科学講座 糖尿病内科)
  • 加藤 誠(愛知医科大学 医学部 内科学講座 糖尿病内科)
  • 速水 智英(愛知医科大学 医学部内科学講座糖尿病内科)
  • 麻生 好正(獨協医科大学 内科学(内分泌代謝))
  • 出口 尚寿(鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 有村 愛子(冨田 愛子)(鹿児島大学 医学部)
  • 水上 浩哉(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 村上 千恵子(鈴木 千恵子)(弘前大学 医学部)
  • 折本 有貴(愛知医科大学 血管外科)
  • 三木 篤也(愛知医科大学 医学部)
  • 児玉 章朗(愛知医科大学 血管外科)
  • 天野 哲也(愛知医科大学 循環器内科)
  • 安藤 博彦(愛知医科大学 循環器内科)
  • 松尾 幸果(愛知医科大学 循環器内科)
  • 下田 昌弘(愛知医科大学 循環器内科)
  • 濵田 瑞綺(愛知医科大学 眼科 )
  • 瓶井 資弘(愛知医科大学 医学部)
  • 城島 輝雄(獨協医科大学 医学部 内科学(内分泌代謝))
  • 齋藤 昌大(獨協医科大学  内科(内分泌代謝))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 糖尿病は高血糖を特徴とする代謝異常症候群であるが、高血糖そのものが直接的に患者のQOLを低下させる頻度よりも、長い病歴の中で併発する各種合併症がQOLを低下させる頻度の方が高い。多様な合併症を発症することは、多分野の専門家による集学的医療を要することを意味するが、集学的医療の道筋が明示されておらず、現状では個々の症例に応じた弥縫策が展開されている。
 一般的に三大合併症と称される高頻度の合併症、糖尿病性神経障害(DPN)・糖尿病網膜症(DR)・糖尿病性腎症のうち腎症以外の2つの合併症に対しては早期介入のための効果的なスクリーニングおよび診断法が十分に確立・普及しておらず、大血管合併症(MC)である虚血性心疾患、下肢閉塞性動脈疾患等に対しても同様である。ただ例外的に最近ようやく、糖尿病性腎症に対しては進展予防のための対策が確立され保険診療下での対策が進んでいる。糖尿病性腎症の管理指標として推定糸球体濾過率(eGFR)と尿中アルブミンの妥当性が証明されており、これらは容易に繰り返し実施できることより国内外で広く普及しつつある。
 そこで本研究では、簡易的で妥当性のある評価法の可能性をDPNおよびDRにおいて探索しつつ、管理上の課題を抽出し、解決策を検討し、効果的かつ継続的な管理法を確立することを目指した。
研究方法
統括研究「糖尿病性合併症予防のための包括的管理指針の策定」の元、各種の糖尿病性合併症の予防・管理指針を検討した。本指針に含まれる合併症としては、DPN、DR、糖尿病性腎症、MCとし、糖尿病学・病理学・脳神経学・循環器学・血管学・眼科学の専門家が連携できる研究班体制で実施した。なお、糖尿病性腎症については、国内外で十分なエビデンスの蓄積があり明確な診療指針も示されていることより、本研究では新たな検討は実施しなかった。
結果と考察
【結果】
DPNにおいては診断基準を策定し、公開に向けた出版手続き中である。
以下に最終的な診断基準を示す。
【糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準】
必須項目
以下の2項目を満たす
1. 糖尿病が存在する
2. 糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる

条件項目
以下のA、Bのいずれかを満たす場合、糖尿病性多発神経障害と診断する
A) 症候学的項目:以下のうち2項目以上を満たす
1.糖尿病性多発神経障害に基づくと考えられる自覚症状
2.両側アキレス腱反射の低下あるいは消失(膝立位で実施)
3.両側内踝振動覚低下(C128音叉にて10秒以下)

B) 電気生理学的項目:以下のうち2項目以上を満たす
1 .腓腹神経伝導速度の低下
2 .腓腹神経活動電位振幅の低下
3 .安静時の心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)<1.6%

 包括的な合併症に関する実態調査に関しては、日本糖尿病学会会員を対象とするアンケート調査を終了した。有効回答数は372で、医学部卒業後21年以上の医師が68.8%を占めた。学会認定の専門医資格を有する者は52.2%、勤務医は76.6%であった。回答者の90.1%が民間団体の配布している糖尿病連携手帳を活用していた。実際の他の診療科との併診の割合については、50%以上の患者で併診していると回答した者は、それぞれ循環器内科とは4.0%、血管外科/形成外科とは0.8%、眼科とは52.9%、腎臓内科とは5.1%であった。 

【考察】
 本研究により簡便に評価できる項目を用いた明解なDPNの診断基準を策定できたが、その診断基準の臨床的有用性特に予後における重要性については今後の検討が必要である。本研究で策定した診断基準が普及することで定量的データが常時蓄積されることが期待できることより、それらのデータと予後データを用いたより詳細な解析を実施することでDPNの重症度判定基準を作成することが可能であると考えている。
 糖尿病性合併症の包括的管理を目指し実施したアンケート調査からは、いくつかの問題点が再認識された。1つ目は、他の診療科との連携が不十分であることである。全糖尿病患者が対象である1-2年毎の眼科診療についても大きく併診率が損なわれており、治療医学に偏重していることが窺われた。2つ目にDPN以外の糖尿病性合併症を含めた合併症の包括的管理はまず診断面の欠落を補綴する段階であることが改めて認識された。アンケート調査の結果、80%以上の医師が評価に用いている脈波検査・頸動脈超音波検査でさえも、これらの検査に基づく予防介入効果を検証する論文が見当たらないことが確認された。
結論
 DPNについては馬場分類の2度以上を診断することを目的とするDPNの診断基準を作成した。今後の運用の中で、その意義を確立することが肝要である。
 DR/MCについては今後、実態調査の結果を受け、まず連携強化の政策を提言していきたい。

公開日・更新日

公開日
2026-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202508014C

収支報告書

文献番号
202508014Z