文献情報
文献番号
202507012A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線療法の提供体制構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1012
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
大西 洋(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部医学域放射線医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 大野 達也(群馬大学)
- 溝脇 尚志(京都大学 大学院医学研究科)
- 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
- 中村 和正(浜松医科大学 医学部)
- 生島 仁史(徳島大学 医歯薬学研究部)
- 東 達也(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部)
- 絹谷 清剛(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
- 細野 眞(近畿大学 医学部)
- 霜村 康平(京都医療科学大学 医療科学部 放射線技術学科)
- 岡本 裕之(国立がん研究センター中央病院 放射線品質管理室)
- 荒尾 晴惠(大阪大学大学院医学系研究科)
- 草間 朋子(東京医療保健大学)
- 谷 謙甫(ユーロメディテック株式会社 医学物理室)
- 井垣 浩(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
- 横道 洋司(山梨大学 医学域疫学・環境医学講座)
- 黒岡 将彦(東京医科大学病院 放射線治療品質管理室)
- 太田 誠一(京都府立医科大学 医学部附属病院)
- 神宮 啓一(東北大学 大学院医学系研究科放射線腫瘍学分野)
- 小宮山 貴史(山梨大学 放射線医学講座)
- 齋藤 正英(山梨大学 医学部放射線医学講座)
- 遠山 尚紀(駒澤大学 医療健康科学部診療放射線技術科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん診療連携拠点病院等の整備においては、集学的治療の均てん化に加え、高度放射線治療の集約化と広域連携体制の構築が重要課題となっている。特に強度変調放射線治療(IMRT)、粒子線治療、核医学治療、密封小線源治療、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)などの高度放射線治療は、高度な専門人材と設備を必要とするため、地域格差や人材不足により十分な提供が困難となっている。また、2040年に向けて放射線治療需要の大幅な増加が予測される一方、人的資源不足や医療安全体制強化への対応が喫緊の課題となっている。さらに、緩和的放射線治療についても、患者のQOL維持の観点から重要性が高いにもかかわらず、地域や施設間で提供状況に差が認められる。本研究では、全国の放射線治療提供体制の現状を多角的に把握し、次期がん診療連携拠点病院整備指針および診療報酬改定に資する科学的根拠を提示することを目的とした。加えて、放射線治療技術の高度化や安全管理要件の変化を踏まえ、日本版ブルーブック改定に向けた基礎的検討を行い、持続可能な放射線治療提供体制の方向性を示すことを目指した。
研究方法
研究体制は、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)を中心として、日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本医学物理学会、日本診療放射線技師会、日本医学物理士会、医学物理士認定機構、放射線治療専門放射線技師認定機構等の関連団体、日本看護協会、企業団体、患者会等により構成した。研究方法として、全国実態調査、National Database(NDB)解析、JASTRO放射線治療症例全国登録(J-ROD)解析、国際比較調査、専門職種別検討を実施した。また、遠隔放射線治療計画支援に関する実証研究(REMOTE-IMRT trial)の実施や、照射技術別患者数、待機状況、人材配置、設備整備状況、地域アクセス性等を包括的に評価した。さらに、均てん化と集約化を両立するための広域連携体制、人材育成、タスクシェア推進、安全管理体制および施設要件のあり方について検討した。
結果と考察
本研究により、以下のような課題が明確となった。
人的資源の観点では、IMRTや定位放射線治療など高精度放射線治療の普及に伴い、従来基準を超える人員需要が示された。特に、放射線治療計画立案の補助が可能な医学物理士や診療放射線技師などの専従の物理・技術系専門職の地域偏在が顕著であり、地方施設における高度放射線治療導入の障壁となっていた。このため、本研究ではタスクシェア推進を目的とした治療計画補助研修体制を新設し、専門職育成基盤の整備を行った。
REMOTE-IMRT trialでは、単独常勤医師施設においても遠隔支援を活用することで高品質なIMRT治療計画が可能であることが示された。この成果は、「常勤放射線治療医1名+遠隔支援体制」を含む新たなIMRT施設基準案の基礎となり、地域格差是正に向けた重要な成果と考えられた。
地域アクセス格差については、全国の二次医療圏の約20%で放射線治療施設が未整備であり、特に北海道では約20%の住民が3時間以上の通院圏に居住することが明らかとなった。一方、大都市圏では患者集中による過剰負荷が認められ、「都市部への集中」と「地方の空白化」という二極化が進行していた。これらの結果から、今後の均てん化政策では人口比のみならず、「通院時間」や「面積あたりアクセス性」を考慮した新たな評価指標の導入が必要と考えられた。
緩和的放射線治療では、骨転移疼痛などに対する単回照射の普及率が低く普及が十分でないことが明らかになった。
Shared Decision Making(SDM)における患者と医療者の認識乖離も認められた。今後は、患者視点を重視した治療選択支援体制の整備と、放射線治療に対する社会的理解促進が必要と考えられた。
本研究を通じて、放射線治療に関わる多職種が将来の提供体制に関する課題認識を共有し、日本版ブルーブック改定に向けた議論の端緒を開いたことも重要な成果である。専門職の役割整理、安全管理体制の標準化、遠隔支援活用の制度設計など、今後の政策立案に資する基盤形成が進められた。
人的資源の観点では、IMRTや定位放射線治療など高精度放射線治療の普及に伴い、従来基準を超える人員需要が示された。特に、放射線治療計画立案の補助が可能な医学物理士や診療放射線技師などの専従の物理・技術系専門職の地域偏在が顕著であり、地方施設における高度放射線治療導入の障壁となっていた。このため、本研究ではタスクシェア推進を目的とした治療計画補助研修体制を新設し、専門職育成基盤の整備を行った。
REMOTE-IMRT trialでは、単独常勤医師施設においても遠隔支援を活用することで高品質なIMRT治療計画が可能であることが示された。この成果は、「常勤放射線治療医1名+遠隔支援体制」を含む新たなIMRT施設基準案の基礎となり、地域格差是正に向けた重要な成果と考えられた。
地域アクセス格差については、全国の二次医療圏の約20%で放射線治療施設が未整備であり、特に北海道では約20%の住民が3時間以上の通院圏に居住することが明らかとなった。一方、大都市圏では患者集中による過剰負荷が認められ、「都市部への集中」と「地方の空白化」という二極化が進行していた。これらの結果から、今後の均てん化政策では人口比のみならず、「通院時間」や「面積あたりアクセス性」を考慮した新たな評価指標の導入が必要と考えられた。
緩和的放射線治療では、骨転移疼痛などに対する単回照射の普及率が低く普及が十分でないことが明らかになった。
Shared Decision Making(SDM)における患者と医療者の認識乖離も認められた。今後は、患者視点を重視した治療選択支援体制の整備と、放射線治療に対する社会的理解促進が必要と考えられた。
本研究を通じて、放射線治療に関わる多職種が将来の提供体制に関する課題認識を共有し、日本版ブルーブック改定に向けた議論の端緒を開いたことも重要な成果である。専門職の役割整理、安全管理体制の標準化、遠隔支援活用の制度設計など、今後の政策立案に資する基盤形成が進められた。
結論
本研究により、日本の放射線治療提供体制は、人的資源不足、地域アクセス格差、高度医療の集約化と均てん化の両立など、多面的課題を抱えていることが明らかとなった。一方で、遠隔支援を活用したIMRT提供体制やタスクシェア推進による専門人材育成など、実装可能な対策を提示できた意義は大きい。今後は、広域連携を前提とした高度放射線治療提供体制の整備、日本版ブルーブック改定、遠隔支援体制の制度化、SDM推進による患者中心の治療選択支援を進めることで、高齢者数がピークを迎え放射線治療需要のさらなる増加が予測される2040年を見据えた、安全かつ持続可能な放射線治療提供体制の構築が期待される。
公開日・更新日
公開日
2026-08-24
更新日
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