成人がん患者と小児がん患者の家族に対する望ましい心理社会的支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201020076A
報告書区分
総括
研究課題名
成人がん患者と小児がん患者の家族に対する望ましい心理社会的支援のあり方に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・若手-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究科人間行動学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽記(大阪大学大学院 医学系研究科生体機能補完医学講座)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科健康科学・看護学専攻成人看護学/緩和ケア看護学分野)
  • 盛武 浩(宮崎大学 医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 尾形 明子(宮崎大学 教育文化学部)
  • 太田 秀明(大阪大学大学院 医学系研究科小児発達医学)
  • 天野 功二(聖隷三方原病院 臨床検査科)
  • 奥山 徹(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,296,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者とその家族への望ましい心理社会的支援のあり方を明確にし、支援ツールを作成する。
研究方法
がん患者ならびに家族や遺族に参加同意、各施設倫理委員会の承認を得て質問紙・面接調査、分析を行った。
結果と考察
1) 調査結果をもとに、余命告知の基礎知識、告知の有無に伴うメリットとデメリット、告知方針決定後の注意点などを含んだ冊子を作成した。
2)-1)遺族から得られた積極的治療中止の意思決定をした時の後悔と現在の後悔の内容は、共通のものと、各時点で独自のものが存在することが明らかになった。
2)-2)療養場所の変更ケアガイド案を作成し、がん看護専門看護師から、項目の表現および内容は概ねよいが、看護教育の現場では実施可能性に問題があるとの評価を得た。
3) 終末期がん患者の家族が療養生活で大切にするものは、全ての医療者が自覚し、配慮すべき9領域と家族が希望すれば支援すべき3領域が明らかになり、日本の家族ケアの質の評価指標として使用可能であると考えられる。
4)-1) 乳癌患者の夫の問題回避的態度は、時間を経てもなお表れることが明らかになった。夫の回避的態度に最も影響している要因は、夫が主観的に感じる妻の問題回避的態度の強さであった。
4)-2) 膵臓癌患者とその家族の心理社会的問題は、「再発・転移・今後の症状への不安」と「今後の過ごし方」に整理されると考えられた。
5)骨髄移植患者の同胞ドナーには、移植前後にネガティブな心理的影響が生じていた。親はドナーに十分配慮できない場合も多く、心理的苦痛が見過ごされる可能性があるため、医療者のさらなる配慮や親を通じた間接的な支援が必要である。
6) 小児がん患児の遺族から共通してあげられた困難および支援は、今後患児の終末期における家族支援の指針を検討する際に中心的な領域となる可能性が高い。
7)小児がん患者の母親の再発不安は、子どもや家族にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、再発不安が高まることで子どもの身体症状に注目し、それをネガティブに解釈する悪循環も推測された。
8)小児がん患者の母親は、治療終了後も患児の身体的状態、生活上の問題が重要になることが示唆され、母親に対する多岐にわたる問題に対処するための心理教育が必要であろう。
結論
がん患者の家族や遺族から得た詳細な資料から、患者-家族を包括する支援の冊子、webページ、報告書を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201020076B
報告書区分
総合
研究課題名
成人がん患者と小児がん患者の家族に対する望ましい心理社会的支援のあり方に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・若手-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター/大学院医学系研究科生体機能補完医学講座/人間科学研究科人間行動学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽記(大阪大学大学院 医学系研究科 生体機能補完医学講座)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻成人看護学/緩和ケア看護学分野)
  • 盛武 浩(宮崎大学 医学部 生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 尾形 明子(宮崎大学 教育文化学部)
  • 太田 秀明(大阪大学大学院 医学系研究科 小児発達医学)
  • 天野 功二(聖隷三方原病院 臨床検査科)
  • 奥山 徹(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者とその家族に対する望ましい心理社会的支援のあり方を明確にし、支援ツールを作成する。
研究方法
がん患者とその家族/遺族や医療従事者を対象に、参加同意ならびに各施設倫理委員会の承認を得て質問紙や面接調査を行った。
結果と考察
1)余命告知の基礎知識、告知の有無に伴うメリットとデメリット、告知方針決定後の注意点等を含んだ冊子を作成した。今後有用性を検討する。
2)-1)家族における積極的治療中止の意思決定時の後悔と現在の後悔の内容は、共通のものと各時点で独自のものが存在した。
2)-2)調査から得られた「療養場所移行期に家族が求めているケア」の内容からケアガイド案を作成し、がん看護専門看護師のスーパーバイズを受けた。
3)我が国の終末期がん患者の家族が療養生活で大切にするものは、全ての医療者が自覚し配慮すべき9領域と、家族が希望すれば支援すべき3領域が明らかになった。
4)-1)乳癌患者において、子どもの変化が患者(母親)にネガティブとポジティブ両方の影響を与えていることがわかった。
4)-2)乳癌患者の夫の問題回避的態度は、時間を経ても表れることや夫が主観的に感じる妻の回避的態度の強さが最も影響していることが明らかになった。
4)-3)膵臓癌患者とその家族の心理社会的問題は、「再発・転移・今後の症状への不安」と「今後の過ごし方」に整理されると考えられた。
4)-4)がん医療に関わる心理職に求められる支援は、他職種と協働しつつ専門性を活かす事であった。
5)骨髄移植患者の同胞ドナーには、移植前後にネガティブな心理的影響が生じていたが、親はドナーに十分配慮できない場合も多く、医療者の更なる配慮や支援が必要である。
6)小児がん患児の終末期において、効率的な家族支援システムの確立のための基礎的資料が得られた。
7)小児がん患者の母親の再発不安の関連要因が明らかになり、不安によって母親の医療機関の利用行動や養育行動が変化していた。
8)小児がん患者の母親の心配や不安の内容が明らかになり、母親に対する問題対処スキル向上のための支援が必要であろう。
9)小児がん患者の主介護者に対する問題解決療法の実施について、実施可能性の高さが示唆された。
結論
結果をもとに、がん患者とその家族の支援のためのwebサイトや、医療従事者を対象とした患者と家族に接する際に知っておいてほしい事をまとめた報告書を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020076C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで、がん患者と家族の両者を含めたQOLと意思決定に関する実証的な研究はほとんど行われていなかった。本研究では、全国の施設やネット調査において、がん患者およびその家族や遺族、同胞ドナー、その他全国の男女計数千名を対象に大規模な質問紙調査、面接調査を行った。その結果、がん患者と家族が求めているケアの要素を抽出し、意志決定プロセスの大枠を把握することによって、両者のQOLを向上させる心理社会的支援の指針を得ることができた。
臨床的観点からの成果
臨床的観点から下記の事項を記述して下さい。    
(1) がん医療における患者の家族関与の実態や、家族が不安や心配を感じている内容、求めているケア、重要な意志決定場面での家族の心理状態の特徴が、一部ではあるが明らかになった。(2) 成果はがん医療に携わる者を対象に作成する報告書にまとめられ、医療を提供する側の者が予め患者の家族の状況や心境を理解するための資料となる。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
本調査によって患者家族からQOLの実態や意志決定プロセス、求めるケアについての情報を得た。この情報をもとに、がん患者とその家族への意志決定場面での望ましい支援、求められているケアの内容や、適切なコミュニケーション方法のリソースを作成し、がん医療における患者-家族を包括する支援体制のあり方を提示した。医療従事者のスキルアップや医療従事者と患者家族との関係改善,ひいては,望ましい医療の提供やわが国の医療体制の充実に貢献すると期待する。
その他のインパクト
余命告知の基礎知識や有無に伴うメリットとデメリットに関するリーフレットを作成した。今後臨床的に有効な使用方法について検討する。乳癌患者の配偶者を対象としたホームページを作成し、患者(妻)の状態と夫の役割やサポート方法についての情報発信を行った。がん医療に携わる医療者を対象とした「患者とご家族に接する際に知っておいて欲しいこと」をまとめた報告書を作成した。

発表件数

原著論文(和文)
39件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
(1)乳癌患者の配偶者を対象としたホームページを作成し、情報発信を行った。(2)がん医療に携わる医療者を対象とした「患者とご家族に接する際に知っておいて欲しいこと」をまとめた報告書を作成した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshida S, Hirai K, et al
Experience of families of Japanese patients with cancer for prognostic disclosure
Journal of Pain and Symptom Management , 41 (3) , 594-603  (2011)
原著論文2
吉田沙蘭・天野功二・森田達也・尾形明子・平井啓
難治性小児がん患児の家族が経験する困難の探索
小児がん , 47 (1) , 91-97  (2010)
原著論文3
Hirai K, et al
Self-efficacy, psychological adjustment and decisional-balance regarding decision making for outpatient chemotherapy in Japanese advanced lung cancer
Psychology and Health , 24 (2) , 149-160  (2009)
原著論文4
Shiozaki M, Hirai K,  Morita T, et al
Measuring the regret of bereaved family members regarding the decision to admit cancer patients to palliative care units
Psychooncology , 17 , 926-931  (2008)
原著論文5
Hirai K, Uchitomi Y, et al
Discrimination between worry and anxiety among cancer patients: development of a brief cancer-related worry inventory
Psychooncology , 17 , 1172-1179  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020076Z