健康づくり支援環境の効果的な整備施策および政策目標の設定に関する研究

文献情報

文献番号
201021001A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくり支援環境の効果的な整備施策および政策目標の設定に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
下光 輝一(東京医科大学 医学部公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部食生態学研究室)
  • 角田 透(杏林大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター 健康生活推進部)
  • 村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部栄養学科)
  • 岡田 真平(身体教育医学研究所)
  • 鎌田 真光(身体教育医学研究所うんなん)
  • 藤井 聡(京都大学大学院工学研究科)
  • 室町 泰徳(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
  • 中谷 友樹(立命館大学 文学部)
  • 井上 茂(東京医科大学 医学部公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康づくり支援環境の整備は生活習慣病対策の、特にポピュレーションアプローチの観点から重要と考えられる。本年度(最終年度)は、身体活動、栄養では地域介入研究の介入後評価を、喫煙では喫煙対策の実施状況を自治体自らが評価する自己点検票の有用性の検討を、飲酒では都道府県レベルの飲酒量の検討を行い、環境整備および政策目標に関する提言をまとめた。
研究方法
身体活動では島根県雲南市において地域を介入単位としたクラスター無作為化対照試験を行い、その効果(介入への気づき、行動変容意図等の心理的な変化、および身体活動量の変化)をポピュレーションレベルで評価した。栄養では埼玉県坂戸市において環境に視点を置いた地域介入を実施して、事後評価を行った。喫煙では大阪府および府内43市町村を対象に自己点検票を用いた調査を行いその有用性を検討した。飲酒では都道府県別のアルコール消費量のデータを基に各種要因との相関を検討した。その他、生活習慣の地域差、地理情報システムの活用、都市計画、都市交通といった関連分野の検討を行った。最終的に、これらの結果を整理して、健康づくり支援環境の整備および政策目標のあり方をまとめた。
結果と考察
雲南市の介入研究では、評価対象者6000人(地域住民より無作為に抽出)のうち、ベースライン評価は4414人(73.6%)、ベースラインと介入後ともに評価できた者は3469人(58.7%)であった。介入地域と対照地域の住民の間で、介入への気づき、知識、信念、行動変容意図等の心理指標に有意な差が認められた。しかし、身体活動量に有意な差は見られなかった。喫煙は、「受動喫煙の防止」「禁煙支援・治療」「喫煙防止」「情報提供・教育啓発」「たばこ対策の推進体制」の5つの領域の評価を行った。例えば、「受動喫煙の防止」では、官公庁の全ての施設において建物内禁煙以上の規制を実施している市町村の割合は約40%、学校では約70%であった。一覧表にすることによって各自治体の対策推進状況が概観でき、環境整備対策の推進に資するものと考えられた。その他、栄養、飲酒、関連領域(都市計画、都市交通)等で有用な情報が得られた。これらを基に提言をまとめた(総合報告書Web概要版参照)。
結論
身体活動環境、食環境、喫煙対策環境、飲酒対策環境に関する検討を行い、環境整備対策および政策目標設定に関する提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

文献情報

文献番号
201021001B
報告書区分
総合
研究課題名
健康づくり支援環境の効果的な整備施策および政策目標の設定に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
下光 輝一(東京医科大学 医学部公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部食生態学研究室)
  • 角田 透(杏林大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 中村 正和(大阪府立健康科学センター健康生活推進部)
  • 村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部栄養学科)
  • 岡田 真平(身体教育医学研究所)
  • 鎌田 真光(身体教育医学研究所うんなん)
  • 藤井 聡(京都大学大学院工学研究科)
  • 室町 泰徳(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
  • 中谷 友樹(立命館大学 文学部)
  • 井上 茂(東京医科大学 医学部公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人々の行動変容を促進する健康づくり支援環境の整備は、生活習慣病対策上の重要課題である。本研究では身体活動、栄養、喫煙、飲酒の4領域における健康づくり支援環境に関する研究を行い、整備施策および政策目標に関する提言をまとめた。
研究方法
身体活動では島根県雲南市、栄養では埼玉県坂戸市において環境に視点を置いた地域介入研究を実施した。喫煙では喫煙対策の実施状況を自治体自らが評価する自己点検票を開発してその有用性を検討した。飲酒では都道府県レベルの飲酒量の検討を行った。その他、生活習慣の地域差、地理情報システムの活用、都市計画、都市交通といった関連分野の検討を行った。最終的に、これらの結果を整理して、今後の健康づくり支援環境の整備および政策目標のあり方をまとめた。
結果と考察
結果として、提言の内容を概説する。提言は身体活動と喫煙分野を中心にまとめることができた。身体活動では、環境整備の推進にあたり他分野との「協働」の重要性が指摘された。パートナーとしては都市計画、交通計画、教育、経済などが、協働する事業としては都市計画マスタープラン、中心市街地活性化、セーフコミュニティ、モビリティ・マネジメント、自転車利用、交通計画、総合型地域スポーツクラブ、ソーシャルマーケッティング等があげられた。これらとの協働によって環境整備が進むものと考えられる。また、環境を考慮した保健指導や、地域住民による環境評価などが早期に取り組める事業として上げられた。政策目標は、実現性の高い目標項目と、重要性が示唆されるが具体化に向けてさらに検討が必要な目標項目に分けて提示した。喫煙対策環境では今後の重要課題としてたばこ事業法の改廃 、たばこ税の大幅引き上げの実現、屋内全面禁煙を義務付ける法規制の強化、禁煙支援・治療にかかわる環境整備、国・自治体レベルでの環境整備のモニタリングを指摘した。本研究班において、対策の進行状況を評価する自己点検票(評価項目:受動喫煙の防止、禁煙支援・治療、喫煙防止、情報提供・教育啓発、たばこ対策の推進体制)を提示した。これを全国的な共通手法として、環境評価を行うことによって環境改善が進むことが期待される。また、政策目標の設定につながることが期待できる。
結論
身体活動環境、食環境、喫煙対策環境、飲酒対策環境に関する検討を行い、環境整備対策および政策目標設定に関する提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康づくり環境に関する研究は海外において急速に増加しているが、日本における研究は少なかった。しかし近年、日本でも増加傾向にあり、本研究班の成果が先駆けとなってきた。「生活環境」は、日本と欧米では大きく異なり、日本独自の知見が蓄積されつつあることは重要な成果である。海外においても日本の知見が欧米のそれとどのように異なるのか(同様なのか)について関心がもたれており、論文、国際学会シンポジウムなどで成果が発信されている。
臨床的観点からの成果
本研究は生活習慣病の予防を社会・環境面からとらえようとするもので、病院等で行われている生活習慣病の臨床に直接関係するものではない。しかし、生活習慣や健康に「地域環境」が関係していることを広く知らしめることは極めて重要である。すなわち、患者の生活環境に注意を向けることによって臨床場面における生活習慣指導の質が改善し、患者の健康行動に関する理解が深まると考えられる。本研究はそのような理解を深めることに貢献したものと考える。
ガイドライン等の開発
本研究は新規性の高いもので、現在までのところ健康づくり支援環境について言及したガイドライン等の文書は作成されていない。しかし、海外、例えば米国の健康づくり施策(Healthy People 2020等)では健康づくり支援環境に関する言及がみられる。本研究班では環境整備に関する提言をまとめており、今後、本邦でのガイドラインにおいても、参考にされるものと期待できる。
その他行政的観点からの成果
研究成果として、健康づくり支援環境の整備施策および政策目標に関する提言をまとめた。環境整備については現在のところ、参考となる研究、文書がきわめて少ないことより、環境整備対策に関する施策等(例えば、健康日本21の次期健康づくり施策の立案、国民健康・栄養調査の実施等)において貴重な資料になる。また、研究組織には政策提言を行っている研究者が多く、今後、本研究班の成果が還元されるものと期待できる。
その他のインパクト
学会シンポジウム(日本学術会議臨床医学委員会・第68回日本公衆衛生学会共催シンポジウム、第69回日本公衆衛生学会大会メインシンポジウム、日本睡眠学会第35回定期学術集会、第64回日本体力医学会など多数)、第65回日本体力医学会大会市民公開シンポジウム等において積極的に研究成果を公開してきた。また一般臨床医を対象とした医師会の講習会(横浜市医師会、岐阜県医師会、宮城県医師会など)でも成果を公表してきた。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
51件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
119件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamada M, Kitayuguchi J, Inoue S, et al
Environmental correlates of physical activity in driving and non-driving rural Japanese women
Prev Med , 49 (6) , 490-496  (2009)
10.1016/j.ypmed.2009.09.014
原著論文2
Ishii K, Inoue S, Shimomitsu T, et al
Socioemographic variations in perceptions of barriers to exersise among Japanese adults
J Epidemiol , 19 , 161-168  (2009)
10.2188/jea.JE20080094
原著論文3
Inoue S, Ohya Y, Shimomitsu T, et al
Association between Perceived Neighborhood Environment and Walking among Adults in 4 Cities in Japan
J Epidemiol , 20 (4) , 277-286  (2010)
10.2188/jea.JE20090120
原著論文4
Inoue S, Kamada M, Shimomitsu T, et al
Characteristics of Accelerometry Respondents to a Mail-Based Surveillance Study
J Epidemiol , 20 (6) , 446-452  (2010)
10.2188/jea.JE20100062
原著論文5
石井香織, 井上茂, 下光輝一, 他
日本人成人における健康増進に寄与する推奨身体活動の充足に関連する自宅近隣の環境要因
日本健康教育学会誌 , 18 (2) , 115-125  (2010)
原著論文6
石井香織, 井上茂, 下光輝一, 他
日本人成人における活動的な通勤手段に関連する環境要因
体力科学 , 59 (2) , 215-224  (2010)
原著論文7
Inoue S, Kamada M, Shimomitsu T, et al
Socio-demographic determinants of  pedometer-determined physical activity among Japanese adults
Am J Prev Med , 40 (5) , 566-571  (2011)
10.1016/j.amepre.2010.12.023
原著論文8
Liao Y, Inoue S, Shimomitsu T, et al
Perceived environmental factors associated with physical activity among normal-weight and overweight Japanese men
Int J Environ Res Public Health , 8 (4) , 931-943  (2011)
10.3390/ijerph8040931
原著論文9
岡田真平, 井上茂, 下光輝一, 他
チェックリスト方式による身体活動環境評価の有用性―長野県東御市の行政職員による環境評価―
運動疫学研究 , 13 (2) , 137-145  (2011)
原著論文10
Harada K, Inoue S, Shimomitsu T, et al
Strength Training Behavior and Perceived Environment among Japanese Older Adults
J Aging Phys Act , 19 (3) , 262-272  (2011)
原著論文11
Inoue S, Yoshiike N, Shimomitsu T, et al
Time trends for step-determined physical activity among Japanese adults
Med Sci Sports Exerc , 43 (10) , 1913-1919  (2011)
10.1249/MSS.0b013e31821a5225
原著論文12
Kamada M, Kitayuguchi J, Shiwaku K, et al
Differences in association of walking for recreation and for transport with maximum walking speed in an elderly Japanese community population
J Phys Act Health , 8 (6) , 841-847  (2011)
原著論文13
Liao Y, Harada K, Shibata A, et al
Joint associations of physical activity and screen time with overweight among Japanese adults
Int J Behav Nutr Phys Act , 8 , 131-  (2011)
10.1186/1479-5868-8-131
原著論文14
Inoue S, Ohya Y, Odagiri Y, et al
Perceived neighborhood environment and walking for specific purposes among elderly Japanese
J Epidemiol , 21 (6) , 481-490  (2011)
10.2188/jea.JE20110044
原著論文15
Liao Y, Inoue S, Shimomitsu T, et al
Association of self-reported physical activity patterns and socio-demographic factors among normal-weight and overweight Japanese men
BMC Public Health , 12 , 278-  (2012)
10.1186/1471-2458-12-278
原著論文16
Inoue S, Ohya Y, Shimomitsu T, et al
Step-defined physical activity and cardiovascular risk among middle-aged Japanese: the National Health and Nutrition Survey of Japan 2006
J Phys Act Health , 9 , 1117-1124  (2012)
原著論文17
Kamada M, Kitayuguchi J, Inoue S, et al
A community-wide campaign to promote physical activity in middle-aged and elderly people: a cluster randomized controlled trial
Int J Behav Nutr Phys Act , 10 , 44-  (2013)
10.1186/1479-5868-10-44
原著論文18
Sugiyama T, Inoue S, Cerin E, et al
Walkable area within which destinations matter: differences between Australian and Japanese cities
Asia-Pacific J Public Health (in press)  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021001Z