多彩な自然災害発災時における循環器病発症・再発予防に資する注意喚起ツールの開発

文献情報

文献番号
202508012A
報告書区分
総括
研究課題名
多彩な自然災害発災時における循環器病発症・再発予防に資する注意喚起ツールの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1019
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
辻田 賢一(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠岡 俊志(熊本大学病院 災害医療教育研究センター)
  • 前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 藤末 昂一郎(熊本大学 病院)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学循環器内科)
  • 甲斐 豊(阿蘇医療センター)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 中島 誠(熊本大学医学部附属病院脳血管先端医療寄附講座)
  • 板橋 亮(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
  • 山村 修(福井大学医学部 地域医療推進講座)
  • 植田 信策(石巻赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各災害に対応しうる災害時ガイドラインの改訂と、注意喚起が必要な情報の整理及び注意喚起に用いるツールの作成を行いこれらの活用を含む行政とも連携した医療提供体制の構築と啓発活動を提案する事である。各種災害時の外的要因による、循環器病発症の実態調査を実施することにより今後増加しうる多彩な災害に対応可能となる。また医療者教育、患者教育、災害時医療体制の整備に貢献できると考えられる。
研究方法
本研究班の最終目標である“災害時循環器病発症予防ガイドライン改訂”への着手と、多彩な災害発生時の循環器病の特徴の整理、及び注意喚起に用いるツールの作成を行った。前回2014年版のガイドライン策定以降、日本では震災のみならず豪雨災害・台風による災害が頻発し特に心不全増悪、急性冠症候群、VTE、ペースメーカー患者のトラブル等が社会的な問題となっている。今後、地球温暖化や全国的な高齢化により災害関連循環器イベントはさらに増加する可能性が高く、最新知見を反映した改訂が急務である。改訂までに、災害リスク・フェーズ(発災前・急性期・避難所生活期・生活再建期)に応じた災害時循環器疾患の予防・管理の行動指針案(手引き案)を統合し、研究班内レビューを経て項立てを作成した。さらに、本研究班によるこれまでの災害拠点病院アンケート調査結果や、既報をレビューし、災害時循環器病にフォーカスした注意喚起・啓発ポスターを作製した。ポスターの概要としては「行政・医療施設向け」と「市民向け」両面で使用できるデザインとした。

結果と考察
(結果)研究班内レビューを行った結果、改訂方針案は、下記となった。①科学的根拠に基づく「発症予防策」と「増悪防止策」の明確化 ②災害フェーズ別の推奨行動(医療者・行政・一般市民)を具体化③高齢者、多疾患合併症例、要介護、透析患者、妊娠中の心疾患患者など脆弱集団の対応を追記④避難所の循環器管理(血圧測定体制、服薬情報把握、生活環境整備)の標準化⑤ICT/AI 活用、ウェアラブルデータ利用の可能性を付記⑥医療行政との連携方針(地域循環器病対策協議会との連携、医療・福祉・防災部局の役割分担)を明確化また、多彩な自然災害に対して、循環器疾患の発症・再発を最小限に抑えるため「いつ・誰に・どの方法で注意喚起を行うか」を体系化した手引きを開発することを目的とした。さらに、2025年度に本研究班で作成した注意喚起・啓発ポスターは、医療関連施設や、行政機関へ配布し、実際に避難所にて掲示され、啓発に活用された。

(考察)阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震などの経験から、災害は急性ストレスによる急性冠症候群や脳卒中のみならず、長期避難生活に伴う心不全増悪、静脈血栓塞栓症、高血圧、不整脈など多様な循環器疾患の発症・増悪をもたらすことが明らかとなっている。本研究では、災害フェーズ別(発災前、急性期、避難所生活期、生活再建期)の視点を導入するとともに、医療者、行政、避難所運営者及び一般市民それぞれが取るべき行動を整理した。また、高齢者、多疾患併存患者、透析患者、などの脆弱集団への対応を重視し、現場で活用可能なチェックリストや啓発ポスターを作成したことは本研究の大きな成果である。特に、作成した啓発ポスターが実際の災害時避難所において活用されたことは、研究成果が学術的知見に留まらず、地域防災や健康危機管理の現場で実装可能であることを示している。また、災害対策本部や自治体、脳卒中・心臓病等総合支援センターとの連携体制構築が進みつつあることは、平時から災害時まで切れ目のない循環器医療提供体制の整備に資するものと考えられる。一方、本研究は既存の疫学研究やアンケート調査、専門家コンセンサスを基盤としており提案したチェックリストや啓発ツールの有効性については、今後、実災害における前向き評価や地域実装研究を通じた検証が必要である。今後は、日本循環器学会をはじめとする関連学会、行政機関、地域医療機関との連携をさらに強化し、災害種別や地域特性に応じた柔軟な循環器病予防対策を全国的に普及させることが期待される。





結論
2025年度は、本研究班の最終目標である災害時循環器病発症予防ガイドライン改訂に向けた基本方針を策定するとともに、高リスク患者への対応、避難所における循環器管理、行政・医療機関・市民の役割分担を踏まえた実践的な注意喚起ツールを開発した。本研究成果は、災害時循環器医療の標準化と地域特性に応じた柔軟な医療提供体制の構築に資するものであり、日本循環器学会によるガイドライン改訂や、自治体、脳卒中・心臓病等総合支援センターとの連携を通じて社会実装されることが期待される。今後は、これらのツールの有効性を実災害で検証し、災害関連循環器疾患の発症・重症化予防に向けた全国的な展開を進める必要がある。




公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

文献情報

文献番号
202508012B
報告書区分
総合
研究課題名
多彩な自然災害発災時における循環器病発症・再発予防に資する注意喚起ツールの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1019
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
辻田 賢一(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 笠岡 俊志(熊本大学病院 災害医療教育研究センター)
  • 前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 藤末 昂一郎(熊本大学 病院)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学循環器内科)
  • 甲斐 豊(阿蘇医療センター)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 中島 誠(熊本大学医学部附属病院脳血管先端医療寄附講座)
  • 板橋 亮(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
  • 山村 修(福井大学医学部 地域医療推進講座)
  • 植田 信策(石巻赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1995年阪神•淡路大震災以降、災害に関連して脳心血管疾患が発症、増悪することが医療従事者、行政に広く認識されるようになった。脳心血管系臓器はストレスの影響を受けやすく、しかも疾患の性質上緊急対応が必要になる事が多いが、発災直後の混乱期には救急医療体制の維持が難しく、また被災者も適切な医療機関の受診判断ができずに病状の増悪につながる。また気候変動に伴い、風水害等の被害の頻度、規模は増加傾向にあり、平常時から行政とも連携して各災害に応じた医療体制の整備や市民への啓発が必要である。しかし、現行の災害時ガイドラインは阪神淡路大震災、東日本大震災に基づいて作成され、主に地震対応となっている。そのことから、各災害に対応しうる災害時ガイドラインの改訂と、注意喚起が必要な情報の整理及び注意喚起に用いるツールの作成を行い、これらの活用を含む行政とも連携した医療提供体制の構築と啓発活動を提案する事を本研究の目的とした。
研究方法
 2023年度は、阪神・淡路、東日本、熊本の地震後や各地域で災害に関連した循環器病の発生状況を後向きに調査し、災害時等の外的要因による循環器病の実態を示す資料をまとめた。さらに、我が国における災害発生時の循環器病の発症状況を調査するためアンケート調査票を作成し、全国災害拠点病院に対し送付し、全国規模での調査を施行した。
 2024年度は、前年度に選定したアンケート調査項目を基に結果の解析・評価を行い、さらにその解析結果をまとめたハンドブックを作成し、全国の災害拠点病院、保健所、医師会へ送付した。
 2025年には、本研究班の最終目標である“災害時循環器病発症予防ガイドライン改訂”に着手した。また、本研究班によるこれまでの災害拠点病院アンケート調査結果や、既報をレビューし、災害時循環器病にフォーカスした注意喚起・啓発ポスターを作製し、全国全ての災害拠点病院、都道府県・災害医療対策課、脳卒中・心臓病等総合支援センターへ配布された。
結果と考察
(結果) 2023年度の結果として、熊本地震の循環器病に与える影響を改めて調査したことにより、地震による激震災害は急性心筋梗塞の発症を増加させ、特に発災直後、超急性期に多く、災害時の循環器病対策のフェーズによる対策の切り替えが重要である事が明らかになった。また、全国の災害拠点病院を対象に実施したアンケート調査により、東日本、胆振東部等の地震、7月豪雨等の水害発災時の情報の収集が可能となった。
 2024年度では、回収されたアンケート調査の結果から、それぞれの災害で発症する脳卒中・循環器病の種類も大きく異なること、その発症時期・フェーズも災害規模や種類、季節で差異が大きいこと、特に高齢者になるほど顕著に心不全が増加し、長期間にわたって発症すること等が判明した。
 2025年度には、研究班内レビューを行った結果、改訂方針案として、科学的根拠に基づく「発症予防策」と「増悪防止策」の明確化、災害フェーズ別の推奨行動(医療者・行政・一般市民)を具体化、等6項目が挙げられた。

(考察)2023年では、大規模な全国調査を実施したことで、災害の種類、規模により発症する脳卒中・循環器病の種類も大きく異なることを知り得たことは大変貴重であると考える。
 2024年では、アンケート調査の結果より災害そのものの特徴を把握し、災害時循環器病発症予測を災害ごとに行う必要があると考えられる。
 2025年では、多様化する自然災害では、災害種別ごとに異なるリスク要因を考慮した対策の必要性が高まっている。本研究では、3年間を通して災害時循環器病発症予防ガイドライン改訂に向けた基盤整備と、実践的な注意喚起ツールの開発を行ってきた。その中で、作成した啓発ポスターが実際の災害時避難所において活用されたことは、研究
成果が学術的知見に留まらず、地域防災や健康危機管理の現場で実装可能であることを示していると考えられる。
結論
本研究では、過去の災害経験や、豪雨、台風、猛暑など多様な自然災害における循環器病発症の実態を整理し、災害種別および災害フェーズごとの循環器病リスクの特徴を明らかにした。さらに、それらの知見を基盤として、災害
時循環器病発症の予防ガイドライン改訂にけた基本方針を策定するとともに、高リスク患者への対応、避難所における循環器管理、行政・医療機関・市民の役割分担を踏まえた実践的な注意喚起ツールを開発した。本研究成果は、災害時循環器医療の標準化と地域特性に応じた柔軟な医療提供体制の構築に資するものであり、日本循環器学会によるガイドライン改訂や、自治体、脳卒中・心臓病等総合支援センターとの連携を通じて社会実装されることが期待される。今後は、これらのツールの有効性を実災害で検証し、災害関連循環器疾患の発症・重症化予防に向けた全国的な展開を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202508012C

収支報告書

文献番号
202508012Z