再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
201020059A
報告書区分
総括
研究課題名
再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森 慎一郎(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 内田 直之(国家公務員共済組合 虎の門病院 血液内科)
  • 中尾 眞二(金沢大学 医薬保健研究域医学系 細胞移植学)
  • 山本 弘史(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 薬剤部)
  • 山下 卓也(東京都立駒込病院 血液内科)
  • 河野 嘉文(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野小児科)
  • 山口 博樹(日本医科大学医学部 血液内科学)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
  • 松元 加奈(同志社女子大学薬学部医療薬学科 臨床薬剤学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
純粋な薬物療法である造血幹細胞移植においては、薬剤を適正に使用する事が治療の成功の鍵を握っている。しかし、造血幹細胞移植に用いられる、移植前処置薬(抗がん剤)、免疫抑制剤等の薬剤については、至適用法、用量に関するエビデンスが不足しており、薬剤添付文書の記載も不十分なため、治療現場では医師の経験に基づく微妙なさじ加減が行われているのが現状である。そこで、これらの薬剤の適正使用方法に関するわが国固有のエビデンスを確立し、造血幹細胞移植療法の治療成績を飛躍的に向上させる事を目的とした。
研究方法
短期間で多くの情報を得るため、薬理学的エンドポイントを用いた、多数の臨床第二相薬力学・薬物動態試験を計画、実施した。
結果と考察
二種類の免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)について、臨床試験を実施し、静注製剤から経口製剤に切り替える際の最適な投与量を決定した。シクロスポリンを経口投与する際には、持続静注量の2-3倍量が適切であり、持続投与時の薬剤クリアランスが早い症例では、より多くの投与量が必要である事が判明した。タクロリムスの経口投与時の投与量は、持続静注時の3-4倍が必要であり、シクロスポリンと同様に薬剤クリアランスを考慮して投与量設計が有用である事が明らかとなった。また、至適投与量が不明なタクロリムス徐放製剤の薬物動態試験を実施し、その安全性と有用性を確認した。移植前処置薬については、静注ブスルファン製剤の薬物動態試験を実施し、、高齢者の薬物動態は若年者と同様である事を明らかにした。その一方で、小児においては年齢、体重だけでは補正困難な薬物動態の個人差がある事が確認され、治療の最適化のためには個別化した投与計画の必要性と、その方法論の確立が急務である事が明らかになった。更に、抗ウイルス薬であるフォスカルネットを予防投与する事による、サイトメガロウイルス感染症予防は、その有用性に限界がある事を明らかにした。
結論
これらの研究結果により、造血幹細胞移植に用いられる薬剤の至適投与方法が明らかとなり、治療成績が大幅に改善する可能性が示された。また、これまで医師の経験に基づいて使用されていた薬剤の至適投与方法が確立し、治療技術の均霑化に寄与する事が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020059Z