文献情報
文献番号
202508007A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘルスケアICTツールを通じたPHRの利活用による行動変容促進モデル構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1007
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄大(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 糖尿病情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 玉浦 有紀(新潟県立大学 人間生活学部健康栄養学科)
- 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
- 徳渕 慎一郎(株式会社JMDC)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、厚生労働省はマイナポータルを通じて個人の健診情報等を提供するPHR(Personal Health Record)サービスを開始している。このサービスは直接的な経済的インセンティブを伴わないものの個人が自身の健康状態を把握することで健康行動に対する態度が変化し、行動変容を経て健康状態や医療アウトカムの改善につながることが期待されている。しかしながらPHRサービスの効果に関する学術的エビデンスは乏しく、サービス設計の指針となるモデルも確立されていない。PHRサービスは民間主導で様々な工夫がなされており、サービス内容の異質性が高い。民間医療保険と連携して個人が自身の健康状態等を改善すると保険料割引等のインセンティブが与えられるもの、PHRサービスの特定機能の利用にインセンティブを付与するものがある。多様なサービス内容を切り分け自発的効果のみについて論じることが困難である。本研究は本邦のPHRサービスを俯瞰するとともにPHRサービスの利活用に関わる要因の探究とPHRサービスの利活用(特に自発的効果)とアウトカム(態度、健康関連行動、健康状態、医療アウトカム、医療費)との関連の検討を行い、個々に最適なPHRサービスの提供について検討し、PHRサービスの利活用による行動変容促進モデルの構築を目指す。
研究方法
本研究はPHRサービスの全体像の俯瞰に関する研究、データに基づく行動変容効果の検証に関する研究、行動変容促進モデルの構築に関する研究の3つのテーマにわけ研究を推進した。今年度は厚生労働省との会議を2回、研究班員間で月1回以上の打ち合わせを行い議論を深めた。
結果と考察
PubMed、PsychInfo、CINAHLの3データベースから延べ121報の論文を抽出し重複を除いた88報を題名・抄録による一次スクリーニング対象とした。40報に対して本文スクリーニングを行い対象論文である12報を抽出した。本研究はPHRサービスの体系的整理、実データに基づく行動変容効果の多角的な検証、保健指導現場への社会実装に向けた促進モデル・ハンドブックの構築という3つのアプローチからPHR利活用による健康行動変容を包括的に検討した。
文献レビューからはPHRサービスの多様性が示される一方で非連動型(untethered)サービスの効果検証に関するエビデンスが依然として乏しいという課題が浮き彫りになった。本研究は民間企業(株式会社JMDCおよびライフログテクノロジー株式会社)の協力を得て大規模な実データを用いた量的エビデンスの蓄積に大きく貢献した。データ分析の結果、PHRの利活用は選択バイアスへの留意が必要であるものの日常的な健康行動(食事、運動、禁煙等)の定着や血圧・脂質といった健診値の統計学的に有意な改善に関連していることが示され、導入初期(1〜3ヶ月)における「自信(セルフ・エフィカシー)」の向上や長期利用者における多項目モニタリング・目標設定といった自己制御機能の活用が行動変容ステージの進展に寄与する可能性が明らかとなった。前年度までに構築された支援者視点の仮説モデルに今回の実データ分析結果を統合することで機能と支援タイミングに着目した行動変容促進モデルを精緻化した。さらに保健指導の現場で活用可能とするためプリシード・プロシードモデルを用いてアセスメント、実施、評価の観点から整理し、自治体や企業健保等の実務担当者向けの実践的なハンドブックとして結実させた。これらの成果は単にアプリを提供するだけでなく対象者の適性(ICTリテラシーや意欲等)に応じた人的支援や初期の動機づけ、定着期のフィードバックを組み合わせた効果的な運用の重要性を示している。本研究で作成したハンドブックは厚生労働省への共有やHPでの公開を通じて、今後の保健指導現場におけるPHRサービスの効果的な利活用および政策展開に向けた強固な実践的基盤となることが期待される。
文献レビューからはPHRサービスの多様性が示される一方で非連動型(untethered)サービスの効果検証に関するエビデンスが依然として乏しいという課題が浮き彫りになった。本研究は民間企業(株式会社JMDCおよびライフログテクノロジー株式会社)の協力を得て大規模な実データを用いた量的エビデンスの蓄積に大きく貢献した。データ分析の結果、PHRの利活用は選択バイアスへの留意が必要であるものの日常的な健康行動(食事、運動、禁煙等)の定着や血圧・脂質といった健診値の統計学的に有意な改善に関連していることが示され、導入初期(1〜3ヶ月)における「自信(セルフ・エフィカシー)」の向上や長期利用者における多項目モニタリング・目標設定といった自己制御機能の活用が行動変容ステージの進展に寄与する可能性が明らかとなった。前年度までに構築された支援者視点の仮説モデルに今回の実データ分析結果を統合することで機能と支援タイミングに着目した行動変容促進モデルを精緻化した。さらに保健指導の現場で活用可能とするためプリシード・プロシードモデルを用いてアセスメント、実施、評価の観点から整理し、自治体や企業健保等の実務担当者向けの実践的なハンドブックとして結実させた。これらの成果は単にアプリを提供するだけでなく対象者の適性(ICTリテラシーや意欲等)に応じた人的支援や初期の動機づけ、定着期のフィードバックを組み合わせた効果的な運用の重要性を示している。本研究で作成したハンドブックは厚生労働省への共有やHPでの公開を通じて、今後の保健指導現場におけるPHRサービスの効果的な利活用および政策展開に向けた強固な実践的基盤となることが期待される。
結論
本研究は本邦におけるPHRサービスの俯瞰的整理、実データに基づく量的・質的エビデンスの蓄積、PHR利活用による行動変容促進モデルの構築を行った。さらに保健指導現場で活用可能なハンドブックを作成した。
大規模データの検証からはPHRの利活用が自己制御能力やセルフ・エフィカシー、健康関連行動、健診値の改善と関連することが示された。ただし利用者の選択バイアスや改善幅の限定性を踏まえ今後は社会実装の中で効果検証をさらに進める必要がある。
PHRサービス利活用を通して行動変容につなげるには対象者の適性を見極めるとともに行動変容の動機づけに寄与するPHRの機能の利活用促進や行動目標の設定・長期にわたる望ましい行動の獲得・習慣化に向けた行動専門家による適時適切な支援を組み合わせることが重要かもしれない。健康行動の変容と習慣化がより効果的に促進されることが示唆された。
大規模データの検証からはPHRの利活用が自己制御能力やセルフ・エフィカシー、健康関連行動、健診値の改善と関連することが示された。ただし利用者の選択バイアスや改善幅の限定性を踏まえ今後は社会実装の中で効果検証をさらに進める必要がある。
PHRサービス利活用を通して行動変容につなげるには対象者の適性を見極めるとともに行動変容の動機づけに寄与するPHRの機能の利活用促進や行動目標の設定・長期にわたる望ましい行動の獲得・習慣化に向けた行動専門家による適時適切な支援を組み合わせることが重要かもしれない。健康行動の変容と習慣化がより効果的に促進されることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2026-08-27
更新日
-